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大規模接種に課題も…ワクチン接種本格化

2021年5月10日 20:39
大規模接種に課題も…ワクチン接種本格化

10日から新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化しています。そんな中、国が東京と大阪で行う大規模接種に、課題も見えてきました。詳しく解説します。

■GW中のキャンプや帰省で感染例も 11日以降感染者数が大きく増える恐れも

10日、東京では新たに573人の感染が確認されました。その前2日間は、それぞれ1000人を上回りましたが、都の担当者は、連休明けで検査数が増えたことが増加につながっているとした上で、11日以降、感染者数が大きく増えてくるのではと危機感を示しました。

ゴールデンウイーク中の感染例も出始めています。9日の感染者を経路別にみると、家庭内感染が最も多く243人、次に施設内が59人、職場内が36人、会食が24人となっています。中には、20代の男性が友人とキャンプをして感染したケースや、50代の男性が九州の実家に帰省して、兄から感染したケースもありました。

都の担当者は、「キャンプや旅行などで感染した例も多く、かなり東京都として呼びかけていたことが守られていない」と話しています。

■ワクチン接種本格化…電話回線は制限

ゴールデンウイークが明けて、自治体へのワクチンの配送量が増えます。このため、10日から多くの自治体で接種の申し込みが始まりました。

NTTによると、10日にワクチン接種の予約受け付けを開始するのは、全国約200の自治体です。全国で電話回線がパンクすることが想定されるため、NTTは携帯各社と協力して10日午前8時半から「ワクチン接種の予約電話」だけ、回線を制限しました。警察や消防、ほかの一般の電話回線がつながらなくなるのを防ぐためで、NTTでは、接種の予約番号がつながりにくい場合は、時間をおいてかけ直すよう呼びかけています。

■一日100万回接種目標も…「かなり高い目標だ」

実際にいま、どのくらいの人たちがワクチンを接種できているのでしょうか。首相官邸のホームページによると、約480万人いる医療従事者などでは約42%、約3600万人の高齢者では約0.4%となっています。

菅首相は、7日の会見で一日100万回の接種を目標とすると述べました。ちなみに7日は一日で16万回でした。菅首相は、7月末を念頭に、高齢者への2回の接種を終わらせるよう、あらゆる手段を尽くすと述べました。

また、インフルエンザでは平均で一日約60万回の接種ができているという報告もあることから、今回のほうがはるかに広く体制をとっていることもあり、一日100万回の接種は可能だとしています。しかし、政府関係者は「かなり高い目標だ」と話していました。

■大規模接種センター「5月下旬から」

10日、国会では、国が東京と大阪で行う大規模接種センターについて、河野ワクチン接種担当大臣は次のように述べました。

河野大臣「5月の後半に追加の新しいワクチンの承認が視野に入ってまいりましたので、東京、大阪につきましては、自衛隊の医官、看護官の協力を得て、5月の下旬からスタートさせてまいりたいと思います」

自衛隊の大規模接種センターは、東京では大手町合同庁舎3号館(東京都千代田区)、大阪では府立国際会議場(大阪市北区)に開設され、土日祝日を含め、毎日午前8時から午後8時まで接種を実施します。今月24日の開設目標で、3か月間行われる予定です。

政府の当初の想定は、それぞれの会場で一日1万人の接種をするというものでした。ワクチンは、今月末に承認が見込まれるモデルナの使用が想定されています。

ところが、自衛隊の派遣規模や具体的な予約方法について、10日にも発表される予定でしたが、発表は早くても12日にずれ込むことになりました。

■「きちんと実行できるのか」見えてきた課題

10日、自民党で会議が開かれ、防衛省が大規模接種センター開設の準備状況などについて説明しました。

予約方法の発表が遅れている理由の一つには『人手』があります。接種には、自衛隊の医官と看護官のほか、民間の看護師があたります。

自衛隊には、医官と看護官がそれぞれ1000人程度いますが、全国の部隊や自衛隊病院にいて、現在、各所から出せる人員のリストを集約しています。しかし、各病院も地域のコロナ患者を受け入れたり治療にあたったりしているほか、通常任務も行っています。リストがなかなか目標人数に達しないのです。

防衛大臣経験者は、「決して人が余っている状況ではない。大変なことになっているという声が隊員からあがっている。きちんと計画が実行できるのか」と懸念を示しています。

官邸主導で進んできたこの大規模接種センターには、大きな期待がかかっています。河野大臣も、一日1万人接種できるかどうかは自衛隊次第だという趣旨の発言をしていて、期待感を示しています。

しかし、防衛省幹部は「もともと降ってきた段階でかなり高いハードルが課されている。酷な話ですよ」と話します。

自衛隊としては、やるなら全力でやるけれども、人繰りが苦しい中、期待感だけが先行して準備が追いついていかない、そんな現状が垣間見えるように思います。

(2021年5月10日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)