【速報】両親が涙「ごめんねとしか言いようがない」“放課後デイ”中学生死亡で執行猶予つき有罪判決 「危機意識に欠け過失重大」も執行猶予判決 大阪地裁
大阪府吹田市の放課後等デイサービス施設で、送迎の際に安全管理を怠り利用者の中学生を死亡させた罪などに問われている職員の男について、大阪地裁は懲役1年10か月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。
判決の理由について、大阪地裁は「危機意識に欠け、過失は重大」とする一方、「保険により一定の賠償が見受けられるほか、事件後に施設が閉鎖し失職するなど社会的制裁を受けている」としました。
判決後に会見した中学生の両親は、「(被告は)自分たちが悪いことに何も向き合うことなく、謝罪することもなかった。執行猶予ではなく、実刑が出てほしかった。息子に社会のつながりを感じて、成長してほしいと思って放課後等デイサービスに預けていたのに、ごめんねとしか言いようがない」と涙を流しました。
■両親「施設を信じていた」職員2人で対応と取り決めも…当日は運転手1人
吹田市の放課後等デイサービス施設の職員、宇津雅美被告(66)は、2022年、利用者の清水悠生さん(当時13)を車で送迎する際、不適切な対応で死亡させた罪や別の利用者の中高生らに繰り返し暴行を加えた罪に問われています。
悠生さんは突然走り出すことがあり、職員2人で対応するなどの対策が取り決められていましたが、当日は運転手1人が対応し、行方不明となった悠生さんは、その後、近くの川で遺体で発見されました。
悠生さんの両親によりますと、過去にも衝動的な飛び出しがあったものの、施設側は「トイレで悪ふざけしていた」「手をつないでいたのに悠生さんが手を離した」などと虚偽の説明をしていたことが、警察による捜査で判明したということです。
これまでの裁判で、宇津被告はいずれの起訴内容についても認めていて、検察側は「悠生さんは以前にも送迎の際に飛び出したことがあり、衝動的に行動することを施設は把握しておきながら1人での送迎を常態化させ、最も基本的な注意義務に違反していて過失は重大だ。ずさんな運営であり、非難されるべきだ。遺族の心痛や無念は甚大で被害者の亡くなる直前の身体的苦痛は想像を絶する」と指摘し、懲役1年10か月を求刑していました。
裁判が結審した11月、悠生さんの父親・清水悠路さんは「悠生の命をないがしろにした人物をそのまま放っておくわけにはいかないので、しっかりと罪を償ってくれるような判決が出てくることを期待している状態です」と心境を語っていました。
■執行猶予つき判決に母親が涙で訴え「息子の死を無駄にせず、しっかり考えてほしい」
23日の判決で大阪地裁は、「悠生さんが衝動的行動を取るという特性があることを把握し、過去にも送迎時に同様の飛び出しがあったにもかかわらず、防止するための体制整備をせず危機意識に欠け過失は重大だ。遺族の悲しみと怒りは察するに余りある」と指摘。一方で「真摯な反省は見受けられないが、保険により一定の賠償が見受けられるほか、事件後に施設が閉鎖し失職するなど社会的制裁を受けている」としました。
最後に、中井太朗裁判長は宇津被告に対し「清水さんの命が亡くなったことを重く受け止め、今後も忘れないようにしてください」と話しました。
判決後、大阪市内で会見した悠生さんの母親・亜佳里さんは、「ずっと支援を2人でやっていると信じていた。事故が起きて信じられない気持ちでいっぱいだった。信用して、重大なことが起きていたにもかかわらず、本当に悪質だと思う。一言でいえば非常に残念。自分たちが悪いことに何も向き合うことなく、謝罪することもない。これは執行猶予っではなく、実刑が出てほしかった。息子に社会のつながりを感じて、成長してほしいと思って“放課後デイ”に預けていたのに、『ごめんね』としか言いようがない。本当ならお正月やクリスマスも一緒に過ごせたのに、いないのが辛い」と涙を流し、「息子の死を無駄にせず、しっかり考えてほしい」と訴えました。
父親・悠路さんは「大人が守ってきた、みんなが守っていた命が一瞬にして亡くなった。どうしても執行猶予付きの判決が納得できない。私たちだけではなく、まともにやっている施設にも失礼だと思う」と無念さをにじませました。
施設をめぐっては、代表で宇津被告の兄が、去年2月以降、宇津被告とともに利用者の中高校生らに繰り返し暴行を加えた罪に問われ、大阪地裁に懲役1年2か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡され刑が確定しています。