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【独自検証②】「紅麹」同業者が指摘「カビ混入なら気づくはず」 小林製薬“未知の成分”のナゾに迫る 共同研究者「問題は製造過程のどこかにあるはず」

2024年4月8日 7:00
【独自検証②】「紅麹」同業者が指摘「カビ混入なら気づくはず」 小林製薬“未知の成分”のナゾに迫る 共同研究者「問題は製造過程のどこかにあるはず」
紅麹の粒:小林製薬のHPより

 小林製薬の「紅麹」を含むサプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでいる問題で、健康被害の原因となった可能性があるとして発表されているのが青カビから生成される「プベルル酸」です。「紅麹」を製造している小林製薬とは別の“同業者”や専門家への取材から、健康被害が出た背景に“ある可能性”が見えてきました。(読売テレビ「紅麹」問題取材班)

■食品の着色料などに使用される「紅麹」 中にはカビ毒を含むものも存在

 そもそも「紅麹」とは、米などの穀類に紅麹菌を繁殖させてつくられるもので、古くから日本や中国、台湾、韓国などで食品の着色料などとして使用されてきました。

 紅麹の成分にはコレステロールを低下させる作用があるとされていて、機能性表示食品を含む数多くの健康食品などが出ていました。一方、一般に紅麹菌の中にはカビ毒である「シトリニン」をつくるものもあり、これは腎臓の病気を引き起こすおそれがあるとされています。

 ヨーロッパでは紅麹菌由来の健康食品による健康被害が報告されていて、EUでは「シトリニン」について、サプリメントに含まれる基準値を設定しています。10年前には、内閣府の食品安全委員会も注意喚起を行っていました。

■小林製薬と「紅麹」の共同研究者「紅麹菌に問題はなく、問題は製造工程のどこかにあるはず」

 ただ、小林製薬の紅麹菌はこの「シトリニン」を生成しないことがゲノム解析の結果でわかっています。共同研究を行った奈良先端科学技術大学院大学の金谷重彦教授は問題発覚の当初から、紅麹菌自体が問題ではないと強調していました。

 奈良先端科学技術大学院大学 金谷重彦教授「小林製薬の紅麹菌は遺伝子レベルでシトリニンを作ることができないということですから、検出されなかったというのは当然のことだと思います。紅麹菌自体には問題はなく、あくまで問題は製造工程のどこかにあるのかにあるはずだ」

 金谷教授は、去年9月以降の製品に健康被害が偏っていることなどから、製造の過程でタンク内に外から別の菌が誤って混入し、その菌が増殖したために、人体に影響を与えている可能性があるとの見方を示しました。

■紅麹製造の同業者が語る「繊細な取り扱いが必要で水分量など間違えるとカビは発生しやすい」

 実は紅麹を製造する会社は国内に数えるほどしかありません。このうちの1社が匿名を条件に読売テレビの取材に応じました。

 紅麹製造会社の男性「紅麹菌はほかの菌と比べても繊細な取り扱いが必要。原料は2回殺菌しているが、殺菌しすぎると別の菌は死滅するが、紅麹菌自体も繁殖しなくなってしまうので強い殺菌剤を使うことは難しいし、水分の量を間違うとカビは発生しやすい」

 紅麹は蒸した米に紅麹菌を加えて、タンクで均一に混ぜながら培養していきます。ただ、紅菌が増える速度は遅く、もし、培養の初期までの段階で、別のカビや菌などが入った場合は紅麹菌より先に増殖するといいます。

 また、菌を培養するために、培養の途中でタンク内に定期的に空気を入れたり、水を加えたりしながら、温度や湿度を一定に保つ必要があります。空気を入れる際には空気中のカビや菌が入ることを防ぐために、フィルターを通すなど細心の注意を払うということです。

 ただ、それでも他のカビや菌が入る可能性をゼロにすることは難しいということです。

 紅麹製造会社の男性「例えば、他のカビや菌が入ったとしても、お酒であればアルコールがあるし、味噌や醤油などでは塩があるので、増殖を抑えて安定的に作ることができる。そういった意味で、紅麹は何か異物が混入すれば、できあがりに異変があるので気づくことができる」

 男性によりますと、正常なものだと、培養された紅麹はさらさらと乾燥しているのですが、カビなどが混入した場合、刺激臭が出たり、赤色の発色が鮮やかに出なかったり、お粥のようにドロッとした仕上がりになったりするため、すぐに気づけるはずだということです。

■専門家「培養期間は通常2週間程度。小林製薬の培養期間約50日間はかなり珍しい」

 培養は大きく「固体培養」と「液体培養」の2種類があり、小林製薬ではこのうちの「固体培養」という方法でした。また、健康効果があるとされる成分の濃度を高めるため、約50日間発酵する製造方法を採用していました。

 微生物利用学が専門の琉球大学農学部の橘信二郎准教授はこの期間の長さについて、疑問を指摘します。

 琉球大学農学部 橘信二郎准教授「やっぱり長く培養すると、何らかの汚染リスクが高くなります。例えば、学生が紅麹菌を外気と触れ合わないように密閉したフラスコの中で培養していたことがあったのですが、30日ほど経過した時点で確認したところ、腐っていたことがありました」

 実は紅麹菌の培養は通常10日から2週間ほどで行うのが一般的で、それ以降は紅麹菌自体が減っていき、その代わりに別の菌などが増殖してしまうということです。

 工場内がどのような様子だったのか、小林製薬がどのような品質管理をしていたのかについて、詳細はわかっていませんが、

 ①本来、少量生産だった紅麹をタンクで大量生産

 ②サプリメント用に健康効果があるとされる成分の濃度を高めるために長期間培養を行う

 という2つの点で、極めて特殊な製造方法が用いられていたということが、同業者や専門家への取材で明らかになりました。

 小林製薬は先月29日の会見で、「今後は国が主導して原因究明を進める」と説明しましたが、健康被害が今も拡大する中、迅速な情報提供と検証が求められています。

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