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【特集】食料クライシス①食料自給率

2024年7月9日 18:54
【特集】食料クライシス①食料自給率

岩手でも東京でも今の日本はお金さえ出せば食べたいものを買えるしグルメの時代とも言われています。しかし、目に見えないところで食料の危機、クライシスが進んでいて、国は今年5月食料生産の憲法ともいえる「食料・農業・農村基本法」を25年ぶりに改正しました。食料のどういうところが危機的な状況なのか。またどう対処するかきょうから毎週火曜日3回のシリーズでお伝えします。

7月4日。岩手大学の御明神牧場で農学部附属畜産飼料総合教育研究センターの看板除幕式が行われました。このセンターは、多くを海外に依存する日本の食料を安定的に供給しようと、岩手大学が設置しました。

小川智学長
「宮沢賢治さんが育った高等農林それが今の岩手大学の農学部の精神に引き継がれていますので、東北地域に特有な冷害対策とか食料自給率の向上のための生産のサポートそういったものに積極的に関与するのは岩手大学の任務としてとらえています」

小川学長が食料自給率ということをおっしゃっていましたが食料自給率とはどういうことですか

(記者)
いきなり食料自給率というと難しくなるので私の大好きなラーメンを例にします。ラーメンで一番大事な麵ですが麺を作る小麦のうち国産はわずか1.3パーセントしかありません。スープで大切な醤油を作る大豆。国産は6パーセント。さらにチャーシューとなる豚肉の自給率はわずか6%です。

(キャスター)
もちろん、国産に拘ったラーメン店もあると思いますが、日本の食料自給率を当てはめると、こういいうことになるんですね。なぜこんなに自給率が低いのですか。

(記者)確かに国内の農場で生産された豚肉は5割を占めています。しかし豚を育てるエサは外国に依存していてエサの自給率も含めて計算すると6%になってしまうのです。国民食と言われるラーメンの食材も外国に頼っているのが実情です。農林水産省が定義している食料自給率とは日本の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標のことです。

諸外国と比較できる2020年の食糧自給率をカロリーベースで見るとカナダ221%アメリカ115% ドイツ84%これに対し日本37%と最低レベルでした。

しかし日本は昔から自給率が低かったわけではなく、1965年には73%でしたが1985年53%2005年40%最も新しいデータ2022年は38%とこの60年で半分近くまで減ってしまいました。

こうした状況に危機感を抱いているのが岩手大学人文社会科学部長で農業経済論が専門の横山英信教授です。横山教授は25年ぶりに改正された「食料・農業・農村基本法」の参議院農林水産委員会の公聴会で日本の食料を国内で確保する大切さを述べました。

横山英信教授
「外国から輸入したもので安定的な供給が保障されればいいんですけど昨今の情勢を見ても外国で何かあるとそれがそれがすぐに日本の食糧の需給に響くということが明らかになっていますので外国の輸入に委ねているということはやはり国内の食料の安定供給を脅かすことになるのだろうと思います種子とかそういったものの自給率肥料もかなり外国から買っていますから農業生産資材の自給率まで含めると38パーセントよりさらに落ち込むことになりますのでいったん何かあれば本当に大混乱するだろうということですね」

横山教授によりますと2008年のリーマンショック以来小麦など穀物の価格は高騰しています。さらにおととし2月からは世界の穀倉地帯と言われるロシアとウクライナが紛争状態となり世界の小麦の需給は不安定さを増しています。

6月18日の岩手大学附属御明神牧場です。こちらでは夏場には牛を放牧して、飼育しています。岩手大学が開設した農学部附属畜産飼料総合教育研究センターでは家畜が食べるエサを自給できる技術を確立することで日本の食料の安定的な供給を図ろうとしています。

岩手大学農学部動物科学科出口善隆教授
「日本の場合国土の7割ぐらいが森林なのですがその下には笹とかいろいろな植物が生えていて牛みたいな反すう動物が利用できるのですが今のところ未利用のままなのでそれを有効利用するという形で(食料)自給率があげられるということを考えています」

岩手大学農学部に設置された畜産飼料総合教育研究センターでは、家畜のエサの有効活用や放牧技術の開発などを通して日本の食料自給率の向上を図ろうとしています。

農学部附属畜産飼料総合教育研究センター澤井 健センター長
「今まで海外から入れる牧草粗飼料がかなり安い値段で入って来ていましたので海外から粗飼料を入れるということが成り立っていたけれどもこのように円安が進み海外で(地球)温暖化の影響で粗飼料が取り合いの状況になっている岩手県はせっかく放牧地、牧草地がありますので粗飼料を効率的に使っていく栽培していくというのは当然最適な解決法だと」

牛乳や牛肉、豚肉などの畜産で全国トップレベルの生産量を誇る岩手県。2021年の畜産の農業産出額は全国4位です。今回設立された岩手大学の研究センターは、この岩手から日本の食料を守ろうと取り組みを始めます。

次回は具体的なエサ生産技術の研究や、クマやイノシシといった野生動物から地域を守る取り組みについてお伝えします。