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【ナゼ】松島新地の“料亭”摘発の裏側…ホストクラブ「売掛金」回収で女性を売春行為に“沈めた”実態

2024年10月20日 10:00
【ナゼ】松島新地の“料亭”摘発の裏側…ホストクラブ「売掛金」回収で女性を売春行為に“沈めた”実態

 大阪市西区の「松島新地」で、男性客に女性従業員を引き合わせ売春行為を斡旋したとして料亭が摘発された事件。この料亭の実質的経営者は、大阪有数の歓楽街・ミナミのホストクラブの経営にも関与していたことが明らかになり、高額のツケ払い「売掛金」を作った女性客らを売春行為に“沈めていた”実態が浮かび上がった。

■親子3代で複数の料亭を経営…売春行為を斡旋か

 大阪メトロ・九条駅にほど近い市街地の一角にある「松島新地」。古くは明治時代から「松島遊郭」として栄え、戦後に遊郭が廃止されたものの、今でも80前後の料亭があるとされている。

 10月14日、夜が更けて料亭の看板や提灯の明かりが灯る中、数十人の大阪府警の捜査員が、5軒の料亭に強制捜査に入った。踏み込んだ部屋で捜査員たちの目に映ったのは、全裸の男女の姿―。

 部屋の中で行われたのは、料亭の女性ホステスと男性客による性行為で、今年4月以降、店内で男性客と女性を引き合わせ、売春を斡旋したとして、料亭「天姫」「千姫」の実質的経営者である奥田千城容疑者(31)や従業員ら男女5人が売春防止法違反の疑いで逮捕された。

 さらに翌日には、奥田容疑者の52歳の母親と76歳の祖母も逮捕された。警察の調べに対し、母親も祖母も「客に女の子をつけて売春営業をしていた」などと容疑を認め、親子3代にわたって売春の斡旋行為に関与していたという。

 大阪府警が家宅捜索を実施したのは20か所以上で、捜査員は130人態勢での大規模なものだったという。なぜ、警察がここまで大掛かりな強制捜査に踏み切ったのか―。

■ホストクラブ経営にも関与 “沼”にはめて「売掛金」返済で料亭に…

 捜査関係者によると、昨年末、匿名の投書が大阪府警に寄せられたという。

「知り合いがミナミのホストクラブで未収(=支払いができていない状態)で、料亭で働かされている」

 料亭に捜査員が踏み込んだ同じ日、大阪府警は大阪・ミナミの中心部・宗右衛門町にあるホストクラブ「SWAМP」にも家宅捜索に入った。

 祖母や母親らとともに松島新地の複数の料亭を経営していた奥田容疑者は、女性客を相手にした、このミナミのホストクラブの経営にも関わっていたというのだ。

 料亭で働く女性は、ホストクラブで代金の支払いが困難になり、未払いとなっている“売掛金”を返済するために、売春させられていたとみられている。

 捜査関係者の一人は、「ホストクラブで女を“沼”にはめて売掛金がたまったら、家族がやっている風俗店で働かせようって考えるのは、自然な流れ」と分析した。

■「むしろよくある話」スカウト通じて地方の風俗へ…売春の実態つかめず

 多額の売掛金を払うために売春行為を強要するのは決して珍しいことではなく、むしろ「よくある話だ」と捜査関係者は指摘する。

 今年3月には、ホストクラブでの売掛金を回収するために、奈良県内の無店舗型の風俗店に女性を紹介したとして、職業安定法違反の疑いでミナミのホストクラブで働いていた男らが逮捕され、6月にも同様に、売掛金回収のために四国・徳島の風俗店を紹介した疑いで、別のホストクラブの男らが逮捕されている。

 こうした売掛金の回収では、風俗店での仕事を紹介・斡旋するスカウトが関与して、女性客は地方の風俗店で働かされるケースが多いため、なかなか売春の実態がつかめないという。今回の事件では、ホストクラブの経営に関与していた奥田容疑者やその親族が松島新地で店舗を経営していたことから、容疑の裏付けを進めて摘発に至ったという。

 警察はホストクラブの経営者を集めて講習会を開いたり、違法営業を行っていないか定期的に店舗に立ち入り調査を行ったりすることで、取り締まりを強化しているが、甘い言葉で“ホストの推し活”に女性客をいざない、その代償として高額なツケを背負わせる売掛金のトラブルは後を絶たない。

 ある捜査幹部はこうした現状に対する危機感を打ち明けた。

「多額の売掛金を作らせて女性を風俗で働かせるのがあたかも“普通”になっている。これは社会として大問題だ」

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