「初心に戻る」内閣改造 注目の4人とは?
安倍首相は3日、内閣改造を行い、第3次安倍再々改造内閣が発足。閣僚19人中、14人が入れ替わった今回の内閣改造人事は、一言で言えば“堅実さを重視”した印象だ。
改造自体は19人中14人と大規模に入れ替え、閣僚経験者を多数起用した。即戦力重視、実力派メンバーを集めたと言える。
■注目人事は4人
まずは、日報問題をめぐって稲田朋美氏が辞任し、大揺れとなった防衛省を立て直すために起用された小野寺五典氏。
2012年から約1年9か月、安倍政権で防衛相を務めた小野寺氏は3日朝、次のように述べている。
小野寺氏「いろんな形で混乱があるのであれば、それは1日も早く終息して、そして一丸となってこの国の安全を守る。そういう役割が果たせるような組織になってほしいと思います」
小野寺氏は歴代防衛相の中でも、駐屯地など現場の部隊を回った回数が非常に多い人物だ。省内からの信頼は厚く、今回の内閣改造でも「小野寺氏待望論」が多く聞こえてきた。
さらに国会答弁も安定していて評価が高いため、安倍首相には経験者の小野寺氏に防衛省・自衛隊を立て直してほしいという思いがあるとみられる。
2人目は安定感のあるベテラン議員・林芳正氏。文部科学相を務める。
文科省と言えば、加計学園の獣医学部新設をめぐり、「総理のご意向」などと書かれた文書について連日、議論になった。
度々、追及の矢面にたたされてきた松野前文科相の後任に、これまでに防衛相など3つの閣僚ポストを歴任し、政策通として知られる林氏が起用された。
今回の改造で安倍首相は防衛相、文科相ともに、派手さはなくとも温厚でかつ経験豊富な2人に任せる判断をした。混乱した組織を立て直し、早く問題を幕引きしたいという思惑だ。
■政権にもの申してきた野田聖子氏
3人目は総務相に起用された野田聖子氏。今回の改造で一番のポイントとも言えるだろう。というのも、野田氏は安倍首相と距離を置いてきた人物だ。
野田氏は1998年、省庁再編で総務省ができる前、郵政相に就任するなどしてきた。しかし、2005年には郵政民営化法案に反対、いわゆる“郵政選挙”では郵政造反組として、無所属で出馬した。
その翌年に自民党に復党するが、2015年の自民党総裁選挙では出馬を模索するなど、安倍政権にもの申してきた人物だ。
野田氏は3日、「あれだけ支持が高かった自民党の安倍政権が、低い支持率で苦しんでいます。これは私たちの責任でもありますから、お呼びがかかれば、まさに『義を見てせざるは勇無きなり』。外で批判するのではなく、共に汗をかいていく」と述べている。
――なぜ、安倍首相は距離を置いてきた野田氏を起用することになったのか。
挙党態勢をアピールする、つまり自民党が結束していることを示す狙いがある。安倍首相は重用した稲田氏などの失態で支持率が下がり、「身内びいき」との批判が党内から出ていた。
ここで、あえて反主流派の代表格とも目される野田氏を入閣させることで、党内の引き締めを図り、自分にとって耳が痛いことを言う人も受け入れるという政権の懐の深さを示す狙いがある。
4人目は外相を4年7か月務め、先週、稲田氏から引き継いで防衛相を兼務していた岸田文雄氏。安倍首相は「ポスト安倍」を目指している岸田氏の「自民党内に足場を固めたい」という希望を尊重し、閣僚ではなく、自民党の政調会長に起用した。
これは、岸田氏の意向を尊重する代わりに、党の側から政権を支えてほしいという考えだ。
■うやむやにしない
安倍首相は3日、「深く反省し、初心に戻る」と信頼回復に取り組む姿勢を示した。
一方、民進党幹部は「安倍首相自身の信頼が下がっているので、閣僚の顔ぶれを変えたところで変わらない」と批判している。
閣僚が入れ替われば日報問題や加計学園問題などに幕引きというのではなく、この問題に関わっていた閣僚がいなくなっても政府はうやむやにせず、しっかりと説明を尽くしてほしいと思う。