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【特集】秘策は「忍者」と「スマートゴミ箱」⁉ 秋の観光シーズンで京都が抱える“オーバーツーリズム”問題 悪戦苦闘する古都の対策と課題

2023年11月24日 19:25
【特集】秘策は「忍者」と「スマートゴミ箱」⁉ 秋の観光シーズンで京都が抱える“オーバーツーリズム”問題 悪戦苦闘する古都の対策と課題
観光地を悩ます「オーバーツーリズム」問題

 古都・京都に、秋の観光シーズンが到来。美しい景色を求めて、国内外から多くの観光客が訪れます。しかし、コロナ禍前から“観光公害”、いわゆる「オーバーツーリズム」が課題となってきました。5類移行後、初めての秋を迎え、どうなっているのか―現状を取材しました。

「忍者」に「乗り合いタクシー」…さまざまな対策で混雑緩和狙う交通機関

 観光地・嵐山の玄関口、JR嵯峨嵐山駅。平日の昼間にもかかわらず、電車が到着すると、たちまちホームはいっぱいになりました。

(嵯峨嵐山駅の周辺住民)
「前より、だいぶ増えています。お客さんも、混雑も」

 これから紅葉シーズンが本格化すると、駅のホームに人がたまり、危険な状態になる恐れもあります。

 ただ、JR嵯峨野線の混雑には、“ある傾向”が。同じ電車の中に、観光客が“降りてくる車両”と“誰も降りてこない車両”があるのです。実は、JR京都駅の嵯峨野線は行き止まり式のホームになっており、乗りやすい手前の車両に乗客が集中してしまっているのです。

 そこで、車両ごとの混雑の偏りをなくそうと登場したのが、“忍者”です。2023年9月から、外国人観光客に大人気の「忍者の人形」を京都駅のホームに設置し、一緒に記念撮影するよう促すことで、空いている奥の車両へ誘導しようとする試みです。

 しかし、取材中、写真撮影している外国人観光客らしき姿は見られず…。今後、効果は出るのでしょうか。

 他にも、市民が悩まされてきたのが、観光客による市バスの混雑です。秋の3連休の初日に取材すると、京都駅前のバス乗り場には、長蛇の列ができていました。

 しかし、意外にもスムーズに列は流れ、積み残しもなく、バスは出発していきました。

 京都市交通局は、秋の観光シーズンの土日祝日に、京都駅~清水寺間の臨時急行バスを15分間隔で運行。地元住民と観光客の利用するバスを分けることで、混雑緩和を図っています。

 一方、乗り場の混雑などに頭を悩ましているのが、京都のタクシー業界です。背景にあるのは、運転手不足。コロナ禍の3年間で約1800人の運転手が離職し、2割ほど減少したといいます。

(京都府タクシー協会・筒井基好会長)
「売り上げがない中、外に出る仕事、人と接する仕事の不安の中、辞めていかれた方は多かったと思います」

 運転手不足と乗り場の混雑両方を解決するために導入したのが、9人乗りの「乗り合いタクシー」です。9月末から、京都駅から金閣寺に向かう乗り合いタクシーを試験的に運行していて、通常のタクシーでは3500円程度かかるところ、「おとな1人2000円」です。

(乗り合いタクシーの利用客)
「京都に来るのは3回目ですけど、金閣寺に行くのが初めてで。バスの乗り場もよくわからないし、人もちょっと多かったので」

Q.ジャンボタクシーで移動できるのは、どうですか?
(乗り合いタクシーの利用客)
「乗り心地は良いです」

 しかし、試験運行を始めてから約1か月。一便当たり1人程度の利用に留まっています。

(筒井会長)
「お客さまへの周知が足りないと思いましたので、しっかり知っていただくこと。これが一番の課題かなと思っています」

観光地の住民悩ます「ゴミ問題」 “スマートゴミ箱”導入も課題山積

 また、交通機関の混雑と並んで地元住民を悩ませているのが、ゴミの問題です。嵐山で米を販売している店では、長年、“ポイ捨て”に悩まされてきたといいます。

(米のおかべ・岡部芳治店主)
「テイクアウトで食べたものを捨てる場所を探して、うろうろしている。うちの場合は、自動販売機の前にゴミ箱を3つ置いていますので、そこへ捨てる。あふれてきたら、見た人がその周辺に捨てるという」

 2023年から京都市が、嵐山の名所・竹林の小径に高性能な「スマートゴミ箱」を設置しました。自動でゴミを圧縮し、1台でゴミ箱4~5台分の役割を果たします。しかし…。

(読売テレビ・藤枝望音記者)
「スマートゴミ箱から、ゴミがあふれ出しています」

 スマートゴミ箱でも、週末の夕方には、この有り様に…。辺りに悪臭が漂います。ゴミ箱がいっぱいになると市の担当者にメールで通知される仕組みですが、この場所は日中、車両の通行が規制されるため、回収することができません。

(嵐山商店街・石川恵介会長)
「ゴミが出ない町が一番良いんですけど、今や食べ歩きも文化になっていますし、難しいです」

 試行錯誤が続く、京都のオーバーツーリズム対策。「観光客の受け入れ」と「地元住民の生活」が両立できる日は、果たして来るのでしょうか。

(「かんさい情報ネットten.」2023年11月16日放送)