子宮けいがんワクチン接種 新たな意識調査の結果を発表 厚労省
毎年、およそ3000人の女性が死亡し、40歳未満に限ってもおよそ1000人が子宮摘出を余儀なくされる子宮けいがんについて、新たな調査結果が発表されました。
子宮の入り口=子宮けい部のがんを防ぐには、ワクチン接種と検診が有効だと言われています。ワクチンは、子宮けいがんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐためのもので、最新の9価ワクチンの場合、15歳になる前に1回目を接種をすれば合計2回の接種ですみ、それ以外は3回の接種が必要です。1回の接種で3万円近く費用がかかりますが、定期接種の対象である小学6年生から高校1年生相当の女性は無料で接種できます。
また1997年度から2007年度生まれの女性も特別に、来年3月末までは、3回とも無料で接種できる制度「キャッチアップ接種」がありますきょう、厚労省は、ことし2月に行った意識調査の結果を発表しました。それによりますと、「キャッチアップ接種」の対象となっている女性のうち48.5%と半数近くがこの制度を知らないことがわかりました。また、キャッチアップ接種の対象者に、「HPVワクチンが安全だと思うか」尋ねたところ、「そう思う」が31.4%で、「そう思わない」が14.6%、「どちらともいえない」が54.1%と半数以上が判断に困っている実態が明らかになりました。一方、小学6年生から26歳の女性に聞いたところ、「HPVワクチンが子宮けいがんを予防するのに有効である」と答えた女性は約60%、「HPVワクチンが重要である」と答えた女性も約60%でした。一方、「HPVワクチンのリスクについて十分な情報がなく、接種するかどうか決められない」が51.2%でした。つまり効果があることは理解しつつも、情報不足で安全性には確信が持てずにいる傾向がわかりました。キャッチアップ接種の実施は来年3月末までと決まっていて、数か月間隔をとって3回接種するには、半年かかるため、この夏に1回目を打つ必要があり、あと数か月で対象者にどう周知するのか、大きな分岐点に来ています。
一方、厚労省によりますと、2022年度の時点のHPVワクチンの各年代の接種率の推計では、1995年度から99年度生まれまでは、70%台から80%台と諸外国並みの高さです。一方、接種後に全身の痛みなどを訴える例があったことをうけて、政府が2013年6月以降、接種を積極的に呼びかけるのを控えたことから、それ以降の定期接種の対象年代の毎年の接種率は1%以下などという傾向が続きました。その後、安全性や有効性を示す論文やデータが海外などで出たのをうけて、政府は、2022年4月から積極的な勧奨を再開。前述のように、少し上の年代が無料で接種できるキャッチアップ接種も実施した結果、2022年度までの累計接種率は、2000年度生まれは20%、2001年度生まれは9.1%、2002年度生まれは9.3%、2005年度生まれは31.6%、2006年度生まれは25.2%、2007年度16.7%などと推計されています。
諸外国では80%以上の高い接種率を背景に、子宮けい部のがんや、がんの前段階の病変(高度異形成)が大きく減り、イギリスでは2040年頃、オーストラリアでは2030年代前半に、子宮けいがん撲滅の可能性がでてくる中、専門家は日本だけが取り残される可能性を危惧していて、今後接種率をどこまで上げられるかが重い課題となっています。