政府「必要ない」一転、なぜ前川氏が国会へ
国会では10日、加計学園問題をめぐる閉会中審査が行われ、参考人として前川・前文部科学事務次官が出席した。前川氏が国会で証言したポイントと、当初、政府が「必要ない」としてきた閉会中の審査に一転して応じた背景などについて考える。
■前川氏、参考人招致で何を語ったか?
前川氏の10日の発言を、3つのポイントでまとめた。
(1)官邸からの圧力はあったのか
安倍首相が「圧力は一切ない」としている中で、前川氏は、改めて「官邸の意向が強く働いた」との認識を示した。
(2)加計学園に決まった経緯
これまで、菅官房長官は「行政がゆがめられたことは一切ない」としていたが、前川氏は、「条件が次々につけ加えられるなど、初めから加計学園に決まるようプロセスを進めてきたようにみえる」と話し、“加計学園ありき”だったと主張。両者の意見は真っ向から対立したままだ。
(3)“萩生田文書”の真偽
「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」などと安倍首相が開学の時期に言及したかのような発言が記載された文書について、前川氏は、ほぼ信憑性があるとしているのに対し、萩生田官房副長官は、間違った文書だと言っていて、ここでも対立している。
■「必要ない」から急転直下…なぜ審査に応じたのか?
そもそも、国会が閉幕した後でなぜ急に審議が行われたのだろうか。当初、政府与党内では閉会後の国会審議は必要がないという立場をとっていたが、急転直下、実現した背景には、「自民党が東京都議選で惨敗したこと」「さらに内閣支持率が急落したこと」があげられる。NNNの世論調査によると、安倍内閣の支持率は31.9%となった。第2次安倍政権発足以来、最低となり、政府与党内に危機感が広がっている。
特に加計学園の問題をめぐっては、説明不足との指摘が相次いだ。たとえば、菅官房長官が当初「怪文書だ」と取り合わなかったり、文科省の調査の後で、別の文書が見つかったり、本気で調査する気があるのかと疑いたくなるような対応が続いた。世論の疑問の声に押される形で重い腰をあげた。
■偽証罪に問われない「参考人招致」
ただ、今回もできる限りダメージを抑えたい政府与党の思惑がある。というのは、今回は「証人喚問」ではなく「参考人招致」だ。「証人喚問」は本人が嘘をつくと偽証罪に問われ、その分、発言に重みがある。
森友学園問題では、籠池前理事長は「証人喚問」だったが、今回は、前川氏本人が「証人喚問に応じてもいい」と表明していたにもかかわらず「参考人招致」となった。これは前回、籠池氏の証人喚問での発言が与党の想定する以上に政権へのダメージにつながったこともあり、今回は「参考人招致」にとどめておきたい狙いがあったようだ。
■問われる説明責任
加計学園問題では、きょうの国会のやりとりをきいても問題の本質である「行政がゆがめられたのか」「公平公正な議論で加計学園に決まったのか」などが明らかになっておらず、やりとりは低調だったと言わざるを得ない。
安倍首相は、ヨーロッパ歴訪中で不在のため、野党は真相解明のため、今後も首相出席の審議も別途求めていく方針だ。安倍首相が説明責任をどのように果たすのか、支持率が急落する中、信頼回復への政権の対応が問われることになる。