“忖度”した? 文書改ざん、誰の指示で?
森友学園への国有地の売却問題について、財務省の決裁文書が改ざんされていたことが明らかになった。文書改ざんを巡り何らかの“忖度”はあったのか? 改ざんの背景を取りあげる。
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■「最強官庁」が起こした改ざん問題
今回の改ざんは、当時、財務省の理財局長だった佐川宣寿氏の国会答弁のつじつまを合わせるために理財局の一部の職員が行っていたと麻生財務相は説明した。この財務省というのは、国の予算を配分するという絶大な権力を持っていることもあって、「最強官庁」とも呼ばれている。今回の問題は、優秀な官僚を抱えるこの超エリート集団で起きた。
■今回の改ざん、罪に問われる?
まず、こうした改ざんが罪に問われるのかどうかだが、ウソの公文書を作成したという「虚偽有印公文書作成の罪」に問われる可能性がある。ただ、今回は一番肝心な決裁そのものの文書ではなく、その経緯を説明する文書を改ざんしているので、刑事責任は問えないのではないかという声も多くある。
■一体、誰の指示で?
ここまで全く解明されていないのは、一体、誰の指示でやったのか、ということだ。決裁後の公文書は書き換えてはならないことになっているから、末端の職員が独自の判断で改ざんしたとは考えにくい。それは職員レベルでの話なのか、それとも当時局長だった佐川氏の指示だったのか、はたまた官邸からの指示があったのかがポイントになる。
■“忖度”あったのか?
もし、政治家から直接的な指示がなかったとしても、一部の職員らが政治家に“忖度”を行っていなかったか、ここが問題の本質だ。この点について、12日は野党が財務省へのヒアリングで厳しく追及していた。
民進党・桜井充議員「一番下のところに26年4月 安倍昭恵夫人とわざわざ書いている。一民間人が来たときに、いくらこのときに例えば誰々が言ったとか何がどうだっていったって書きはしない。(昭恵夫人は)一民間人じゃない扱いをするような中の1人であったわけでしょ。総理に言われたからやったんだろうけど、総辞職に値するって言ってるわけですよ」(12日)
財務省「これを記載した職員への確認も改めて必要」(12日)
野党側は、今回、元の文書に記載されていた安倍首相や昭恵夫人の名前や記述を消した事について、何かやましいことがあるんじゃないか、忖度があったんじゃないかと追及している。安倍首相は去年、国会でこのように発言している。
安倍首相「私や妻が関係していたということになれば、これはもう私は総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」(去年2月17日)
ここまで首相が断言したのは驚きだった。こうした首相の発言も、改ざんした理財局の一部の職員に何らかの影響を与えたのかもしれない。
■「内閣人事局」設置が“忖度”に影響?
官僚が“忖度”したとすれば、どうしてそんなことが起きたのか。背景の一つに、「内閣人事局」という官僚の幹部人事を一元的に行う組織ができたことがあるのでは、という指摘もある。内閣人事局は第二次安倍政権が2014年に設置した組織だ。首相官邸の直轄で、国家公務員の幹部およそ600人の人事を決めている。
もともと省庁の幹部人事は自分たちの判断で決めていたので、いわば人事を官僚主導から政治主導に変えた。これによって安倍政権は農水省の事務次官に次の次官と目されていた人物ではなく、あえて別の改革派と言われる官僚を次官に据えて60年ぶりとなる農協改革を推し進めた。
改革を促す意味では、いい働きをしている。ただ一方で、あるキャリア官僚は「人事権を握られたことで、官僚が官邸の意向ばかりを気にするようになった」と話している。
つまり、官邸が人事権を握っているため、安倍首相の政策に問題があったとしても、官僚が官邸の顔色をうかがって、“忖度”するという副産物を生み出したとも言える。
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改ざんの全容が明らかになっていないにもかかわらず、財務省は佐川氏を辞任させ、減給などの懲戒処分にした。佐川氏をはじめ、一部の官僚に責任を押しつけて事の幕引きをはかる姿勢では、国民は納得しない。徹底的にうみを出し、真相を明らかにすべきだ。