【特集】来春、女子プロレス界引退へ 新潟市出身プロレスラー里村明衣子 15歳でふるさと離れ30年 「この道で本当に良かった」 故郷・新潟市で最後のリング そして今後は ≪新潟≫
新潟市出身の女子プロレスラー里村明衣子さんが来年の春に現役を引退する決断をしました。
ふるさと・新潟を離れてまもなく30年。里村さんは故郷・新潟市での最後のリングにあがりました。
彼女が伝えたかった思いとは……。
宮城県の仙台市に拠点を構える「仙台ガールズプロレスリング」。
現在、7人の選手が所属しています。
団体のトップは新潟市出身の里村明衣子さん。
女子プロレス界では「横綱」とも言われる存在です。
〈里村明衣子選手〉
「(今の若い選手は)何にも言わなくても自分をいかにうまく見せるか良く見せるかというところは常に考えているのでそこは本当に素晴らしいなと思いますね」
〈須山司アナウンサー〉
「里村さんが入った頃と違う?」
〈里村明衣子さん〉
「全然違いますね。先輩、竹刀持ってましたから、あの時!」
この日ふるまったのは得意の「ちゃんこ鍋」。
〈橋本千紘選手〉
「里村さんが手作りで朝から仕込んでくださったみたいで……。めちゃくちゃ、なんか何でもやってくれるので寝てるのかなと思いますね」
レスラーとしてリングに上がり続けて間もなく30年。
今まさに女子プロレス界の頂点にいる彼女は、今春にリングを降りる決断をしました。
ことし10月…里村さんの実家近くの信濃川の河川敷で話を聞きました。
〈須山アナウンサー〉
「この30年という歳月はどんな風に感じていますか?」
〈里村明衣子選手〉
「えっとですね、ちょっとほんとすいません須山さん……、最初っから……(涙ぬぐう)、いや本当にずっとプロレス1本でやらせていただいた人生だったので、すごく感謝していますね……。全く後悔ないんですよね。むしろ本当にこの道でよかったって思えます」
思い出の河川敷……夢に向かって走り始めたころの懐かしさに包まれているようでした。
中学生2年生の頃、新潟市の体育館で初めてプロレスを見た時からこの道に進もうと決めました。
「自分もリングで輝きたい……」
当時15歳……。
中学3年生の冬にふるさとを離れました。
入門した団体はかつて「クラッシュギャルズ」として活躍し女子プロレス界のカリスマ的存在でもあった長与千種さん率いる「ガイア・ジャパン」。
〈当時の長与千種さん〉
「さっき何のために教えていたんだよ。今日こそはクリアするかなと思っていたんだよ……」
次第に頭角を現し、長与さんから後継者指名も受け団体の中心選手になりました。
しかし……2005年4月、団体が解散。 戦いの場を失います。
そうした中、東北で活動するプロレス団体が仙台を拠点に里村さんを中心とした女子の新団体の立ち上げに動きます。
オーディションに集まったのは運動経験がほとんどない女の子たち。
〈オーディション生〉
「限界までやる自信はあります」
〈審査員〉
「練習に耐える気持ちもある? 逃げたりしない?」
〈オーディション生〉
「はい……」
〈里村明衣子選手〉
「命をかけて教えたいと思います」
練習経験者は里村さんただ1人。
周りからは「無謀」と言われる中、続けた猛特訓。
そして……
〈里村明衣子選手〉
「4人のデビュー戦の姿を皆さん最後までお見守りください。そして私は第2のデビュー戦だと思って精一杯戦い抜きますので、最後は勝って必ず仙女の旗を掲げたいと思います。よろしくお願いします!」
新人たちを立派なレスラーに育て上げ「センダイガールズプロレスリング」がスタート。
里村さんもレスラーとしての第二の人生が始まりました。
〈里村明衣子選手〉
「終わってみてこれだけなんかたくさんのお客さんに応援していただいているんだなと思うとホントに嬉しいですね(涙ぐむ)」
レスラーとして決して大柄ではない体ながら多くの強豪と名勝負を繰り広げ、選手生命を脅かす大きなケガを負ったことも。
苦難を乗り越え戦い続け、女子プロレス界最高峰のレスラーと言われるまでになりました。
そうした中……
〈里村明衣子選手〉
「自分自身でけじめをつけて余力があるうちに人生に次のステージに進みたいという思いがすごく強くて、今決断に至りました。」
ことし7月、会見を開き、2025年4月に現役を退くことを表明しました。
旗揚げから18年……
センダイガールズプロレスリングには里村さんのもとでそのイズムを引き継ごうという選手がいまも門をたたいてきます。
〈里村明衣子選手〉
「私の団体は他の団体から見ても一番厳しい団体と言われていますしでもついてきてくれる選手がいる、そのスタイルを継いでくれる選手がいる限りは私は私で最後まで厳しくい続けたいっていうところもありますし……」
自分に対する厳しさ。そして戦う姿勢。
里村さんが示してきたプロレスのスタイルは自然と選手たちに受け継がれています。
〈岩田美香選手〉
「私はこの仙台ガールズという団体、リングに対してすごく戦いがあるリングだなと思っているので。そういうのは里村さんのイメージカラーだったりとか殺気だったりというのはやっぱり受け継ぎたいなと思いますね。」
〈橋本千紘選手〉
「最後まで最強…女子プロレス界の横綱でいてほしいです。負ける姿は見たくないですね……」
ことし11月、新潟市体育館で開かれた「センダイガールズプロレスリング」の大会。
里村さんにとってこの日の試合がレスラーとして故郷・新潟市であがる最後のリングです。
ふるさと最後の戦いを応援し見届けようと多くのファンが駆けつけました。
中には中学時代の友人の姿も。
〈同級生〉
「中学の進路を決めるところから見ているから締めくくりはちょっと見たいと思って」
〈同級生〉
「私としては見納めかなということでドキドキして感動して涙が出ちゃうかもしれない」
両親・家族そして支え続けてくれた家族。
〈里村さんの父〉
「新潟で見られるのはきょうが最後ですので何とか事故なく頑張って勝ってほしいと思います。」
〈里村さん母〉
「自分で最後だっていうのがあるから……。負けても勝っても自分らしくおさめればいいなと思って……。」
この日、里村さんの試合は最後のメインイベント。
故郷に錦を飾る里村さんの最後の試合に向かって、選手たちがリングで懸命な戦いを見せます。
そしていよいよ…… 特別な思いで臨むこの日の一戦……。
〈実況席〉
「里村~めいこ~!!」
この日の相手は、いま女子プロレス界でも人気・実力ともに屈指の安納サオリ選手。
〈ゴング音〉 「カーン!」
彼女の築き上げたスタイル、キックを駆使した戦いで攻勢に出ます。
あらゆる物事に全力で向き合う。
それは1人ふるさとを離れ、夢を追いかけ始めたあの頃からの変わらぬ姿。
〈里村さんの中学時代の同級生〉
「最初もさ、応援に行ったから最後もみんなでね」
「30年間頑張ったからやっぱり来なきゃ。応援して締めくくりをちゃんと見たいなと思って。」
〈里村明衣子選手〉
「常に応援し続けてくれた家族がいたから。 一心不乱にこの道を歩むことができた。 苦しい時もあった…ケガ、団体存続の危機…でも、どんな困難にも正面から向き合い、乗り越えてきた。その積み重ねが里村明衣子という偉大なレスラーを作り上げた 」
故郷でならした勝利の3カウント。そして、里村さんにはどうしても伝えたい思いがありました。
〈里村明衣子選手〉
「15歳の時にここが原点でプロレスの修業が始まりました。引退を決めた一つの理由に両親が元気なうちに最後まで…最後までしっかりと健康な体で…(涙)引退して安心させてあげたいというのが本音です」
〈拍手と歓声〉
「里村~!」
〈里村明衣子選手(リング上で)〉
「新潟は本当に特別な場所です。生れ育った新潟に私は誇りを持っています。私が引退したあともこの女子プロレスを私はもっと大きくするために人生かけていきます。皆さん見ていてください、今日は本当にありがとうございました」
女子プロレス界でまばゆい光を放ち続けた里村明衣子。
〈里村明衣子選手〉
「ここまで大きくしていただいた感謝の気持ちを最後まで自分の足で立って最後の日まで戦いたいと思います」
残りのファイナルロードでさらに輝きを増します。