“C滑走路に「STOP」なし” 元パイロット「視覚情報」の重要性指摘 羽田衝突事故から1か月
羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故から、2日で1か月。乗客は事故の経緯が徐々にわかってくるにつれ、“紙一重の怖さを感じた”と語ります。今後、空の安全は、どう守られるべきなのでしょうか。「対策検討委員会」のメンバーで、元パイロットの小林宏之さんは「視覚情報」の重要性を指摘しました。
2日、私たちが話を聞いたのは、“あの現場”にいた男性――今年の正月、衝突事故のあった日航機の乗客です。
日航機に乗っていた 栗原正晴さん(50)
「私が家族で座っていたのが、37の右側の列」
栗原さんは、機体右側に座っていたといいます。
「なんか焦げ臭い」
「火出てる、火出てる」
気づいたときには、前方の乗客がいなくなっていて、続いて脱出したといいます。
日航機に乗っていた 栗原正晴さん(50)
「事故直後は、何が起こったか、乗っていてわからなくて。いろいろなことがわかるにつれて、紙一重だったんだなという怖さは、より感じるようになった」
1か月前の1月2日、羽田空港で、日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機の衝突事故が起きました。
乗客
「はやく、だしてください!」
日航機の乗客・乗員379人は全員脱出できましたが、海上保安庁の5人の乗組員が死亡しました。
JAL機がC滑走路に着陸した際、滑走路上に進入していた海保機。
この直前、管制官は海保機に対し…
交信記録より
「ナンバー1、C5上の滑走路、停止位置まで、地上走行してください」
離陸の順番が1番目であること、停止位置で止まること、を指示していましたが――
事故の調査や捜査が進むなか、管制官の“ナンバー1”の一言で、海保機の機長が“離陸の許可を受けたと誤認した”、との見方が強まっていることが、関係者への取材でわかりました。
2度と起こしてはいけない事故……。
国土交通省が設置した「対策検討委員会」のメンバーで、元パイロットの小林宏之さんは。
元パイロット 小林宏之さん
「パイロットと管制官のコミュニケーションは、『聴覚情報』だけではなく、『視覚情報』をできるだけ入れていくことが、一番のポイント・課題になる」
聞き間違いなどによる事故を防ぐために、“視覚情報”が必要だといいます。
その1つが、航空機が横切ることが多いA滑走路には設置されている「STOP」と警告が出る「案内灯」だといいます。
元パイロット 小林宏之さん
「『聴覚情報』と『視覚情報』と両方で壁がありますから、まず間違って入ってしまうということはない」
この「案内灯」を、「事故のあったC滑走路にも設置するべき」と話します。
また、C滑走路には、停止位置を示す赤いライトが設置されていますが、事故当時は。
元パイロット 小林宏之さん
「600m以下の視程の場合は、それを点灯させる運用になっているが、当時5000m以上の視程だったので、それを運用しなかった」
今回の事故を受け、“視程が悪くなくても点灯する、などの対策が必要ではないか”と指摘しています。