×

【核のごみ】さらなる負担に反対だった玄海町長 原発の立地自治体として初めて「文献調査」受け入れ 葛藤と決断 単独インタビュー 佐賀

2024年7月7日 7:51
【核のごみ】さらなる負担に反対だった玄海町長 原発の立地自治体として初めて「文献調査」受け入れ 葛藤と決断 単独インタビュー 佐賀
脇山町長が語る葛藤と決断

原子力発電所から出る、いわゆる”核のごみ”の最終処分場の選定をめぐり、調査の第1段階となる「文献調査」が、原発の立地自治体でもある佐賀県玄海町で始まっています。文献調査の受け入れを決めた玄海町の脇山伸太郎町長がFBSの取材に応じ「葛藤があった」などと当時の心境を語りました。

■玄海町・脇山伸太郎町長
「私がどう投げ返すかになって、その責任としてやるので、長く置いておくわけにもいかないし。時間的なものと、どうしようかなというところは一番、ピークだったかもしれないですね。いま考えれば。」

2日、取材に応じた佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長。「文献調査」受け入れの決断を迫られた中で感じていた重圧を口にしました。

きっかけはことし4月。原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる”核のごみ”の最終処分場選定に向け、玄海町議会に、調査の第1段階となる「文献調査」を受け入れるよう求める請願が地元の飲食業組合など3つの団体から出されました。

その後、本会議で賛成多数で請願は採択され、「文献調査」を受け入れるかの最終的な判断は、脇山町長に委ねられました。

議会事務局によりますと、4年ほど前から文献調査受け入れに関する話は一般質問などで挙がっていたといいます。

■脇山町長
「町長になってから予算委員会とか一般質問で文献調査受けるべきじゃないかというのは何度もずっとあったので、いずれ請願があがってきて議会の採決があって、私がどうするかという判断になるだろうなと想定していました。思ったよりちょっと早いなと感じました。」

そして、請願が出されてからおよそ1か月後。

■脇山町長
「原子力発電事業に長年、携わり、さまざまな形で国に貢献してきた立地自治体が、さらに文献調査に協力することは、非常に重い決断であります。」

脇山町長は熟考の末、全国で3例目となる文献調査の受け入れを表明しました。”非常に重い決断”と発言した当時の心境を聞きました。

■脇山町長
「議会でも予算委員会でも一般質問でも毎回、私みずから手を挙げることはないし、国からの要請も受け入れることはないと言っていました。私自身の考え方としては、大きな市町村で、そして人家からも離れて、そういったところが適地ではないかなと思った。」

「科学的特性マップ」では最終処分場の適地として「好ましくない」

玄海町は、経産省が公表している「科学的特性マップ」で、地下に石炭が埋蔵されている可能性があることから最終処分場の適地として「好ましくない」とされています。

また、原発の立地自治体として、さらなる負担を背負うことに抵抗を感じ、脇山町長は当初、反対の立場を示していました。しかし。

■脇山町長
「住民の代表である議会が大多数で採決されたので、私の考え方と議会の採決とは若干ギャップがある。自分なりにどうしようかなと悩んだところはあります。受け入れた場合どうなるか、受け入れなかったらどうなるか。いろんなことを考えた。葛藤がありました。」

議会の決定を重く受け止め脇山町長は苦渋の決断を下しました。6月からは、文献調査が始まっています。

■住民への取材より
「町長が苦しいなか判断をしたので反対はできない」
「原子力発電所で恩恵を受けている事実はあるので、調査に協力しなければという気持ちはある」

一方で、不安に感じている住民もいます。いちご農家を営む寺田孝雄(76)さんです。

■寺田孝雄さん
「文献調査ってどういうものか、中身が知りたかった。そういう話が全然なかったから。そのへんがショック。」

寺田さんが特に心配しているのは、農業などへの風評被害です。

■寺田さん
「それが一番こわい。ならんようにはするかもしれないが、絶対ないとは言い切れない。」

文献調査は今後、2年ほどかけて行われます。脇山町長は原発がある以上、「最終処分場」の問題は避けられない課題であるとした上で、一つの自治体だけの問題ではなく、全国的に考える必要があると強調しました。

■脇山町長
「ほかにまだ、手を挙げてもらうようなことになるといいなと思っている。呼び水的に、ほかの自治体でいろんな議論がされるようになればいいかなと思っています。」