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【特別取材】政界のゴッドファーザーを“天ぷら”でおもてなし!岐阜出身・公邸料理人が取り入れた岐阜産の食材とは?

2023年12月15日 16:04
【特別取材】政界のゴッドファーザーを“天ぷら”でおもてなし!岐阜出身・公邸料理人が取り入れた岐阜産の食材とは?

日本の外交を料理で支える重要な役割から、“味の外交官”とも呼ばれる「公邸料理人」。日本大使館で公邸料理人として腕をふるう、岐阜出身の料理人・高見直樹さんと妻・愛子さんに密着。今回、直樹さんが挑むのは、政界の“ゴッドファーザー”をもてなす“天ぷら”料理の考案。外交を成功へと導く重要な会食の要として、夫婦が用意したのは二人の故郷・岐阜県の食材だった。

大使館の“天ぷらバー”で大物政治家をおもてなし

オーストラリアの日本大使館で、“公邸料理人”として腕をふるう料理人・高見直樹さん。元々は岐阜で小さな料理店を営んでいたが、料理人として次のステージを目指すべく“公邸料理人”への応募を決意。妻・愛子さんと共にオーストラリアに渡り、大使館を訪れる各国の要人や外交官などVIPたちに日本食をふるまっている。

今回、中京テレビ「キャッチ!」では大使館から特別な許可を得て、そんな高見さん夫婦の仕事風景に密着。VIPをもてなす料理の考案過程から大使館のなかで発見した“驚きの場所”まで、特別に取材させてもらった。

今回、直樹さんが料理でおもてなしをすることになったのは、オーストラリアの貿易・観光大臣を務めるドン・ファレルさん。今年10月、西村経済産業大臣がオーストラリアを訪問した際、両国の関係強化などについて話し合いをした人物で、オーストラリアの“ゴットファーザー”と呼ばれている大物政治家だ。

会食の舞台は、大使館内でも超VIPしか入ることが許されない秘密のレストラン。座席は4つ、カウンター越しに揚げたての天ぷらが味わえる空間で、通称“天ぷらバー”と呼ばれる食事処だ。

鈴木量博駐オーストラリア日本国特命全権大使曰く、「ごく少人数で、限られた方々と密度の高い話し合いができる」という場所。重要な意見交換の場でもあり、“味の外交官”の公邸料理人の力量が強く求められる場でもある。

日頃から、直樹さんのことを“アイアンシェフ(料理の鉄人)”と称し、直樹さんの料理の腕前に大きな信頼をおいている鈴木大使。大物政治家をおもてなしする料理として、鈴木大使が直樹さんに依頼した料理は“天ぷら”。直樹さんは様々な方法で、“天ぷら”を主役とした料理をつくりあげていった。

日本ならではの食材は“MY畑”で調達!

前菜では、キャンベラ産のトリュフを使用した「トリュフの出汁巻」、「鴨ロースト」、桜の若葉でほんのり香り付けした「鯛の桜葉〆 手まり寿し」を準備。華やかな見た目に心躍る、“はじまり”にふさわしいラインアップだ。メインの天ぷらは8品。なかには、タイを扇状に切り、サンショウを乗せて包んで揚げた「鯛の山椒若葉包み天」など、趣向を凝らした天ぷらも。

ここで気になるのが、サンショウの入手ルート。日本ならではの食材・サンショウをどのように手に入れたのだろうか?その答えは、大使館のなかにあった。

「今日の天ぷらの隠し味。こんな大きなサンショウ、日本じゃあまりないから」と話しながら、大使館内を歩く妻・愛子さん。到着した先にあったのが、青々とした葉が茂るサンショウの木。その周りには小さな畑が広がっていた。畑で育てていたのは、はじかみ(ショウガ)、ナスタチウム、コリアンダー、梅、笹などオーストラリアでは手に入りにくい日本ならではの食材。実はこの畑は、オーストラリアに赴任した際、直樹さん自らが作ったもの。必要な食材は自身で育て、季節にあったあしらいで料理を彩ってきたのだ。

ほうじ茶や富有柿など岐阜産の食材が活躍!

食材へのこだわりは、天ぷら以外の料理にも息づいていた。「今日使うものは、スペシャルなもの」と妻・愛子さんが取り出した“ほうじ茶”もそのひとつだ。最後のスイーツには、和を意識した「ほうじ茶プリン」が登場。使用しているほうじ茶は、岐阜県揖斐川町旧春日村で100年以上前から栽培されている在来種のお茶だ。

しかし、生産者の中村さよさんは、高見さん夫婦がオーストラリアに赴任する直前に死去。今、オーストラリアにあるさよさんが手がけた茶葉は、旧春日村の方々が高見さん夫婦に「最後のさよさんのほうじ茶を一緒にオーストラリアに持っていってくれないか」と託したものだ。さよさんが手がけた最後の茶葉を、「“ここぞ!”という時に使おうと決めていた」と話す愛子さん。夫婦にとっても大切な茶葉はプリンに姿を変え、鹿児島県の離島・喜界島の黒砂糖をベースにした黒蜜シロップと共に会食に華を添えた。

また、この会食ではもうひとつ、夫婦が岐阜県から持ってきた食材が使用されていた。それは、カマンベールチーズの上にトマトと一緒に乗せられた、岐阜の名産・富有柿で作った「柿びしお」だ。愛子さん曰く「甘い味噌にしょうゆ辛さがミックスされたような、でもすごく柔らかい優しい味」という調味料。

この「柿びしお」を作っているのは、障害のある方が通う岐阜市の施設「第二いぶき」。富有柿はキズなどで出荷できない規格外のものを使用し、柿のペーストを米こうじやしょうゆ、みりんなどで1時間ほど煮込んでいく。今回の会食に「柿びしお」が使用されたことについて、「第二いぶき」澤井大輔さんは、「高見さんに気に入っていただいたことがキッカケで、(「柿びしお」を)オーストラリアの方々に食べていただけることは、僕らにとって非常に嬉しいこと。みんなに共有したら、“やったね!”と拍手で喜びました!」と笑顔で語った。

「今まで食べた日本食の中で一番おいしかった」

ついに迎えた会食当日。午後7時、ドン・ファレルさんが大使館に到着。ドリンクと共に、岐阜の「柿びしお」を使用した料理がふるまわれた。

会食の舞台は、いよいよ“天ぷらバー”へ。緊張感をまといながらも、笑顔でファレルさんを迎える、直樹さんと愛子さん。そんな二人と、ファレルさんも「I love Japanese foods.(日本食は大好きですよ)」とにこやかに挨拶を交わす。外交上の重要な会話が含まれるため、「キャッチ!」取材班は一旦退席。会食後、その様子を取材させてもらった。

直樹さんと握手を交わしながら、「すばらしい会食でした。今まで食べた日本食の中で一番おいしかったです」と笑顔で料理の感想を伝えるファレルさん。続けて、愛子さんとも握手を交わし「素敵なおもてなしでしたよ」と感謝を述べた。

世界各国の要人や外交官などが集う大使館で、“味の外交官”として活躍する公邸料理人。オーストラリアの日本大使館では、岐阜の夫婦が日本外交の最前線を“味”で支えている。

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