【5月1日は八十八夜】八女茶の産地の伝統と変化 ノルウェーからは「日本茶のオタク」お茶文化を世界へ 福岡
5月1日は立春から数えて88日目にあたる八十八夜。新茶の季節です。県内一のお茶の生産量を誇る八女市では、八女茶の魅力を世界に届けようと奮闘する生産者の姿がありました。
お茶の産地として知られる福岡県八女市星野村。4月25日は“あるお茶”の、ことし初めての摘み取り作業が行われました。
■髙木茶園・髙木暁史さん(50)
「こちらが伝統本玉露の茶畑です。」
Q上に覆いかぶさっているのは?
「わらでできていて、すまきと言われる遮光資材です。」
摘み取りが行われたのは、高級なお茶として知られる「玉露」です。
星野村は日照時間が短いことや1日の気温差が大きいことなど、お茶を栽培する条件がそろっているといいます。
星野村の玉露はうまみと甘みの強さが特徴で、その品質の高さで、23年連続で日本一に輝いているということです。(全国茶品評会・玉露の部「産地賞」を八女市が受賞)
髙木茶園の4代目、髙木暁史さんは、星野村でお茶の生産から販売まで手がけています。
玉露の中でも「八女伝統本玉露」は国が特産品を地域ブランドとして保護する制度に登録されていて、その代わりに生産方法などに厳しい条件があります。
■髙木さん
「すごく手間暇はかかりますね。普通のお茶に比べたら。(玉露の生産者は)もう少ないです。かなり少ないです。幻になりつつありますね。」
そんな「幻の玉露」の味は。
■中村安里アナウンサー
「いただきます。うまみが強いです。だしを飲んでいるかのごとく、それくらい濃厚さがあって、後味は甘みとまろやかさを感じます。」
髙木さんの茶畑に今、大きな変化が起こっています。この日行われた新茶の収穫作業には、一人の外国人の姿がありました。
■髙木さん
「今回、インターンでノルウェーからお茶の勉強にきてもらっているホーコンさんです。」
ノルウェーから訪れたのは、ふだんはオスロ大学で数学を教えるホーコン・ホルデルップさんです。
■ホーコン・ホルデルップさん(32)
「実は日本茶のオタクです。八女茶が特においしいと思ってずっと八女に来たかったので、今回の新茶の季節はやっと来られました。」
髙木さんのもとには、ここ最近は毎年、海外から40組ほどの外国人が訪れるといいます。
■髙木さん
「ノルウェーに帰ったら、多くの人に日本茶のこと伝えてもらえたら僕はすごいうれしい。」
髙木さんが外国人を受け入れるのには、切実な理由がありました。
■髙木さん
「国内のお茶の市場は需要と供給のバランスが崩れているので、価格が低迷して収益が取れない現状が続いている。国内で厳しいんだったら海外で勝負をしていくしかないんだなって感じています。」
肥料などの原材料費が高騰する一方で、日本人のお茶離れが進み、農家を取り巻く環境は厳しさを増しているといいます。
そんな中、髙木さんが海外に目を向けるきっかけがありました。
■髙木さん
「海外に行く機会があって、そこで海外の方のお茶の反応を見てびっくりした。いいなと思った。」
カナダの大学に留学中、日本茶について発表するとクラスメイトが感動しているのを見て、“八女茶”に対する考え方が変わったといいます。
八女茶は海外で戦える。そんな思いで25歳で星野村に帰ってきた髙木さんは、みずから生産したお茶を積極的に海外に売り込みました。
ドイツの見本市に参加したり、インバウンド向けの農園ツアーやインターンの受け入れも始め、現在は生産したお茶のおよそ15%をヨーロッパやアメリカに輸出しています。
■髙木さん
「自分が作ったお茶で世界の人を笑顔にしたいという思いがあるので、より多くの方に八女茶、星野村で作ったおいしいお茶をお届けして笑顔になっていただきたいと思っています。」
日本が誇るお茶文化を世界へ。髙木さんは、星野村から八女茶の魅力を伝え続けます。