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特集「キャッチ」中洲の夜間保育園 園長は現役のスナックのママ「中洲で働く親も子どもも安心できる場所を」 福岡

2024年3月27日 19:30
特集「キャッチ」中洲の夜間保育園 園長は現役のスナックのママ「中洲で働く親も子どもも安心できる場所を」 福岡
「キャッチ」夜間保育園の園長は中洲のママ
特集キャッチは、福岡市・中洲のすぐそばにある「夜の保育園」が舞台です。新型コロナの5類移行後繁華街が活気を取り戻す中で、保育園にも変化が見えています。様々な事情を抱えて夜に子どもを預ける親たちに寄り添うのは、異色の経歴を持つ園長です。

0歳から2歳のおよそ20人が通う保育園、「マミーハウス」です。

■園児たち
「おいしい。」
「いっつも食べてるよ、全部。」

九州一の歓楽街、中洲から歩いて2分ほど、商店街の一角にマミーハウスはあります。この保育園に子どもたちが集まるのは夜です。

園の預かりは午後2時から深夜3時までで、利用する保護者の多くは中洲で働く女性たちです。

■保護者
「3歳、4歳になったら、お昼の保育園に預けようかなとは思っているけど、それまでは貯金もしたいので夜(の仕事)の方が効率がいいかなと。かわいそうだなと思うときはあるけど、やっぱり普通の子とは生活スタイルが全然違うので。」

■保護者
「バイバイ。」
「この時間じゃないと仕事に行けないので、ありがたいですね。」

■保護者
「2人とも1歳前から(預けている)。(中洲で仕事を続けられるか)不安だったけど、先生たちもとてもいい人たちばかりなので、不安は今はもうないです。」

母親たちは、小走りでネオンが瞬き始める中洲のまちに向かっていきます。

保護者を送り出したマミーハウスで子どもたちを見守るのは、園長の草野真由美さん(57)です。

■マミーハウス園長・草野真由美さん(57)
「テーマは自立。子どもたちが自分のことを自分でやるというのを目標にしている。」

子どもたちは午後8時ごろ部屋の中で体を動かしたあと、徐々に心と体を落ち着かせていき、午後9時に眠りにつきます。

マミーハウスのように、午後10時以降の深夜帯に預かりを行っている保育園は、福岡市内で14か所あります。

夜間保育には、昼間とは違う難しさがあるといいます。

■草野さん
「(保育園に)来た時の心の落ち着きって、朝(登園)のところだと、起きてご飯を食べて、まっさらのままで来られるからいいですが、うちはやっぱりその前にいろいろなことが起きているし、お母さん方もシングルの人が多いので、その辺の子どもたちの葛藤もあるかなと思うんですが、だからこそここに来てからは、触れ合う時間も大切にして、それが子どもたちの未来につながればいいと思っています。」

子どもひとりひとりの気持ちに寄り添う園長の草野さんには、もうひとつの顔があります。

別の日の夜9時、髪を結い上げ、着物を着た草野さんの姿がありました。

■草野さん
「今からは中洲の方のお店に出て、お仕事してこようと思います。」

草野さんは、保育園の園長でありながら、今も現役の中洲の「ママ」なのです。

■草野さん
「中洲には私は18歳から働き出して、1人目の子を出産した時、生後5か月で託児所に子どもを預けたのが始まり。」

22年前、わが子の預け先を探していた草野さんは、見学に訪れた園で、子どもを放置するだけの、到底「保育」とは言いがたい光景を目の当たりにし、衝撃を受けました。

「お母さんも子どもも安心できる場所を」と中洲で働きながら保育園づくりに奔走し、7年前、50歳の時にマミーハウスを立ち上げました。

保育園の園長となった後も現役の「ママ」を続けるのは、子どもを預けに来る母親たちと同じ目線を持つことを大切にしているからです。

■草野さん(マミーハウス園長/スナックママ)
「同じ中洲で働く女性として、いつもつながっていたい。お母さんたちの気持ちとか思いが、現場に立つことでより深く感じられるかなと。」

「園長」としても「ママ」としても一線で汗をかき続けてきた草野さんは、新型コロナの感染拡大が落ち着きを見せた去年から「変化」を実感しています。

■草野さん
「1歳未満の子どものの問い合わせが多くて、この1年ぐらい。今まではコロナ禍で仕事がないと諦めていたお母さんたちが、コロナ禍が明けて子どもを預けられたら今すぐにでも働きたいと。だから経済状況もあまりよくない。」

0歳児の預かりは、コロナ前は3人でしたが、今は9人にまで増えました。

利用者のなかには、幼い子どもを夜に預けることに罪悪感を持ってしまう人もいます。

葛藤を抱えて働く母親に、草野さんは、苦しい状況を抱え込まず親自身も幸せになれる方法を一緒に学ぼうと伝えます。

■草野さん
「やっぱり愛しかないから。たくさん愛を伝えてほしいなと思う。それにはお母さんが幸せじゃないと、子どもって幸せじゃないから、子どもだけの成長ではなくて、母親も一緒に成長していく必要がある。そういうところをサポートしていきたい。」

この日もまた、仕事を終えた母親が子どもを迎えにやってきました。

■保護者
「夜も昼も変わらないので、元気よく育ってくれれば。健康に育ってくれれば何も言うことはないですね。」

親も子もともに成長していけるように、夜間保育園がそっと背中を押してくれています。