家計消費、7月は3か月ぶり増も……「食費」は減 東大が授業料UP 免除の年収、600万円以下で十分?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「家計の支出増減…教育費は?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●家計の支出 増えたのは?
●東大の授業料 なぜ値上げ
「ひと月に、自分の世帯でどれくらい使っているか分かりますか?」
桐谷美玲キャスター
「キャッシュレス決済や電子マネーも使っているので、きちんとは把握できていないですね」
加納解説委員
「どんぶり勘定になりがちなところがありますよね。総務省が発表した家計調査について見ていきます。2人以上の世帯が今年7月に消費した金額は29万931円でした。去年の同じ月よりも実質0.1%増。3か月ぶりの増加となりました」
「対前年同月の名目増減率で内訳を見ると、去年に比べて77.9%と大きく増加したのが『パック旅行費』です。賃金上昇の流れでボーナスが増えて、旅行マインドが高まった可能性があるということです」
「他にも、64.4%の増加となったのが『テレビ・パソコンなどの購入費』でした。こちらもボーナスアップの影響もありそうですが、大きかったのはパリオリンピックが開催されたことだそうです」
鈴江奈々アナウンサー
「オリンピックイヤーはテレビが売れると言われてきました。視聴習慣も大分変わってきているので、変化しているのかなとも思いましたが、うれしいですね」
加納解説委員
「その他、大きく上昇したのが『住宅の設備修繕費』で34.6%増です。外壁やキッチンのリフォームが当てはまります。住宅が高いので、買うよりも直す方針にした人がいた可能性もあるそうです」
森圭介アナウンサー
「資材も高騰し人件費も高まっていますから、そういった数字も含まれるのかもしれないですね」
加納解説委員
「その一方で、支出が減ったものもあります。『食料』(食費)です。物価高を背景に1.7%減少しました。牛肉ではなく安い豚肉や鶏肉が人気になったこと、野菜などについては生育不良で価格が高騰して買い控えが起きた可能性があるということです」
「さらに、電気代やガス代などの『光熱・水道』も4.6%の減少となりました。政府の補助が終了し、節約志向がより強まったとみられています」
河出奈都美アナウンサー
「旅行やテレビ・パソコンなど大きな買い物をした分、こういう食費や日々の生活費で切り詰めるという方が多かったのかもしれないですよね」
加納解説委員
「ここから注目したいのが、教育に関する支出です。塾などの『補習教育』にかかったお金が、去年よりも26%増えました。去年は新型コロナウイルスの影響で塾に通う子どもが少なかったのが、今年は例年通りに戻ったことが背景にあると、総務省は分析しています」
鈴江アナウンサー
「逆に言えば、コロナ禍では学習機会がやはり制限されていたと読み取ることもできます。そういう意味では例年通りに戻ってよかったですね」
加納解説委員
「10日夜、東京大学は20年ぶりに授業料を値上げすると発表しました。現在は年間53万5800円ですが、来年度の学部入学生からは64万2960円と、約10万円の値上げとなります」
「そもそも国立大学の授業料は、国が定める標準額というものがあります。ただ、これは相当な理由があれば各大学の判断で2割まで増やすことができます。東大はその満額まで引き上げた形となりました」
桐谷キャスター
「10万円というと、結構大きな差にはなりますよね」
加納解説委員
「そうですよね。その負担を考えて、東大はこれまで授業料が全額免除となる世帯年収を400万円以下としてきましたが、600万円以下に広げる方針です」
加納解説委員
「では実際、どれくらいの家庭が免除されることになるのでしょうか? 2022年に行われた調査で、東大の学生に自分の家庭の世帯年収を聞いたところ、『1050万円以上』と答えたのは約31%でした」
「『450万円未満』は約11%、『450万円以上750万円未満』も約11%でした。(600万円以下なら)この辺りのゾーンが免除されるイメージです。では600万円以上は免除されなくていいのか、支援が本当に行き届いていると言えるのか。検証が必要だと言えます」
森アナウンサー
「ヨーロッパの公立大学などは授業料が無償のところもあり、アメリカと比べると日本はかなり安いと言われています。授業料が上がるのなら、奨学金が借りやすくなったり、成績によって授業料が減免されたりといった制度がもっと広がると、よりいいなと思います」
加納解説委員
「今回の授業料の値上げには、大きな反発の声がありました。そもそも、親が裕福だからといっても、親が学費を払うとは限りません。大前提として、値上げによって学べる機会の喪失につながりかねないといった声が上がっています」
森アナウンサー
「後で授業料を払えるような制度は検討されていますが、学べることとお金を払うことを、制度でなんとかバックアップできないかも今後課題になってくるのかなと思います」
加納解説委員
「ではなぜ、値上げをするのか。国立大学を取り巻く財政難という問題があります。大学を運営するため、運営費交付金が国から出ています。大学にとって基盤となるお金です」
「この予算額の推移を見ていくと、だいたい1%ずつ減っています。2004年度は1兆2415億円でしたが、今年度は1兆784億円です」
「国は大学側に『法人なんだから経営を改善しなさい』『予算も年々減らしますよ』というルールを課しています。こうしたこともあり、財政的に追い込まれている大学があります」
加納解説委員
「去年2月には東京芸術大学が、学生の練習用のピアノ5台を24万円で売却しました。電気代の高騰で、維持費がかかるピアノを売ることで、経費を削減した形です。そして東京芸術大学は2019年に、授業料の値上げにも踏み切っています」
河出奈都美アナウンサー
「予算が下がっているグラフを見ると、どこの大学も涙ぐましい努力や切り詰めている部分があるのかなと思います」
加納解説委員
「そして、日本の大学の最高峰とも言われる東大が値上げに踏み切ったことで、他の国立大も追随して値上げするのでは、と不安視する声も強まっています」
鈴江アナウンサー
「値上げされたということで、進学を諦めたり、学ぶ機会をどうしようかと悩んだりする学生が増えないようにしてほしいです」
「そういった対策が求められる一方で、大学自体の競争力を高めることは、日本の競争力を高めることにもつながります。そこに必要なお金がしっかり集まる形も考えないといけないですね」
加納解説委員
「日本の国際力向上が求められる中、学びたいと思う人が学びたい場所で学問を修めることができる環境が何よりも大切です」
(2024年9月11日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)