【酪農大家族30年①】四男・雄志さん 山地酪農牛乳社長に これまでの歩み 岩手県田野畑村
プラス1ではこれまで岩手県田野畑村の酪農大家族の話題を度々お伝えしてきました。
吉塚公雄さん一家をテレビ岩手が取材して今年で30年になりました。
プラス1ではきょうから5回シリーズで吉塚さん一家の30年の歩みをお伝えします。
1回目のきょうは山地酪農牛乳の社長となった四男の雄志さんの30年です。
遠藤記者が取材しました。
(1994年 怒る吉塚さん)
「なんだバカだな、公太。なに考えてんだ。ありゃ、なんだよ公太。公太なに?なんで成牛持ってくるんだ」
私たちが田野畑村の吉塚農場を初めて訪ねたのは1994年。
子どもたちを怒鳴る吉塚さんを目の当たりにして恐ろしい所に来てしまったと思いました。
登志子さん
「お父さん後搾りしない?」
この時、妻登志子さんのお腹には新しい命が宿っていました。
登志子さん
「照れてるよ」
初めて伺ってから3か月後。
吉塚家6番目の子ども、雄志くんが生まれました。
登志子さんはこれまでに何度も流産を重ねていました。
登志子さん
「ホントね 生まれる直前までどうなるかわからないようですからね」本当に出てきてあー良かったと思って。よく五体満足で出てくれたなって思いますね」
ちなみに雄志くんが生まれた1994年は大リーグの大谷翔平選手、アイススケートの羽生結弦選手が生まれた年です。
吉塚さんは1977年からプレハブ住宅に住み続けていました。
開拓に入って10年間はランプ生活でした。
その頃のことを忘れないようにと年に一度はランプの下で食事をしました。
「クリスマスみたい懐かしいね。なんか特別な日みたい。真っ暗なところからきて、こういう部屋に入ったら明るく感じるんだよ。目をつぶって見ればいいんだよ」
食事のごあいさつ
「雄志ダメだ危ない。おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう。お父さん、お母さん、ありがとう。都ちゃん、公太郎くん、恭次くん、令子ちゃん、純平くん、雄志くん、牛さん、ありがとういただきます。どうぞ召し上がれ。ガーが ガーが」
このとき、「ガーが ガーが」と言っていたのが雄志くんです。
末っ子の雄志くんはみんなに可愛がられてすくすく育ちました。
保育所に通うようになると、雄志くんはお兄さん、お姉さんに混じって、自分より重い草の束を運ぶようになりました。
登志子さん
「いいよー」
でもお母さんっこの雄志くんは登志子さんの膝の上が一番大好きでした。
吉塚農場では夏も冬も牛を山に放ち、大地の草で牛を飼う山地酪農を実践していました。
牛乳は安全でおいしいのですが、量は一般の酪農家の3分の一以下。
年収100万円という厳しい状況が続きました。
吉塚さんの出身地千葉から両親がやってきました。
住むのに危険が生じていた家を建て替えてくれたのです。
「ここは誰が寝ているの、ここは令子ちゃんと都だ」
雄志さんからプレゼント
「おじいちゃん、誕生日おめでとう。ありがとう。どうもありがとうね」
(雄志さんの手紙)
「まえうちより 前のうちのことよ。まえうちよりおじいちゃんとおばあちゃんの家があったかいし、すごくきれいな家をありがとう。前の家だっておじいちゃんが建てた。わっはっはっはっは。どうもありがとう。ネコくれたんだよ」
37歳で雄志くんを生んだ吉塚登志子さん。
雄志くんが中学校に上がるころには更年期障害に苦しめられていました。
雄志くんはお母さんに代わって皆の食事を作っていました。
(雄志さん)
「Q,お母さん喜んでくれている?」「はい 結構、助かるって言ってくれています」「Q,そういわれると、うれしい?」「はい うれしいです。雄志くん台所に立つのは好き?」「はい 結構、楽しいです」「Q、どういうところが?」「料理を覚えたりとか、お母さんと同じようなことができるようになったりするとうれしいし。おいしいとかそういう言葉がうれしい。それから好きになりました」
お母さんの手助けをした経験が大人になって大いに役立つことになります。
2018年、雄志さんはすっかり大人になっていました。
北海道の農場でチーズ作りを学び田野畑に帰って、山地酪農牛乳を使ったヨーグルトやチーズ作りに挑戦。
自らの牛乳で製品を作ることはお父さんの長年の夢でした。
完全放牧の牛乳で作ったチーズは高い評価を受けました。
雄志さんが作った「白仙」は2020年の「ジャパンチーズアワード」のソフト部門で最高賞を受賞。
そして、おととし、お父さんから引き継いで山地酪農牛乳株式会社の社長に就任しました。
(雄志さん)
「山地酪農というのをどういう風に広めていけるのか目標としてやっていますので、この白仙とかでもっとたくさんの人に食べてもらって知ってもらえたらと思っています」
去年7月、雄志さんは晴れの日を迎えました。
青森県出身の中野希望さんと結婚したのです。
幼いころから、かわいくて仕方がなかった雄志さんの結婚に母・登志子さんの喜びもひとしおです。
チーズなどの乳製品作りをしながら社長業にも励む二刀流の雄志さん。
妻の希望さんも牛乳の発送や配達に忙しい毎日です。
山地酪農の素晴らしさ、それに牛乳やチーズのおいしさを若い夫婦が全国に発信しています。
(希望さん)
「住んでいたところと比べると不便なところはあるんですけど、それもそれで、ここのいい所何より雄志くんがいてくれるのでいいかなと思います」
「Q、雄志くん、どうですか?」「恥ずかしいです」