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【特集】対策進むも「原因分からず…」 “永遠の化学物質”PFAS 国は水質検査の必須項目へ 専門家「基準値見直しや検査義務化の検討を」

2025年1月11日 20:00
【特集】対策進むも「原因分からず…」 “永遠の化学物質”PFAS 国は水質検査の必須項目へ 専門家「基準値見直しや検査義務化の検討を」

■「地下水は安全だと…」団地の水源から目標値に迫るPFAS

愛知県岩倉市で10年ほど暮らす加藤和代さん(77)。思わぬ知らせを受けました。
「PFASは新聞なんかに載ってた。ちょっとショックですよ。地下水って安全だと思ってたから。」

化学物質である「PFAS」(ピーファス)。体内に入ると発がん性など健康への影響が疑われています。
加藤さんの家にも水を供給する「岩倉団地水源」で、国の目標値に迫る数値が検出されたのです。目標値を超えていないものの、国のまとめでは、今年度全国で最も高い値でした。
生活のあらゆる場面で必要な水。加藤さんも、「沸かせばなんとかなるものでもない。全部生活を変えないと」話します。

団地の住人たちも、「団地の水を安心だと聞いていた。どうしてこうなったの、今度どうなるのっていうのがすごく不安です。」「お嫁さんとか子どもになると、ちょっと引っかかりますよね、心配だなって。」と不安を口にしました。

■全国でPFAS検出 東海地方でも“目標値超え”が…

2024年11月に公表された、全国の水道事業者のPFASについての調査。環境省と国交省が、2020年以降5年のPFAS調査の有無と、数値を調べました。
環境省は、「毎日2リットル水を飲んでも健康に影響がない」値として、2020年に水道水の“暫定目標値”を、PFASの中でも代表的な「PFOS」「PFOA」の合計で1リットルあたり50ナノグラムとしています。

2021年度、目標値の11倍という高い数値が検出されたのが岐阜県各務原市。しかし市が公表したのは2023年7月でした。不安に感じ、血液検査を受ける住民もいます。

目標値を超えた場所では水源の切り替えなどの対応によって数値が下がったケースもあるということですが、各務原市が取った対策は水源に浄化装置を設置することでした。結果、数値は改善されていて、将来的にはPFASを処理する施設をつくる計画です。

市内には航空自衛隊岐阜基地があり、2024年、基地内の井戸でも1リットルあたり70ナノグラムを超えるPFASが検出されました。岐阜基地は隊員に対し、浄水器を取り付けていない水道水を飲まないよう周知しているといいます。

■“永遠の化学物質”PFAS

「PFAS」は人工的に作られた有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上あるとされます。

中でも「PFOS」や「PFOA」は幅広い用途に使われ、かつては焦げ付かない調理器具や、防水加工の衣服など撥水・撥油加工製品、航空機火災などで使われる泡消火剤に使用されていました。

自然界でほとんど分解されず、“永遠の化学物質”とも呼ばれます。発がん性や、発育遅延など健康への影響が指摘されることから、2009年以降、国際的に規制が進み、現在では日本を含め多くの国で製造・輸入が禁止されています。

■「原因分からない」団地で高い数値 愛知県岩倉市

愛知県岩倉市に住む加藤さん(77)は、血液検査をしたところ、PFASの血中濃度が60.1ナノグラム(1ミリリットルあたり)でした。日本では指針が定められていませんが、アメリカの学術機関が健康へのリスクが上がるとしている値は20ナノグラム。加藤さんはこの3倍です。「ピンとこなかった。説明を聞いて、なにこれ高いじゃんと思って。」

加藤さんは、自宅に浄水器を設置することにしました。個人でできる対策には限界があります。

岩倉市は、2025年4月から水源の水を県営水道の水と混ぜ、希釈することでPFAS濃度を薄める対策をする予定です。
しかし、原因について担当者は「分からない」と言います。

京都大学の原田浩二准教授は上流を含めて調査が必要としながら、地下水という性質上、原因を突き止めるのが難しいと話します。
「地下水がどこから流れてきているのか、そのこと自体がまず調べる上で必要ですが、なかなか難しい、はっきり分からない。住民にとっては毎日使う水なので、まずは(PFAS)濃度をしっかり下げていくということが重要」と言います。

■国は“規制強化” 病院でPFAS検診もスタート

原田准教授は、「海外では日本より規制が厳しい国もあり、対応を考えていく必要がある、確実に状況を把握するために、検査を義務化することも重要」と指摘します。

政府は、早ければ2026年度から、「PFAS」を「水質基準項目」とする方針を固め、水質検査の必須項目になります。

一方、全国調査では、水道事業者の約4割が費用面などからPFASの調査をしていませんでした。対策や規制強化の一方、これまで“PFAS汚染水”を飲み続けた人体への影響はどうなのか?長期的な影響の詳細は分かっていません。

一連の“PFAS問題”をうけて、名古屋市の北医療生活協同組合 北病院では、2025年から血液のPFASを調べる「PFAS検診」を始めるため、準備を進めています。担当者は、「不安に感じる住民も多いのでは。甲状腺やコレステロール値の異常もあれば、定期的に検査が必要だと思う。」と話します。

最終更新日:2025年1月11日 20:00
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