シリーズ『こどものミライ』 “生きる力”を育む 保育園で教育の一環にわらべうた
子育てを取り巻く環境や子どもたちの成長を見つめるシリーズ『こどものミライ』です。誰しも一度は歌って遊んだ記憶のある『わらべうた』を、教育の一環として取り入れている保育園があります。その効果を取材しました。
■わらべうた
「たまりや たまりや おったまり ぬけろや ぬけろや ねずみさん」
福岡県那珂川市の青葉保育園で、子どもたちが楽しむのは『わらべうた』と呼ばれる遊び歌です。子どもたちの輪に一緒に加わるのは、福岡県で約45年間『わらべうた』の伝承活動を続ける兒玉敦子先生(64)です。
■兒玉敦子先生(64)
「じゃあ、みんなとんぼさんになって歌に合わせて飛んでいくけど、気をつけてほしいのは、お友達に当たらないように上手に飛べるかな?」
■子どもたち
「はい!」
■兒玉先生
「説明をしない。遊びの説明もそんなにしないし、ただルールだけ。こういうふうになっているよと基本的なルールだけ伝えて、子どもたちが自分の力で感じて遊び込んでいくのが、すごく楽しい。」
『わらべうた』には作詞・作曲者がいません。子ども同士の会話から生まれ、日本各地で歌い継がれてきました。覚えやすい簡単なメロディを繰り返すことが特徴です。
■わらべうた(とんぼとんぼ)
「とんぼ とんぼ このゆびとまれ とんぼ とんぼ めをまわせ」
初めて遊ぶ『わらべうた』でも、子どもたちはあっという間に覚えていました。
専門家は、“コロナ禍”を経た今の時代だからこそ、『わらべうた』が子どもの成長にもたらす効果がより高まっていると指摘します。
■九州産業大学 子ども教育学科・三原詔子准教授
「子どもたちも遊びをいろいろ制限されて、閉塞感や息苦しさを感じて、不安を大人と同じように抱えて過ごしていたと思います。わらべうたは、手を繋いで輪になって表情を見ながらみんなで声を合わせて歌う。充実感とか満足感をたくさん得られると思います。」
■わらべうた(たこたこあがれ)
「たこたこあがれ てんまであがれ たこたこあがれ」
■兒玉先生
「相手もよく見ないといけないし歌も聴かないといけないし、単純な遊びなんだけどいろんなこと使って遊んでて、いろんな育ち(成長)ができると思います。」
この日、保育士向けに開かれたのは、『わらべうた』の勉強会です。
手を繋いだり、息を合わせたり、子どもと同じ目線で楽しみます。
■わらべうた(うぐいすのたにわたり)
「うぐいすの たにわたり うめにうぐいす ほーほけきょ」
■保育士
「梅とウグイスどっちがいい?」
「梅。」
門をくぐった子どもが梅かウグイスを選び、最終的に選んだ人の多いほうが勝ちです。
■保育士
「先生、選べない子がもしいたら?」
■兒玉先生
「いるのよ、最近。どっちも好きとか、どっちも嫌いとかね。『どっちかにしよ』って、ぜひ決断力を育ててください。判断力・決断力あたりを引っ張りだして。」
大人たちには、『わらべうた』をどう子どもの成長に結びつけるのかが求められます。
■保育士
「子どもが何かしら行動してくれるから、大人が前に前に出ないというか。その中で子ども同士でも目を合わせながら感じるもの、考えるものがあるのかなと感じます。」
■兒玉先生
「せっかく生まれてきたので、楽しくすごしてほしい、子ども時代に。なるべく自然と触れ合ったり人と触れ合ったりして、それが楽しいという記憶と思い出をたくさん残してほしいと思っています。」
■5歳
「わらべうた楽しかったねぇ。」
「おつきさん おつきさん なしゃほしゃ でさっさん」
■5歳
「先生がいろんなわらべうたを教えてくれるから、前からずっと上手。」
自分で考える力や他人を思いやる力など、古くから歌い継がれてきた『わらべうた』には、子どもたちの“生きる力”を育むヒントが詰まっていました。