無罪判決から一夜 袴田氏本人に姉・ひで子さんが判決伝える
(袴田さんの姉・ひで子さん)
「きょうはいいことがあった」「再審開始になったの、それで無罪判決が出た、あんたが勝った」「あんたの言う通りになった」
26日夜、袴田巌さんに「無罪判決」を報告した 姉・ひで子さん。
一夜明けた27日も…
(姉・ひで子さん)
「袴田さん再審無罪、証拠3つのねつ造」「袴田さん良かったね、おめでとうと言うよ。ありがとうと言ってな」
「無罪判決」を伝える新聞を見せると言葉は発しませんでしたがしばらくするとVサインをしました。
(姉・ひで子さん)
「返事はしないけれど、何となく表情が少し明るくなりました。紅潮したような表情でね、たぶんわかっているのかな」「毎日ね、少しずつ伝えていこうと思っています」
事件から58年。
(伊藤薫平キャスター)
「袴田巌さんに無罪判決、無罪判決と掲げられました」
1966年。旧清水市でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で逮捕された袴田巌さん。
無実を訴えていましたが長時間に及ぶ取り調べが連日続き自白しました。
(取り調べの録音)
「君の現在の心境はどうなんだ」「大変恐ろしいことをやったと思っています」
静岡地裁は判決で捜査機関による3つの証拠の捏造を認定。
1つ目が、自白について
「黙秘権を実質的に侵害し苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べ」と指摘し実質的にねつ造されたものと認めました。
2つ目は最大の争点、犯行時の着衣とされていた「5点の衣類」です。
事件から1年2か月後にみそタンクの中から見つかったもので袴田さんの死刑判決の決め手となった証拠です。
裁判所は「1年以上みそ漬けされた場合血痕に赤みが残るとは認められない」、捜査機関による加工の後、みそタンクに隠されたと指摘しました。
さらに、袴田さんの実家から発見された「ズボンの共布」についてもねつ造を認定し捜査機関を批判しました。
“潔白を”意味する白い装いで、出廷を免除された弟に代わり判決に臨んだ姉ひで子さん。
(姉・ひで子さん)
「主文被告人は無罪というのが神々しく聞こえました」「あたくしはそれをそれを聞いて感激するやらうれしいやらで涙が止まらなかった」
そして、弁護団はー
(小川秀世弁護士)
「検察官と警察官が一緒になってねつ造をしたと強くはっきりと認定をしたと」
また、判決公判の最後には裁判長がひで子さんに“謝罪”する場面もありました。
「きょうの無罪判決で巌さんの自由の扉を開けた」「検察が控訴すればその扉が閉じる可能性もある」「長く時間がかかったことは裁判所としても申し訳なく思っている」
今後の焦点はこの判決に検察側が控訴するかどうか―
26日、静岡地検の小長光健史次席検事は「判決内容を精査し適切に対処したい」と話し、「控訴するかどうかは上級庁と協議したい」と明言を避けました。
一方、27日県議会で県警本部長が「判決の受け止め」を問われると、
(静岡県警 津田隆好本部長)
「無罪判決が言い渡されたことは承知している」「判決が確定していないことからお答えを差し控えさせていただきます」
その後、報道陣の取材に対してもー
(県警 津田隆好本部長)
Q裁判長から捜査機関のねつ造が認定されたが?
「その辺は承知していますがこの辺についてもお答えは差し控えさせていただきます」「引き続き県民の信頼を勝ち得るようにやっていきたいと思います」
さらに警察庁を管理している国家公安委員長も
(松村国家公安委員会委員長)
「今後、検察当局において判断内容を精査し対応を検討するものと承知しておりますので、私からのコメントは控えさせていただきたいと思う」
決まり文句のように「コメントを控える」関係者。
ねつ造の認定まで踏み込んだ今回の再審判決。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に検察側の控訴について聞きました。
(若狭勝弁護士)
「検察の内部では証拠的には袴田さんが犯人だろうと、心底そう思っている人がかなりいるらしいんです」「控訴しない可能性が7割で控訴する可能性が3割あると思います」「控訴ということになると、検察に対する信頼がかなり失せてしまう。判決を受けて世論の高まりを受けると控訴しない方向に行く可能性がどんどん高まると思います」
検察側の控訴期限は10月10日です。