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その「声かけ」が命を救う 大雨災害時の避難率向上のためにできることは?【テレビ派・長島カイセツ】

2024年7月10日 18:56
その「声かけ」が命を救う 大雨災害時の避難率向上のためにできることは?【テレビ派・長島カイセツ】

広島テレビの長島清隆解説委員が、注目のニュースを分かりやすく分析・説明する「長島カイセツ」です。今回は、大雨の備えについてお伝えします。

西日本豪雨では、土砂崩れなどが発生して避難しようと思ったときには、逃げられる状況ではなかったという事態が各地で発生しました。この西日本豪雨を教訓に、どのタイミングで避難すべきかわかりやすくするために、国は「大雨警戒レベル」を定めました。

大雨警戒レベルは、5段階で分かれています。レベル4の『避難指示』になると避難しなければなりません。レベル5の『緊急安全確保』の段階で、災害が発生していてもおかしくない状況のため、この段階での避難は手遅れとなります。そのため、レベル4の『避難指示』が、避難できる最後のチャンスという位置付けとなります。

しかし、避難しない人も多いという課題もあります。7月1日に広島県内に降った大雨で、広島市など11の市や町で『避難指示』が発令されました。最大で34万人余りが対象でしたが、避難所に避難した人は、198人でした。

西日本豪雨から3年後の2021年8月の大雨では、広島市西区田方などで土砂災害が発生し、民家が半壊するなどの被害を受けました。この時、大雨警戒レベル5の『緊急安全確保』が広島市など4つの市町に、レベル4の『避難指示』が県内すべての市町に発令されました。この大雨のあとに広島県は、土砂災害警戒区域・特別警戒区域に住んでいる男女5000人を対象に、アンケートを実施しました。

この雨による影響で、広く避難が求められる状況でしたが、県が実施したアンケートによると、この時の避難率は、5.7%に過ぎなかったということです。

この時避難した5.7%の住民のおよそ半数は、親族宅に避難していました。続いて、市や町の 避難所に避難した住民が17.8%、ホテルなどに避難した住民が16.1%でした。「避難」と聞いて「避難所」を思い浮かべますが、実際には、親族宅や友人宅に避難することも有効で、事前にどこに避難するのかを決めておくことが大切です。

注目したいのは「声かけの有無」です。『避難指示』が発令された際に「一緒に避難しよう」「避難して」と、家族から声をかけられた27.9%の人が、実際に避難をしています。しかし、家族からの声かけがなかったが、自主的に避難した人は3.8%でした。同様に、別居の親族から声をかけられた場合と声かけがなかった場合や、近所の人からの声かけがあった場合と声かけがなかった場合も、声かけがあった方が避難の動機になります。警戒レベル4あるいは、レベル3の『高齢者等避難』が出た場合には、自分が避難するのはもちろん、親や子どもなどに声かけをするのが、避難率の上昇に効果があるということです。

一方、県立広島大学大学院が西日本豪雨の後に毎年行っている調査によると、『避難の指示が出たら避難すると思うか?』という質問に対して、西日本豪雨直後は、56.8%が『避難する』と 答えました。それでも、決して十分な数字ではありません。しかし、2023年と2024年の調査では、4割余りが『避難指示が出たら避難する』と答えており、災害の風化が見られます。

さらに『自分がいつか災害に遭うのではないかと不安を感じる』と答えた人の割合を、年代別で見ると『非常に思う』と感じる20代は23%ですが、年代が上がるにつれて、その割合が少なくなっています。その理由として、人生経験が長いほど「今まで大丈夫だったから」「この場所は今まで災害にあったことがないから」との認識が多いのではと考えられます。

アンケートを実施した県立広島大学大学院の江戸克栄研究室は「高齢者が1人で誤った判断をしないように、家族や近隣住民の声かけなどが大切」と指摘しています。いざという時には、自分の安全を優先に確保し、次に家族や近所の人への声かけをすることで、避難のきっかけになります。その一言が命を救うことに繋がりますので、ぜひ声をかけてあげてください。

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