悪質な客はホームページで氏名公表 “制裁付き”カスハラ条例案を市議会に提出 成立すれば全国初 三重・桑名市が対策強化へ
“制裁付き”カスハラ防止条例案を市議会に提出
11月、愛知県長久手市の携帯電話ショップで起きた“カスハラ”。市内に住むペルー国籍の女が「嫌な気持ちになったから土下座しろ」と、女性店員の髪をつかみ土下座を要求した疑いで逮捕されたのです。店員の対応の遅さに因縁をつけたとみられています。
日々起こるカスハラに歯止めをかけようと、自治体による対策が広がっています。今年10月には、東京都が全国で初めてカスハラ防止条例を制定。愛知県や三重県も条例の制定に向けて検討を進めています。
そんな中、三重県桑名市でも12月4日、市議会にカスハラ防止条例案が提出されました。ただ、東京都などの条例とは一味違い、その条文には、カスハラをした人への制裁措置が定められているのです。
市がカスハラを確認すると、その内容を公表した上で行為者に対して警告を行います。それでもカスハラを繰り返した場合、市のホームページなどで氏名を公表するという2段構え。
こうした制裁措置を規定した条例は、成立すれば全国初だということです。
抑止力を強くすることが狙いの桑名市の条例案。市民からは「個人的には賛成かなと思います。お互いに常識的な対応って、それぞれあると思うので」「間に入ってちゃんと市がヒアリングして、良いところ悪いところをジャッジしてくれるんじゃないかと思いますけどね」などの意見があがりました。
事業者からは抑止力として期待する声が。「(実際に)公表までしなくても、そういうのを作ることによって一歩考えてもらえる気がするので、抑止力になるから良いと思いますけどね」と話すのは、和菓子店の店主。
過去に土下座を強要されたことがあるという工務店の社長も「(条例は)ありがたいですね。何かあったときに相談できるのがあれば、非常に心強いかなと思います。(カスハラは)ものすごく心が苦しい感じというか、何のために仕事してきたのかなと」と条例成立に期待を寄せました。
専門家は、制裁付きの条例が働く人の安心につながると評価します。
日本ハラスメント協会 村嵜要代表理事:
「市民にとっては、自分自身もカスハラをしないように気を付けないといけない。働く人にとっても、カスハラから身の安全が保証されるという安心感。今回の踏み込んだ氏名公表の制裁措置はすごくいい取り組みと考えています」
全国初の制裁付きカスハラ防止条例。12月25日に採決され、可決・成立すれば、2025年4月から施行される予定です。
氏名公表までのプロセスは…?
桑名市で議会に提出されたカスハラ防止条例が成立した場合、どのようなプロセスで氏名が公表されるのでしょうか。
カスタマーハラスメントが発生したら、カスハラを受けた会社や従業員が市に相談します。相談を受けた市は、弁護士などで構成される対策委員会に意見を求め、対策委員会が本人に対する聴取などを行い、カスハラに当たるかを判断。カスハラと判断された場合、桑名市が“警告”を行い、同時にホームページなどでカスハラの“概要”を公表するのですが、この時点では氏名は公表されません。
氏名の公表に至るのは、警告を受けた人が再びカスハラを行った場合、市に相談をすると、市は対策委員会に意見を聞くとともに、市が本人に直接話を聞いた上で、氏名など、カスハラをした人が特定できる内容を公表します。
桑名市が制裁を設けたのは抑止力を高めることが目的ですが、罰則を受けなかったカスハラは「やっても良いんだ」という理解が広まってしまうという懸念もあります。
この条例案は今後、議会で審議されていきます。