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SUPは世界選手権2位 カヌーはジュニア日本代表『二刀流』で世界を目指す高校生

2024年7月19日 20:58
SUPは世界選手権2位 カヌーはジュニア日本代表『二刀流』で世界を目指す高校生
島津成彰選手(水俣高校3年)

スタンドアップパドルボード(SUP・サップ)という競技とカヌー競技で世界に挑む水俣市の高校生がいます。二刀流で世界の頂点を目指す姿に密着しました。

5月に行われた熊本県高校総体カヌー競技。男子カヤック500メートルシングルで優勝し、8月のインターハイ出場を決めたのは水俣高校3年の島津成彰(なりあきら)選手(17)です。まさか、あの西郷隆盛が仕えたという幕末の名君、島津斉彬と関係が?

■父 久輝さん
「生まれた時、ちょうど戦国武将ブームがあったので、それに乗っかってつけました」
Q斉彬が好きだった?
「あー、そういうのはないです」
■島津成彰選手
「ただ、島津だから成彰みたいな…自分もあんまり名前については、5文字長いなーくらいしか考えたことない(笑)」

名前に特に深い意味はないということですが、島津選手には、名君が抱くような大きな夢があるんです。

■島津成彰選手
「目標は、SUPでもカヌーでも世界で戦っていける選手」

島津選手は、スタンドアップパドルボード(SUP)という競技とカヌー競技の二刀流。しかも、両方で世界の頂点を目指しています。SUPでは世界選手権2位とすでに世界トップクラスの実力者。一方カヌーでも、今年世界ジュニア選手権の日本代表に選ばれ、ブルガリアで試合に出場中です(7月19日時点)。

■島津成彰選手
「初めての世界大会、カヌーもあるんですけど、そこでやっぱり日本人最高順位っていうのを目指して…欲を言えばメダルもほしい」

意気込む島津選手。なのですが、実は…。
■島津成彰選手
「ぶっちゃけカヌーは…(笑) ぶっちゃけカヌーはあんまり…カヌーよりもSUPが好きだったので、自分は。SUPの練習のためにカヌーもやっていたので」

ではなぜ、カヌーでも世界を目指すことになったのでしょうか。島津選手が暮らす水俣は、昔からカヌーが盛んで、子どもの頃から慣れ親しんできました。

■島津成彰選手
「従兄もカヌー部に入ってて、小さい時から結構、親しみがあったんですけど、SUPは当時、あまり普及もしてなかったし、新しいものにひかれて…」

すぐにSUPの魅力にとりつかれました。
■島津成彰選手
「もともと運動は得意じゃなかったけど、唯一、水の上でこぐっていうのが楽しくって、自分でこいで見る景色っていうのが、陸からじゃ全然見えない景色ばっかりだったので、そういうのが好きだったのかなあって…」

フラットな水面をこぐカヌーより、どんな波でもこげるSUPの方が好きだった島津選手。それが、世界を目指すまでに変わった理由は?
■父 久輝さん
「私達夫婦はそんな思いは全然なかったので、どこからそういう思いが出てきたのか不思議なんですけど」

島津選手の家は普通のサラリーマン家庭で、スポーツで世界を目指すという発想は全くありませんでした。それが変わったのは、偶然の出来事でした。向かいの家に、野球で12歳以下の日本代表キャプテンになった選手の祖母が暮らしていたのです。

また、その選手は島津選手と同じ年齢で、正月などに水俣に来た時、一緒に遊ぶことがありました。その時、国際大会での話を聞かせてもらいました。

■島津成彰選手
「小学校6年生の時に日本代表になった話などを色々聞いて、海外に行った時の話を聞いたりとかして、すごいなーと思ってはいました。そういうのを身近に見てたから、後に競技を始めて代表を目指すとなった時、それがそこまで高いものとは感じませんでした。自分も頑張れば戦えるんだっていう、それくらい好きだったし、すごい練習したらあそこへは絶対行けるっていう自信があって」

2020年頃、SUPがオリンピック種目に選ばれる可能性が出はじめ、ますますSUPのとりこに。15歳の時には早くも日本代表として世界で活躍していました。

■島津成彰選手
「それこそ最初のオリンピックで金メダリストになってやるっていう気持ちがあったので」

今年のパリオリンピックは無理でも、次のオリンピック出場を見据えて高校卒業後の進路も考えていました。ところが、SUPはオリンピック種目から落選しました。
■島津成彰選手
「一気に…マジ、これからどうしようっていう考えにはなりました。今年パリオリンピックがあって、出場の可能性が4年後っていう、その4年後の計画をもう立ててたのがもう全部崩れて…」
■父 久輝さん
「うん、もう…家族も落胆してしまって…」

その時思い出したのが、SUPのトレーニングのために続けていたカヌーだったのです。すでに、国内トップクラスの実力でした。
■父 久輝さん
「二刀流でやっていたので、それが幸いで、カヌーの方にシフトチェンジして」

■島津成彰選手
「SUPに関してはショックではあったんですけど、でもSUPだけじゃないだろって。俺はまだカヌーもやってるし、2つを極めているから相乗効果で強いんだぞっていう…」

「SUPで強くなれたのはカヌーのおかげ。だったら、SUPはこれまで通り世界選手権を目指し、カヌーでオリンピックをめざせばいいじゃないか」。島津選手はそう決心しました。

熊本県高校総体は、これまで1学年上に日本代表の選手がいたこともあり、なかなか勝てませんでしたが、今年は初優勝。カヌー選手としても一皮むけ、8月は全国総体を控えています。

■大澤基夫コーチ
「何かひとつ、壁を越えた」
■父 久輝さん
「ありがとうございます!」
■島津成彰選手
「やっぱり好きな競技で負けたくないので、今年はひとつの大きな節目と思って、いい成績を残して終わりたいなと思います」