【解説】ハリス氏vsトランプ氏、初の直接対決は? 米大統領選
11月のアメリカ大統領選挙に向けた、ハリス副大統領とトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会が開かれ、互いに「無策」と批判し合うなど、激しい論戦となりました。現地で取材したワシントン支局の増田理紗記者が解説します。ポイントは、以下の3つです。
1. 激しい応酬、討論会の雰囲気
2. ハリス陣営は手応え 評価は?
3. 今後の大統領選への影響
──まずは「激しい応酬」。討論会の雰囲気はどんな様子でしたか?
増田理紗記者
「互いに『無策だ』と非難し合う討論会となりました。ハリス氏はトランプ氏の発言を否定しようと苦笑いしたり、首をかしげたりするなど“余裕”を演出した一方、トランプ氏はほとんどハリス氏の方を見ず、強い口調で持論を展開してハリス氏を責め立てた印象です」
──バイデン氏との討論会と比べて、トランプ氏の様子はどうでしたか?
増田記者
「前回はトランプ氏が討論会の流れを作り、バイデン氏を挑発していましたが、今回はハリス氏が挑発するような場面も目立ち、トランプ氏がいらだつことも多く、表情も前回より険しかった印象です」
──続いて2つ目のポイント、「ハリス陣営は手応え 評価は?」ですが、今回の討論会はどのように評価されたのでしょうか?
増田記者
「ハリス氏は終了後、ウォッチパーティーに姿を見せ、『きょうは良い日だった』『これまで懸命に取り組んできたことを強調する夜だった』と述べ、手応えを感じた様子でした。一方のトランプ氏は終了直後、報道陣が集まるプレスセンターに登場しました。これはかなり異例なことでして、自らの討論を自画自賛したのですが、焦りの表れともみられる発言をしました」
トランプ前大統領(討論会終了後)
「素晴らしい討論会で、私は最高のパフォーマンスをしたと思う。(討論で)ハリス氏は外交政策でも国境問題でも非常に悪かった」
◇
増田記者
「CNNが終了後の世論調査で『どちらが勝ったか』と尋ねたところ、ハリス氏が63%、トランプ氏が37%だったと伝えています。バイデン氏との討論会の評価から逆転した形です。今回の討論会の前に行われた勝者を予測する調査では両者とも50%と互角でしたので、ハリス氏が予想以上のパフォーマンスを見せたといえそうです」
「そして、トランプ氏寄りの報道で知られるFOXニュースを含む複数のアメリカメディアも『ハリス氏が勝利した』『ハリス氏は落ち着いていて、大統領にふさわしい人物に見えた』などと評価しています」
──そして、3つ目のポイント、「今後の選挙戦への影響は」についてですが?
増田記者
「アメリカメディアは、討論会は『ハリス氏の勝利』だとしていますが、『選挙の結果に根本的な影響を与えるかどうかは明らかではない』と指摘しています。といいますのも、前回の討論会でバイデン氏は『惨敗した』との評価を受けたものの、その後の支持率の世論調査は大きくは変化しなかったのです」
「アメリカ社会の分断が進む中、『投票先は決まっている』という人が多いためです。ただ、選挙戦の勝敗を左右する接戦州ではわずかな票差が勝敗を分けるため、無党派層への影響次第ではハリス氏にとって追い風となる可能性もあります」
「また、討論会の終了直後に人気歌手のテイラー・スウィフトさんがハリス氏への支持を表明しました。スウィフトさんはトランプ氏が警戒するほど『Z世代』への影響力が大きい人物です。今回のSNSの投稿でも『自分で考えて決断してほしい』と投票を強く促していて、若者が呼応してハリス氏への投票につながる可能性があります」