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分娩休止の病院も…新しい命を安心して迎えたい 地方の出産事情《新潟》

2023年9月24日 10:44
分娩休止の病院も…新しい命を安心して迎えたい 地方の出産事情《新潟》

新潟県内では、医師不足や医師の高齢化により、お産ができない地域もあります。
安心して出産をするため求められていることとは?県内の出産事情を取材しました。


元気に産まれてきてくれて、ありがとう。

《母親》
「可愛いですね。
 だんだん可愛くなってきますね、日に日に…」


十日町市にある「たかき医院」。

地元・十日町市のほか
南魚沼市、津南町、湯沢町などからも利用者が訪れる人気の“産院”です。


たかき医院で、お産を担当する仲栄美子医師。

少子化の影響で、この10年で分娩の数は半分以下に減りましたが、
仲医師は、日中の診療に加え、夜間の出産も受けもっています。

《仲栄美子 副院長》
「赤ちゃんが生まれる人数は少なくなっています。
 でも産婦人科の先生はいらない、というわけにもいかないです。
 限られた医者の人数をどう有効に使って
 この地域を守っていくか、私はそっちの方が心配です」

十日町・津南地域で出産できる病院は
「県立十日町病院」と民間の「たかき医院」の2か所。

しかし8月、新潟県は来年度から十日町病院での分娩を休止すると発表しました。

来年4月から始まる“医師の働き方改革”を行う上で
今の体制では業務の継続が難しいというのです。


去年1年間の分娩数を見ると
たかき医院は200件、一方、十日町病院は92件。

こうした実績も判断材料になったといいます。

《十日町市に住むたかき医院来院者》
「たかき医院がパンクしないかなとか、色々考えちゃいます」

《十日町市に住むたかき医院来院者》
「冬は雪がすごかったりするので
 私はたまたま夏だから問題ないですけど」

《南魚沼市に住むたかき医院来院者》
「1人目とか経験ない方は特に、近い方が安心はできますよね」


十日町病院の分娩休止に伴い、
たかき医院では今後、お産が増えることが予想されますが、
手放しでは喜べない事情も。

《仲 副院長》
「夜間の出産は全部私が一人でやっていますので、
 人数が増えた時には眠れないまま朝を迎えて、
 また次の日の仕事が始まってきたりしてしまいますので」

たかき医院では、
40代の仲医師と79歳の母・高木成子院長の2人で
内科や小児科そして産婦人科をカバー。

月に2回、サポートに入る非常勤の医師も80歳と高齢です。

《母・高木院長》
「産科って夜昼ないじゃないですか、
 なので、やり手がないのかなって」

《娘・仲副院長》
「"ここに医者が必要だから自分はここで仕事したい" みたいな、
 Drコトーみたいな先生がいれば別なのかと思うんですけど」


たかき医院では現在、県や新潟大学に
医師や看護師のサポートを依頼しています。

それでも医師などが増えた際の人件費に加え
電気代や物資の高騰など経営していく上での課題は
少なくないといいます。

《仲副院長》
「継続可能な、せっかく県や大学から
 ここでお産をするというのを託されたので、
 安全と安心の中でお産ができるように、
 病院の中の態勢も確認して
 来年の4月を迎えられたらいいと思っています」

お産をめぐる課題は糸魚川市でも。

9月に開かれた赤ちゃんの“沐浴教室”に糸魚川市で暮らす夫婦が参加しました。

新たな命を迎えるため地域で行う準備。

しかし糸魚川市では今、肝心の出産ができません。

これまで市内で唯一お産を受け入れていた糸魚川総合病院が
今年4月から分娩を休止。

退職する医師の後任が見つからず、苦渋の決断でした。

《"沐浴教室”の参加者》
―お産はどこでする予定?
「上越です。糸魚川に産める場所があったら
 糸魚川だったかもしれないです」

今、糸魚川市でのお産を希望する人は
上越市や隣りの富山県で出産するといいます。

しかし、産院のある上越市や
富山県の黒部市までは、いずれも車で1時間程度。

糸魚川市は、病院へ行くための交通費や
宿泊費などを助成するサポート体制を整えています。

《上越市で出産予定の夫婦》
夫「すぐ動けるように色々準備しておこうと思いました」
妻「妊婦さんは皆、不安だと思うので、いずれ再開して欲しいです」


糸魚川市は、地元出身の医師をはじめ
県や大学などに声をかけ、産科医の確保を目指してきました。

《糸魚川市 米田徹市長》
「子どもを産めないという話になったら困るわけですし、
 出産や妊娠を違う所でということになったら…。
 地方は人口減少が加速するので、
 本当に日々365日、産科の医師がいませんかという感覚でいます」


9月21日、糸魚川総合病院は、今年11月から
産婦人科の常勤医師1人を新たに採用すると発表。

着任するのは県外の病院で働く60代の医師です。

《糸魚川総合病院 山岸文範 病院長》
「糸魚川の妊婦さんたちの間に随分不安感があったので
 その解消という点で、
 病院を運営している身としては非常にうれしい話です」

着任する11月から妊婦検診を再開し
遅くとも来年4月には分娩の再開を予定しています。

昨年度は常勤医師2人態勢で120件ほどの出産を受け入れていました。
今後はほぼ1人態勢となることから年間60件ほどを想定しています。

山岸病院長は、新たに着任する産科医が出産を受け持っている間に、
医師をいかに確保し安定的に病院を運営するかなど
地域医療の再編を検討していくとしています。

《糸魚川総合病院 山岸文範 病院長》
「今回のこの先生がここで分娩を取り上げて頂いている期間は、
 ひとつの準備をする時間を頂いたと思っています」


十日町市で産院を運営する仲栄美子医師。

出産や子育ての環境を整えることが
人口減少に歯止めをかけ
地域の存続に直結すると訴えます。

《仲 副院長》
「出産できる病院がないと若い人はそこに住まなくなるのではないかと。
 若い人がここに住んで暮らしていきたいという場所であり続けるために。
 この病院を守って、出産する場所を守っていきたい」

新たな命を安心して迎える。
地域医療の未来をどう守るのか、待ったなしの対応策が求められています。

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