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捨てるのはもったいない!使用済みの薬包装シート10枚が1円玉分のアルミに変身する“新リサイクル方法”とは?

2023年10月12日 16:00
捨てるのはもったいない!使用済みの薬包装シート10枚が1円玉分のアルミに変身する“新リサイクル方法”とは?

プラスチック部分を押すと、アルミが破れ、錠剤を取り出すことができる薬の包装シート。私たちにも馴染みある便利なシートだが、実は再資源化が難しく、年間約1万3000tが焼却処分されている。
この問題を解決すべく、大学や工場などが再資源化を目指す取り組みを実施。実用化が進めば、普段の生活で簡単に実践することができる新たな“リサイクル方法”とは?

■薬学部の学生たちも研究に参加

愛知県津島市にある「浅井薬局 津島店」にて実施されている、“使用済み”の薬包装シートの回収。回収したシートは、名古屋市立大学・薬学部へと届けられる。実は今年1月から、名古屋市立大学が愛知県内の薬局8店舗・1病院とリサイクルに関する実証実験を開始。使用済みの薬の包装シートを集め、リサイクルできる方法を研究しているのだ。
プラスチック部分を押すと、アルミが破れ、錠剤を取り出すことができる薬の包装シート「PTPシート」。実は、アルミとプラチックの2つが含まれているため、再資源化が難しく、年間約1万3000tが焼却処分されているのだ。さらに、プラスチック部分は主に2種類あり、それぞれリサイクルの方法が異なる。
名古屋市立大学薬学部・堀英生先生は「(シートの)プラスチックを構成している樹脂ごとに分けないと、その後のリサイクルをスムーズに行うことができない」とPTPシート再資源化の課題を述べる。
名古屋市立大学薬学部では、堀英生先生の指導のもと、薬学部の学生たちがPTPシートを樹脂の種類別に分けたリストを手作業で制作中。薬学部・田口りかさんは「樹脂の種類が明記していないシートは、一つひとつ調べているので時間がかかってしまう。だんだん目も疲れてきます」と、リスト作成の進捗について話した。

■PTPシート10枚が“1円玉相当”のアルミに変身

千葉県船橋市にある「オリックス環境 船橋工場」も、PTPシートの再資源化に取り組んでいる企業のひとつだ。こちらの工場では、PTPシートを「アルミ」と「プラスチック」に分離。今年5月、全国で初めて、PTPシートリサイクルの事業化に成功した。
実際に分離作業を行っている様子を見せてもらった。天井の高さほどある巨大機械の投入口に、分離前のPTPシートを投入。数分後、プラスチックとアルミの分離が完了し、アルミは粉末となって仕分けられる。
アルミの粉は、各錠剤シートの色が残っているため様々な色が混ざっているのが特徴だ。ほとんどがプラスチック9割・アルミ1割の割合で分離するため、PTPシート約10枚から、プラスチックが約9g、アルミが約1gを取り出せる計算となる。この「アルミ約1g」は、身近なもので例えると、“1円玉分”のアルミ量に相当する。
オリックス環境 船橋工場の主任・逢坂弦さんは、「薬剤シートのメーカーさんから、“うちのシートもやれますか?”というお問い合わせが本当に増えている」と製薬業界からの関心の高まりを実感している。
現在、こちらの工場では、製薬メーカーなどから依頼される決まったシートの分離のみを実施。家庭ゴミから出るような様々なシートの分離は行っていないので、ご注意を。

■使用済みのPTPシートで“薬の飲み忘れ”もチェック

再資源化研究を目的に行われている、使用済みPTPシートの回収。回収を行う薬剤師にとっては、患者さんとの関わり方に繋がる“別のメリット”も生まれていた。それは、患者さんの服用の様子をチェックできること。「浅井薬局」の薬剤師・浅井治行さんは、「(患者さんの)使用済みのPTPシートを見ることで、患者さんがお薬を家でどのように飲んだのかを知ることができる。もしうまく飲めていないなら、それを改善する方法を考えて、提案することもできる」と、服薬指導にも繋がった回収のメリットを述べた。

循環型社会に向けた取り組みが重要視される時代だが、“捨てない社会”を実現することは非常に難しい。しかし、限られた資源を再利用し、モノを生かし続ける方法を考えることはできる。すべてを生かすことはできなくとも、少しでも次に生かすことに成功できたなら、循環型経済の広がりを後押しする“大きな一手”になるかもしれない。

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