高野山「宿坊」で外国人客に“怒りの返信”
寺や神社を参拝する人が宿泊できる施設「宿坊」。高野山(こうやさん)の宿坊を利用した外国人客がネット上にマイナス評価を書き込み、それに対し僧侶が厳しい言葉で返信したことで、波紋が広がっている。その僧侶を取材すると、文化の違いから生まれる課題も見えてきた。
◆外国人利用客と僧侶とのやりとりで波紋
世界遺産に登録されている、和歌山県の高野山。年間140万人が訪れるこの場所では、多くの外国人の姿が目立っている。その目的の1つが、宿坊だ。寺に泊まり精進料理などの体験も出来るとして、外国人観光客に人気がある。
ところが、ある僧侶の利用者への“反論”が波紋を広げている。
外国人利用客:Staff was impersonal(スタッフの対応がそっけなかった)
僧侶:Why do we have to be friendly?????What do you ppl come here for???(なんでフレンドリーに対応しなければならないんだ。何のためにここに来ているんだ)
外国人利用客:出されたベジタリアンフードは、今まで食べたことがある食べ物とは全く違っていた。変な味だった。
僧侶:それは日本の精進料理なんだよ。この物知らずが。
外国人利用客:僧侶の生活について、英語でもっと教えてもらえたら良かったのに。
僧侶:もし僧侶の生き方に興味があるなら、頭を丸めて君も僧侶になるべき。
このやりとりは、海外メディアでも報じられるなど話題に。これについてインターネットでは…
──宿坊って観光じゃないし、いわゆる宿泊施設というのとも違う
──こんな暴言を吐くなんて、僧侶としての修行が足りない
──本当に理解をしようとする方々を受け入れたらいい
◆厳しい言葉の書き込み、なぜ?
僧侶は、なぜここまで厳しい言葉で書き込みをしたのだろうか?
訪れたのは、高野山にある赤松院(せきしょういん)。寺で修行する木村ダニエルさんが、厳しい言葉で書き込みをした本人だ。ダニエルさんは、アメリカ出身で15年前に来日。父親の影響で仏門に入った。
ダニエルさんは、普段から寺にやってくる外国人の対応を担当する。実際に宿坊として使われている部屋を案内してもらうと、部屋からは四季折々の植物に彩られた日本庭園も眺められる。(1泊2食付:1万2960円・税込~)
さらに、目立つのは多くの英語表記。宿坊のルールなどを説明するためだというが、それでもマナーの悪さが目立つという。
木村ダニエル僧侶(30)「ここはホテルではなくて信仰の場所ですので、修行のつもりで来ていただきたいです」
つい感情的に書き込みをしてしまったというダニエルさん。
木村ダニエル僧侶(30)「反省しておりますし、坊さんとして感情を思いっきり表に出しては格好悪いので、広い心で」
◆都内の神社では…工夫と難しさ
ほかの施設ではどうなのだろうか。
強運と厄よけの神様としてあがめられている、東京・中央区の小網神社(こあみじんじゃ)を訪ねた。1日40~50人ほどの外国人観光客が訪れるという。
服部匡記宮司「お守りだとかお札だとか、そういったものに対して、御利益をなかなか英語で、説明ご理解いただくのが難しいこともある」
小網神社では、御利益の説明などを英語に訳して表記している。さらに、参拝方法を示した英語ファイルも用意しているという。
服部匡記宮司「私どもで、こういったファイルを手元に用意させていただいて。それぞれのお参りの仕方ですね」
こうした努力もあって、外国人観光客と大きなトラブルはないという。しかし、神社や寺院では日本独特の文化もあり、外国人とのコミュニケーションには苦労しているようだ。
◆訪日外国人が増加、まだまだ課題も
年々、訪日外国人が増える中、外国人観光客はどんなことで困っているのだろうか。
観光庁が約3000人にアンケートを行った結果、やはり1番多かったのは26.1%で「施設のスタッフとコミュニケーションがとれない」。そして、「多言語表示が少ない、わかりにくい」が21.8%、「無料の公衆無線LAN環境」が21.2%だった。
取材した神社では、積極的に外国人への対応を行っていたが、都心の交通機関でも外国語の表記を追加する作業が急ピッチで進められている。
一方で、地方は多言語表記が都市部に比べて遅れていて、国は、外国人観光客の地方への誘致を進める上での課題としている。