名鉄百貨店一宮店が閉店 愛知県内の百貨店は名古屋市に集中 地方は閉店ラッシュでも都心は過去最高売上を記録
愛知県一宮市にある名鉄百貨店が、23年の歴史に幕を下ろしました。これにより愛知県内で百貨店があるのは名古屋市だけになります。 売り上げの減少や建物の老朽化などもあり、愛知県内の百貨店は閉店が相次いでいます。
23年の歴史に幕 名鉄百貨店一宮店が1月末で閉店 閉店を惜しむ声も…
1月31日、最後の営業日を迎えた愛知県一宮市にある名鉄百貨店。店内では、いつものように開店準備が進められていました。
開業当時から働く名鉄百貨店のスタッフ:
「23年間勤めさせていただいたので寂しい。いつもと変わらずに笑顔の接客で最後を送りたいと思います」
店の外には開店を待ちわびる多くのお客さんの姿がありました。入口の扉を開き、いつものように笑顔で迎えるスタッフたち。この百貨店によく訪れたというお客さんからは「あ~、残念です。残念です」「今まで駅に来て利用させていただいていたので、すごく寂しい」など、閉店を惜しむ声も聞かれました。
一宮の名鉄百貨店の始まりは1969年。名鉄丸栄百貨店としてスタートし、その後2000年に現在の場所に移転。ピーク時の売上高は112億円と過去最高となったものの、その後、リーマンショックや大型ショッピングセンターの登場などの影響で徐々に低迷。2022年度はピーク時の半分ほどの売上高となりました。
一宮に百貨店が誕生してから約50年。時代が変化する中でもカメラ店を営んできた男性がいます。森口達喜(もりぐち・たつき)さん、81歳。
多くの人が足を運んでいたという森口さんのカメラ店。閉店の前日には、20年ほど通う常連客が写真を受け取りにやってきました。長年、森口さんに現像を頼んでいたため、楽しみが一つなくなって寂しいといいます。また、これまでの感謝の気持ちを込めて、花束をプレゼントするお客さんもいました。
百貨店でカメラ店経営 森口達喜さん:
「(寂しさは)明日にならないとわからないな。明日になると涙が出るかも」
最後の日、森口さんは片付け作業を行っていました。この百貨店で過ごしてきた時間を思い返すように、黙々と荷物をまとめていると、最後だからとお客さんが挨拶をしにやって来ました。お店でこうしてお客さんと会えるのも、これで最後です。
百貨店でカメラ店経営 森口達喜さん:
「若い人は百貨店に来ないでしょ。時代ですよ、時代」
こうして名鉄百貨店一宮店は、31日午後6時半に閉店しました。
二極化が進む百貨店 地方は閉店ラッシュ 都心は過去最高の売上を記録
今、百貨店が都心と地方で二極化しています。
愛知県では、松坂屋豊田店が2021年に閉店したほか、西武岡崎店、ほの国百貨店といった地方にある百貨店が相次いで閉店しています。そして、1月31日に名鉄百貨店一宮店が閉店したことで、愛知県にある百貨店は、名古屋市だけになってしまいました。
一方で、都心にあるジェイアール名古屋タカシマヤは、昨年12月に開業以来、過去最高の単月売り上げを記録。
百貨店の二極化が進むのは、一体なぜなのでしょうか。
名鉄百貨店一宮店は、建物の老朽化ということもありますが、競合の大型商業施設やインターネット通販が台頭したことを閉店の理由として挙げています。一方で、ジェイアール名古屋タカシマヤが最高売り上げを記録した理由のひとつは、名古屋駅直結という立地もあり、新型コロナが5類に移行したことでインバウンド消費が拡大したことが挙げられます。
また、百貨店へのニーズの変化もあるようです。去年12月、全国の百貨店で売り上げを最も伸ばした商品は「食料品」。そして、10%近く差をつけて2番目が「衣料品」となっていますが、実は数年前までこの1位と2位は逆だったのです。大型衣料品店やショッピングセンターが増えたことや、インターネット通販の普及などが逆転した理由だと考えられます。
消費者が百貨店で求めるものに変化が生じてきているのかもしれません。