「優花はどうしたら…」手紙に認められた後悔…でも取り返しはつなない 北海道事件簿2024
2024年も北海道で多くの事件・事故が起こりました。
特に道民を驚かせたのは「旭川の女子高校生殺人事件」や「江別の大学生暴行死事件」です。
いずれも「若者の集団での犯行」でした。
事件の周辺を歩くと、罪を犯した若者の人となり、そして特有の事情が浮かんできました。
勾留されている施設での生活がきれいな文字で綴られた4枚の手紙。
(小西優花被告の手紙)「最近勉強していて英語に興味が出てきたんです。例えばバスを英語にすると、basではなくbusという感じで「a」ではなく「u」だったり。いつか英語で会話できるようになれたらいいなと思いました」
その内容と几帳面な文字から、この手紙の主があの凶悪犯罪に関わったとは思えません。
内田梨瑚被告とともに女子高校生を殺害した小西優花被告。
(小西優花被告の手紙)「事件のあった日のことを思い出したりすると、本当に取り返しのつかないことをしてしまって。リコさんのことを止めれていれば、このようなことにならなかったはず」
(北本アナウンサー)「旭川市の中心部から車で30分ほど、こちらの神居大橋で女子高校生は11メートル下の石狩川に転落させられたものとみられています」
まだ春浅い旭川の4月。
17歳の女子高校生が殺害されたという事件。
殺人などの罪で起訴されたのは、内田梨瑚被告(22)と当時19歳だった小西優花被告。
「落ちろ」「死ねや」
17歳の女子高校生に暴行を加えたうえ、神居大橋の欄干に座らせ川に落とし殺害という耳を疑うような犯行。
発端は、被害に遭った女子高校生が、内田被告がラーメンを食べている写真をSNSに無断で掲載したという一見ささいなきっかけ。
(小西優花被告の手紙)「リコさんと私は結果、亡くならせてしまったんです。償っても償いきれないほどの重い罪を犯してしまって、優花はどうしたらいいのでしょう」
この事件では、ほかにも16歳の少年と少女が逮捕されました。
まさに「集団」で行われた犯行です。
(鈴木陸被告)「大きく勝負して借金をリセットしたかった」
札幌市豊平区の住宅で10月に起きた強盗事件で、実行役として逮捕・起訴されたのは鈴木陸被告。
その年齢は25歳。
全国で相次いだいわゆる「闇バイト」が、ついに北海道でもー。
(鈴木陸被告)「秘匿性の高いアプリで指示役と連絡を取り合い、今回の闇バイトをすることになった」
未来ある若者が、なぜ簡単に凶悪な犯罪に加担するのかー
わたしたちは実際に、いくつかの高額案件の「闇バイト募集」に電話してみました。
(トラを名乗る男)「簡単にいったらターゲットは80歳以上の年寄りのおばあちゃんです。俺が言う通りに動いてもらったら100%安全です。北海道なら札幌市内と旭川は仕事行けます」
(チヒロを名乗る男)「これ最近とったんですけど、うちの案件で。1月からマレーシアの案件があって、1か月いたら500万円くらい持って帰れるかな。ゴリゴリに詐欺なんですけど、国外でやってるから大丈夫」
およそ凶悪犯罪に誘うとは思えない軽い口調。
こちらの正体を明かしてみてもー
(記者)「実は札幌テレビ放送の記者で、正直な心境をお聞きしてもいいですか?」
(チヒロを名乗る男)「いいっすよ全然」
(記者)「どんな(特徴の)犯人が捕まった?」
(チヒロを名乗る男)「やっぱりお金に詰まっちゃって、若い子が多い。特徴は世間一般の人たちが思い浮かべる人間像とほぼ一致するんじゃないかな。柄が悪くて不良みたいな、普通の会社じゃ仕事できない子が多い」
(記者)「詐欺のほうも捕まるリスクはあるんですかね?」
取材と明かしてからわずか5分。
質問の途中で電話は一方的に切られ、その後、連絡もできなくなりました。
お互いを知らずに集まり凶悪犯罪を犯す若者。
闇バイトはSNS社会を象徴する「顔の見えない集団」の犯罪だと、犯罪心理学の第一人者も指摘します。
(東京未来大学 出口保行教授)「お金に目がくらんで犯罪者化してしまう。こうなると先を読む力がほとんどない状態で、経験値もない中で大きな事件に関わってしまうようなことが起きている。最近の青少年による非行犯罪の大きな特徴」
深夜。住宅街の防犯カメラに映った若い男女。
千歳市の大学生・長谷知哉さんと交際相手の八木原亜麻被告。
この直後、長谷さんはー
(渡辺カメラマン)「公園内では鑑識による現場検証が行われています」
秋も深まる10月。
江別市の公園で発見された長谷さんの変わり果てた姿。
遺体の状況から、複数から暴行を加えられ死に至ったと判明。
この事件で逮捕・起訴されたのは、長谷さんの交際相手・八木原亜麻被告(20)と、八木原被告の友人・川村葉音被告(20)。
周辺からはふたりの人物像について…
(八木原被告の知人)「あまり周りから好かれる子じゃなかったのかな。人の気持ちを考えられない子っていうんですかね」
(2人の知人)「川村さんはイラついていたら、すぐ物に当たったりとか、暴力的に結構言っちゃったりする。いろんな男性とお付き合いしていたりして、八木原さんは元彼の人と金銭トラブルとかがあったりしたので、そういう面では男関係では2人ともいろいろあったかなって」
この事件には、さらに少年4人が関わっていたことも判明。
今回新たに、その中のひとり・16歳の少年を知る男性にも話を聞くことができました。
(記者)「喧嘩などするタイプか?」
(少年(16)の知人)「ヤキっていう現場があるんですけど、暴力をふるう。その現場にはよくいましたね」
(記者)「暴力を止めるタイプではなかった?」
(少年(16)の知人)「絶対ないっすね。殺人のところにいてもおかしくはないんじゃないですかね」
長谷さんと八木原被告の“交際関係のもつれ”から発展したこの事件。
(八木原被告)「直接は加担していないが、ほかの容疑者が暴行する様子を笑ったり、あおったりした」
(川村被告)「自分も暴行をしている」
さらに6人は、長谷さんの現金やカードなども奪っていました。
八木原被告と川村被告が起訴された罪名は「強盗致死」。
法定刑では「死刑」または「無期懲役」です。
北海道で2024年に起こった「若者」による凶悪犯罪。
沸き起こる「なぜ」に、専門家は特有の心理を指摘します。
(東京未来大学 出口保行教授)「集団心理は青少年の場合に強く働くものです。集団の中で、自分が見くびられたくないという思いも発生する。自分はここまでやっているんだということを、周囲に知らしめていく。だからやりすぎてしまう。もう1つは、集団でよく起こることは、ここで攻撃の手を緩めると攻撃の矛先が自分に向かってくるという恐怖が必ずある」
「集団心理」で片づけるにはその結果はあまりにも重大です。
旭川・女子高校生殺人事件の小西優花被告がしたためた手紙。
「当時に戻れるなら、私の命にかえてでも被害者の子を助けてあげたい」
しかし、「当時」には戻れないのです。