【議論】すべての働く人に恩恵?「103万円の壁」上限178万円になるとどう変わる? 福岡で働く人は
自民党と国民民主党は8日、いわゆる「103万円の壁」について政策協議に入りました。年収が103万円を超えると所得税が課せられる制度。福岡で働く人たちは、この制度をどのように感じているのでしょうか。
福岡市博多区の居酒屋です。平日にもかかわらず、多くの客でにぎわっていました。
この店でアルバイトをしている、専門学校生の亀沢沙羅さん(20)は、ホールやキッチンの仕事を任されています。頭を悩ませているのは「103万円の壁」でした。
■伊都の台所本店 アルバイト・亀沢沙羅さん
「半年前は週4、5回と入れていたのですが、今は週に1、2回で、親の扶養に入っていて、お金(税金)が取られてしまうので(シフトに)入れない状態になってます。」
今の制度では年収が103万円を超えた場合、所得税が課せられる仕組みとなっています。さらに、子どもが親の扶養に入っていた場合、103万円を超えると扶養から外れ、親がそれまで受けていた扶養控除がなくなり、税金の負担が増えます。
■亀沢さん
「(年収が)今はもう100万とかなので、ギリギリで攻めている感じです。 もうちょっと(上限を)上げてもらえたら、自分自身もすごく助かるなと思います。」
この「103万円の壁」にぶつかっているのは、働く側だけではありません。店側もシフトを組むのが一苦労だといいます。直近10日間のシフト表を見せてもらうと「休み」の文字が目立ちます。
■伊都の台所本店・福原政幸 店長
「通常、みんなまんべんなく(週に)3、4回入った子たちが103万円超えるので、短時間になってきているのがほとんどですね。」
これから忘年会シーズンを迎え、店は少しでも働き手を増やしたいところですが、「103万円の壁」が近づいているアルバイトも多く、短期のアルバイトを雇うなど対応に追われています。
■福原店長
「接客の面、料理の面、サービスの部分が今まではうまくできたのが、人が少なかったらお客様にも迷惑かかるし、そういった部分では苦しい状況。」
「103万円の壁」引き上げなら税収減
私たちの働き方にも大きな影響を与えている「103万円の壁」。
国民民主党の玉木代表は、この上限を178万円まで押し上げたいとしています。制度のできた1995年から30年近くがたち、最低賃金がおよそ1.73倍になっているため、103万円の1.73倍、178万円まで引き上げるべきと主張しています。
専門家は、家庭の手取りが増えることで、経済も回るのではとの見方を示しています。
■ファイナンシャルプランナー・樽 利恵子さん
「ほとんどの人が、もっと働きたいけど働けないという状況なので、これだけ物価が上がって社会状況も変わってきているので、変わって当たり前だと思う。」
■森洸アナウンサー
今回、国民民主党はいわゆる「103万円の壁」を178万円に引き上げるべきと主張しているわけですが、玉木代表は全ての働く人に“恩恵がある”と説明しています。
所得税のかかるラインである「103万円」を引き上げることで、課税対象所得、つまり所得のうち税金のかかる分を減らすことができるということなんです。これで多くの働く人の減税につながるというわけです。
■松井礼明アナウンサー
「つまり、手取りが増えるということですか。」
■森アナウンサー
玉木代表は、年収に応じてどのくらい減税されるのか、SNSで試算を出しています。
年収が200万円の人は年間8万6000円の減税、
300万円の人は11万3000円の減税、
1000万円の人は22万8000円の減税になると説明しています。
その「103万円の壁」撤廃の協議が始まったことについて、街の人に話を聞きました。
■街の人
「僕には該当しないなというところではあるのですが、妻とかアルバイト、パートをしている方にはいいんじゃないかなと。(減税されたら)旅行とか行きたいですね。近場であれば沖縄とか行ってみたい。」
「これだけもらえるとなったら、使える幅が広がってくるのかなと思います。」
「貯蓄と、ちょっとだけ生活を潤わせたいかな。先々も心配ですし、どうなるか分かりませんもんね。年金だってですね。」
仮に減税された場合の使い道については、旅行、あるいは貯蓄にしたいという話がありましたが、この引き上げが実現した場合、政府の試算では、国と地方であわせて7兆6000億円ほど税収が減ることが分かっています。
これに対し、国民民主党の玉木代表は、予算の徹底した見直しなどで7兆円程度の減収への対応は十分可能だといいます。
さらに、国民の「手取り」が増えれば消費が活性化し、経済には必ずプラスに作用すると説明しています。