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伊総選挙 勝敗のカギは「移民・難民問題」

2018年3月9日 17:46
伊総選挙 勝敗のカギは「移民・難民問題」

今月4日に行われたイタリアの総選挙は、復権を目指すベルルスコーニ元首相らの「中道右派連合」が勝利した。選挙戦のカギを握ったのはイタリアで深刻になっている難民・移民の問題だった。


■“女性が移民に殺されている”は事実か?

記者「ベルルスコーニ氏が現れました。会場に支持者だけを集めていることもあり、非常に落ち着いた表情を浮かべているように見えます」

脱税の罪で有罪となり、公職追放中にもかかわらず表舞台への復帰を目指したベルルスコーニ元首相(81)。選挙戦では難民・移民の問題を強調する場面が目立った。

ベルルスコーニ元首相「3日に1人の女性がイタリアでは殺されているという」「難民・移民問題にとりかかるべきだ」

イタリアで大勢の女性が難民らに殺されているかのようなこの発言は、事実なのだろうか。

イタリアでは。去年1月から10月にかけ、114人の女性が殺害された。つまり、「3日に1人の女性が殺されている」というベルルスコーニ氏の発言自体は事実だ。しかし、パートナーや家族に殺害された女性も多く、すべてが難民や移民による犯罪ではない。意図的に難民は危険だとあおっているのだ。


■収容所はパンク寸前…精神問題を抱える移民も

今回の選挙戦では、ほかの候補からもこうした発言が相次いだほか、移民排斥を訴える極右団体も活発化。アムネスティ・インターナショナルからは「イタリアで人種差別が急速に拡大している」との指摘も出た。

しかし、イタリアで、難民・移民が深刻な社会問題であるのも事実だ。

記者「ローマ郊外にある難民キャンプに来ました。ここにはアフリカなどから渡ってきた難民160人が現在暮らしているということです」

イタリアには、アフリカなどから地中海を超え、この4年間だけで60万人以上もの難民らが到着し、収容所はパンク状態になっている。

ボランティアの男性「彼らがここに暮らしているのは、イタリアが難民のために十分な投資をしていないから」

取材中、こんな場面もあった。インタビューの最中、取材班の後ろにいた難民の男性が突然、叫び始めた。

ボランティアの男性「すいません、彼が問題起こさないか心配で…これがキャンプの日常です。リビアで拷問を受け、深刻な精神的な問題を抱えている人も多いんです」


■選挙の結果は――

北部のミラノの中心部でも駅の周辺に寝泊まりする大勢の難民たちの姿が見られる。結局、今回の選挙戦に勝利したのは、こうした現実を追い風にしたベルルスコーニ氏が率いる「フォルツァ・イタリア」など、4つの政党が組んだ「中道右派連合」だった。

過去のスキャンダルへの批判もある中で、ベルルスコーニ氏の政党自体は終盤戦で失速。その代わりに、難民らの問題やEU(ヨーロッパ連合)との関係をめぐり、さらに過激な主張をする同じ中道右派の政党「同盟」が支持を伸ばした。

難民問題をきっかけに急速に変わりつつあるイタリア社会。EUにとっての新たな課題となりつつある。