シリーズ「こどものミライ」セリフは全て英語 中高生が歌舞伎に挑戦 日本の伝統文化を世界へ「いろんな人が興味を持ってくれたら」福岡
日本の伝統芸能、歌舞伎。聞こえてくるセリフは流ちょうな英語です。演じているのは中学生と高校生です。
福岡県筑紫野市にあるリンデンホールスクールの中高学部です。国際社会で活躍する人材の育成を目指し、国語以外の全ての授業が英語で行われています。
■リンデンホールスクール中高学部・都築明寿香 校長
「国際人になるためには、自分の国のアイデンティティーをしっかりと身につけることが大切だと考えています。その上で、ツールである英語であったり、教養、知識、それらを身につけていくことが大事だと思っています。」
「英語歌舞伎」に挑戦するのは、中学1年生から高校2年生まで72人です。
演目は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」で、生徒が上演するのはそのうちの一幕、「車引(くるまびき)」です。太宰府ゆかりの菅原道真公の左遷をめぐる周囲の人々の姿が描かれていて、「車引」の場面には歌舞伎の様式美と面白さが詰まっているといいます。
■中学3年・今里優来さん
「多分締められます。その日によって(帯の)リボンが小さかったりするのですが。」
中学3年生の今里優来(ゆら)さんは、主役にあたる三つ子の兄弟のひとり、桜丸を演じます。優美で色気のある役どころです。
■歌舞伎俳優・中村壱太郎さん
「ローテンションからだんだん声大きくしていって、最後めっちゃ大きくして。」
指導に当たるのは、プロの歌舞伎俳優、中村壱太郎(かずたろう)さんです。歌舞伎ならではの抑揚を、英語に反映させていきます。
■壱太郎さん
「英語になると(セリフが)より速く感じるから、そこはあまり速くならない。思ったよりイメージゆっくり。」
■優来さん
「歌舞伎だと強く発するところと、英語だと強くしないところがあったりするので、そこを違和感なく変えるのが難しいです。」
■壱太郎さん
「日本語でやったら良いんじゃないかっていってしまうとそれで終わっちゃうのですが、やっぱり自分たちの得意とする英語を使ってどういう表現ができるか。数をやっていって、体に落とし込んでいくことなので。」
本番へ
本番3日前、優来さんは壱太郎さんの舞台に足を運びました。
■生徒たち
「お疲れさまです。」
■優来さん
「泣きました。」
■壱太郎さん
「どういう気持ちで言っているかは、英語であろうが日本語であろうが同じ。演じるということは同じだと思うので、みんなにこの感動を届けてもらえれば。」
開演9時間前にリハーサルが行われました。衣装を身につけて舞台に立つのは、これが初めてです。
■優来さん
「暑いし、重いし、腰は痛いし、ちょっと。」
衣装替えでは黒衣(くろこ)との息が合わず、焦りが募ります。
■優来さん
「1個前でセリフ間違えて。焦っていたのもあって気をつけなきゃなと思いました。」
本番1時間前、緊張に押しつぶされそうな優来さんに、壱太郎さんが声をかけました。
■壱太郎さん
「大丈夫です、舞台上がればしっかりやりますので。」
■優来さん
「頑張ります。感動しかないです。メイクとれちゃうから泣いたらダメなのに。」
さあ、本番です。舞台袖では、優来さんが出番直前までセリフを確認します。そして、いよいよ舞台へ。
衣装を脱ぐシーンもスムーズにでき、一番の見せ場も無事成功しました。
■観劇した外国人
「初めて歌舞伎を見た。意味も通じました。」
「英語歌舞伎のいいところは、新しい観客を取り込む機会になること。」
「英語でできたから、世界中に歌舞伎や日本の文化を発信できる方法が見えてきたかなと。」
■優来さん
「英語を使う人はたくさん世界中にいるので、英語を使って、言語を合わせて伝えていくことで広まって、もっと日本の歌舞伎、伝統芸能について、いろんな人が興味を持ってくれたらいいなと思います。」
日本の文化を世界に発信する第一歩となった“英語歌舞伎”。生徒たち自身も伝統芸能の魅力を見つめ直すきっかけになったようです。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年10月29日午後5時すぎ放送