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地区の住民たちが消火活動で延焼食い止め 消防車到着まで30分かかる蔵王坊平地区

2024年5月31日 17:28
地区の住民たちが消火活動で延焼食い止め 消防車到着まで30分かかる蔵王坊平地区

5月6日、上山市蔵王坊平の温泉施設で火事がありサウナ施設が焼けました。この火事で真っ先に消火にあたったのは地区の住民たち。この消火活動で人の被害は無く、延焼も食い止めました。なぜ迅速な消火活動ができたのか。理由を取材しました。

5月6日の夜に上山市蔵王坊平のサウナ小屋で発生した火事。ホースを握りしめ果敢に火に放水するのはこの地区の住民です。

「だいぶ収まってきました」

標高1000メートルを超える高地にあり、消防車の到着まで最短でも30分かかる蔵王坊平地区。
しかし、消防車が到着する前に、住民たちの息のあった消火活動で火は鎮圧に近い状態にまで抑えられました。この火事で、けが人はなく周辺にも延焼することなく済みました。

ペンションアルム岡崎裕社長「どこに消火栓があり、どこに消火栓をつなぐか、1年に2回消防訓練をやっているので、結果的に訓練の成果が出たと思う」

発生当初から迅速に消火活動ができた裏には長年積み上げられた地域住民の防災力の高さがありました。
火事が起きたサウナ小屋は温泉施設「坊平リカバリー温泉高源ゆ」にあります。ここはプロアスリートなどが合宿先として利用する一方、一般の人も温泉やサウナを楽しめる人気の施設で、坊平地区のペンション村の一角にあります。
今回、施設を消火したのが「坊平地区自主防災会」です。自主防災会は坊平ペンション村が営業を開始した2年後の、1978年に発足。現在はペンションのオーナーや住民らおよそ20人から成ります。

チェビオット/坊平地区会長 大沼邦充社長「このホースはずっと昔から使っている。その時々で違うんですけど、ポンプを使ったり消火栓を使ったりして訓練」

自主防災会は年に2回の訓練を実施し、消防署員の立会いの下、小型ポンプやホースの使い方を学んできました。

ヒュッテハイジ 長谷川剛社長「ちょっと外をのぞいたら、いつもよりなんか明るい感じがしたんですね。場所を移動して確認したんですが、高源ゆのサウナ小屋付近から炎があがっていた」

火事当日の午後9時15分ごろ。家の中から火事に気づいた長谷川さんはすぐ、会のメンバーに連絡しました。

長谷川さん(この消火栓を使った?)「何人か集まっていたので、私と消火にあたった大沼さんでホースを持って、このやぶの中を突き抜けて火元に向かった」

メンバーたちはこの場所で、消火栓を操作する人と、ホースで火を消す人に役割を分担して消火活動を開始しました。

大沼さん「手前のところにサウナ小屋があった。屋根の上まで火が上がっていたので、下の方から火が広がっていたから下から水をかけていって、ある程度かけていく段階で上の方が消えてくれたので、あとは下が消えない状態だったので、下を中心に放水」

ホースを持って消火活動の最前に立った大沼さんは、火の状況を確認して場所を変えて放水しました。

大沼さん「こちらの面がまだ燃えていたので消して、あとはまだサウナ小屋があって、サウナ小屋自体が燃えていたので、むこうから消しきれなかった部分をここから消した」

火事の発生からおよそ30分後、上山市消防本部から消防車両が到着。それからおよそ1時間後の、午後10時55分に火は消し止められました。この火事でサウナ小屋と隣接するまき小屋が全焼しましたが、施設本館は外壁の一部が焼ける程度にとどまり、それ以上の延焼には至らず、けが人はいませんでした。
上山市内から火事現場に急行した消防本部の署員はこう振り返ります。

上山市消防本部 鈴木教弘消防司令「従業員からの通報で、『火が出ている状況で、初期消火に失敗した』という通報内容で出動した」

鈴木さんは、火災当日、現場で消防の指揮を取りました。

上山市消防本部 鈴木教弘消防司令「現場に到着するまで27分程度かかった。我々が現場に到着した際に、自主防災会が消火栓とホースを使った初期消火を行っていて、火の勢いは想像より収えられていた状態だった」

時を同じくして、南陽市では大規模な林野火災が発生、鎮火に至るまで9日間を要しました。
山岳部での火事の発生に、鈴木さんは大規模な林野火災に発展する可能性も考えたといいます。しかし、それは杞憂に終わりました。

上山市消防本部 鈴木教弘消防司令「自主防災会の消火活動は本当に勇気をもった行動だったと思います。また、火元に近づいたわけではなく、自分たちの安全を確保しながらの放水活動でしたので、それも訓練の賜物だと思う。非常に頼もしい存在。被害を最小限に抑えるために、今回のような連携した活動をしていければ」

実は坊平地区自主防災会が実際の消火活動にあたったのは今回が初めて。40年以上にわたり住民総出で訓練を行い培った防災技術の高さが、被害を最小限に食いとめました。

大沼さん「今までは訓練だけで、今回のようなことは初めて。みんな体が自然に動いている感じだった」

岡崎さん「今回のことも踏まえて消火栓の役割の重要性を再認識したので、まだ地区全体をカバーするには至っていないので、消火栓を増やしてもらえるよう市に要望していきたい」

火災発生後「高源ゆ」では、焼けた男性浴室の復旧修理を行っています。

高源ゆ桐生さん「皆さんのおかげで、この程度の被害で済んだのは、感謝しても感謝しきれない」

施設内の整備も一部で整ったことからあす6月1日から男女日替わりの制限付きで営業を再開します。
自分たちの手で町を守るー。
坊平地区自主防災会は、今後も住民同士で連携して町の防災に努めます。