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「休日救急センター」中止…診療体制に課題

2015年11月10日 1:51
「休日救急センター」中止…診療体制に課題

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。9日は、「命を救う“準備”」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

 ■お薬手帳・靴…救急車呼んだら準備

 11月9日は「119番の日」。誰でもけがや急病で救急車のお世話になる可能性がある。安易な利用は許されないが、本当に必要なときにはスムーズに搬送してもらえるよう準備が必要だ。

 119番をしてから、救急車が到着するまでの間に準備しておくものとして、消防庁は次のようなものを紹介している。保険証とかかりつけの病院の診察券、普段飲んでいる薬やお薬手帳。そして、靴。救急隊員の方にうかがったところ、室内から担架に乗って運ばれた時、病院から帰るのに靴がないということが、よく起きるのだそうだ。さらに、乳幼児の場合には、母子手帳や紙おむつ、ほ乳瓶、タオルといったものも用意しておくといいだろう。

 そして、救急車が来たときに伝えることをメモにしておくことも大切だ。どう体調が悪いのかを伝えることは大事なことだが、それに加えて、持病やかかりつけの病院についての情報のほか、体調が悪くなってからの様子や変化、自分で行った応急手当についても時刻とともにメモしておくと、救急隊員が処置する上で役立つという。

 ■どうする「夜間」「休日」

 救急車を呼ぶほどの事態ではなくても、通常の病院の診療時間外に急に体調が悪くなることもある。そうした夜間・休日についてはどうするか。

 ある調査では、夜間や休日に具合が悪くなった時の対応として、7割近くの人が「情報を調べて救急医療機関に行く」と答えている。そうした声を受けて休日の救急医療を充実させようとした自治体がある。千葉・木更津市だ。

 木更津市では現在、救急車を呼ぶほどではない患者を休日に診察する病院が当番制になっている。どうしても休日に病院に行きたい場合には、その日当番になっている病院を調べ、探して行かなくてはならない。看てくれるのはいいが、具合が悪い時には少し大変だ。

 ■「休日救急センター」の計画、中止に

 そこで打ち出したのが、「休日救急センター」の設置。休日にそれほど重症ではない患者を1か所で受け入れる計画だった。休日でも、とにかくそこに行けば看てもらえるという所があらかじめ決まっていれば、安心にもつながるというわけだ。

 ところが、この計画は中止になってしまった。市や医師会によると、「休日救急センター」に派遣する医師のメドがたたなかったことなどが理由だという。全国の医師を対象に、業務の種類ごとに負担の感じ方を聞いた調査では、時間外の診療や救急対応について「負担が大きい」と回答した医師が37.5%に上り、手術について「負担が大きい」と回答した18.9%よりもかなり多くなっている。

 「休日救急センター」の計画が中止になってしまった木更津市では、今後、周辺の自治体と共同で夜間休日の診療拠点を作ることを目指すとしている。

 ■命を救う体制の実現を

 きょうのポイントは、「命を救う体制の実現を」。政府は、昨年度から休日や時間外の診療報酬を上げ、救急対応をする医師をサポートしようとしている。医師のやる気だけに頼るのではなく、私たちが利用しやすい救急医療の仕組みはどうやったら実現できるのか、考えていくべきではないだろうか。