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相次ぐ「服装」へのバッシング…韓国人気DJの音楽ライブ“わいせつ”事件 二次被害を防ぐには

2023年8月27日 6:00
相次ぐ「服装」へのバッシング…韓国人気DJの音楽ライブ“わいせつ”事件 二次被害を防ぐには

 8月13日、大阪府で行われた野外音楽イベントで、韓国出身の人気女性DJが観客からわいせつな被害を受けたと訴えた問題は、イベント運営会社が大阪府警に告発し、警察が捜査に乗り出す「刑事事件」へと発展しました。

 その後、観客の男性2人が警察に出頭した上で、運営会社にも謝罪に訪れましたが、SNSなどでは、一部の人たちから女性の服装が原因であるかのような投稿が相次ぎ、これに対し、女性DJや運営会社側が二次被害を訴えるなど、騒動は収まっていません。

■「DJ SODAさんの動きが止まったような瞬間が」最前列の観客が事件を目撃

 事の発端は、8月13日に大阪府泉南市で行われた野外音楽イベント。ステージでパフォーマンスしたのは、韓国出身でインスタグラムのフォロワーが500万人を超える人気アーティスト「DJ SODA」さんでした。公演の終盤、ステージから降りて観客がいるエリアに近づき、柵越しにハイタッチするなど、至近距離でファンサービスを行うと、会場のボルテージは最高潮に達します。

 その直後、観客席の方から伸びた手が、DJ SODAさんの胸元に・・・。会場の最前列にいた観客は、「みんな前のめりになっていた。この時、DJ SODAさんの動きが止まったような瞬間があった」と振り返ります。

 DJ SODAさんは公演後、自身のSNSで「あまりにも大きな衝撃を受けて、未だに怖くて手が震えています。こんなことをされたことは人生で初めてです」と被害を訴えたことで、大きな騒動に発展します。イベントを主催した運営会社は21日、容疑者を特定しないまま、3人の男女を不同意わいせつと暴行の疑いで大阪府警に刑事告発しました。運営会社「TryHard Japan」は大阪市内で会見を開き、大付楽洋代表取締役CEOは「こういう事件が起きて、誠に遺憾。しっかり対応しなければ違うイベントでも同じような事件が起きる可能性がある」と、告発の理由を語りました。

■男性2人は警察に出頭も「わいせつな意図はなかった」「ライブ中の衣装は関係ない」

 大阪府警は告発状を受理し、本格的な捜査に乗り出しましたが、21日の午後、大阪府阪南市に住むアルバイトの男性(20)と福岡県北九州市に住む男子大学生(20)が大阪府警に出頭。警察に対し、「体に触れようと思い、伸ばした手が胸に触れてしまった」「触りたい一心で腕を触った」などと、行為については認めるものの「わいせつな意図はなかった」という趣旨の話をしています。また、警察は茨城県水戸市の会社員の女性(21)からも任意で事情を聞いていて、女性は任意の調べに対し「DJ SODAさんが目の前に来て、うれしくて体を触った」などと話しているということです。

 男性2人は8月22日、告発をしたイベント運営会社にスーツ姿で謝罪に訪れました。対応した大付代表は、「『迷惑をかけました、ごめんなさい』と謝罪がありました」と話し、出頭した理由について、「友達に『自分ら映ってるよ』と教えてもらった。SNSに色々と書き込まれているし、言葉は少なく、かなり怖がっていた様子だった」と明かしました。また、「『あの衣装だから、あの服装だから触った』ということはなく、『ライブ中の衣装は関係ない』とはっきり言っていた」と説明したということです。

■「『被害者の人権』を考える意識が、日本は欧米に比べて低い」専門家指摘

 DJ SODAさんの「服装」をめぐっては、SNS上で「そんな格好しているからでは?」「危機感がなさ過ぎ」といった、本人に非があるかのような書き込みが相次ぎました。
 
 これに対し、DJ SODAさんは、「私がどんな服を着ていたとしても、私に対してのセクハラと性的暴行は正当化できない」とSNS上で反論し、「私は加害者も二次加害をする人も同レベルだと思う」と怒りをあらわにしました。
 
 日本にある国連広報センターも、DJ SODAさんの書き込みに反応し、「性的暴力のサバイバー(=被害者)が襲われた時、何を着ていたかは関係ありません」「女性に対する暴力を終わらせよう。今すぐに」と、誹謗中傷に対する二次被害への警鐘を鳴らしました。
 
 わいせつや痴漢などの犯罪行為について、日本ではいまだに残る被害者を責めるような風潮が残る中、性犯罪に詳しい専門家は、「被害者に対してのバッシングが必ず起きる。『被害者の人権』を考える意識が、日本は欧米に比べて低く、それが二次被害を生んでいる」と指摘します。
 
 相手の気持ちや意思を尊重する社会にしていくにはどうすべきか、今回の騒動をきっかけに改めて問われています。