工場でぼうこうがん発症例 緊急調査へ
インクなどの原料を作る工場で、従業員がぼうこうがんを発症する例が報告されたことから、厚生労働省は、「芳香族アミン」という物質を扱っている工場に緊急の調査を行うことにした。
インクなどの原料となる染料や顔料を作る、従業員約40人の工場で、従業員4人と元従業員1人の計5人が、去年から今年にかけてぼうこうがんを発症したという報告が、今月3日、厚労省に寄せられたという。5人はいずれも男性で、死亡していないが、この工場で約20年間、「芳香族アミン」という物質を扱っていた。
「芳香族アミン」はいくつか種類があるが、特に「オルトトルイジン」は、ぼうこうがんをひきおこすと指摘されている。「芳香族アミン」を扱う企業に対しては、労働安全衛生法で、適切な換気を行い、空気中の濃度を管理したり、従業員にマスクや手袋を着けさせたりすることを努力義務としている。
今回のぼうこうがん発症の報告を受け、厚労省は「芳香族アミン」とぼうこうがん発生との因果関係を調べると発表した。また、「芳香族アミン」を使っている工場に対しては、18日、文書で注意を喚起し、適切に扱うよう呼びかけるとともに、「オルトトルイジン」を扱ったことがある従業員のぼうこうがん検査を行うよう求めた。そして、オルトトルイジンの使用が確認されている工場に、換気の状況や従業員の健康状態について、緊急調査を行う予定。
厚労省によると「芳香族アミン」が原因で、労災に認定された例はこれまでにないという。