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シリーズ「こどものミライ」“定額働かせ放題”改善なるか 教員免許なしでもOKの背景は

2023年7月25日 18:50
シリーズ「こどものミライ」“定額働かせ放題”改善なるか 教員免許なしでもOKの背景は

子育てを取り巻く現状や子どもたちの成長を見つめる、シリーズ「こどものミライ」です。今回は学校の先生について考えます。

福岡県は2023年から、教員免許を持っていなくても一定の社会人経験があれば採用試験を受けられるようにしました。

背景にあるのは“教員のなり手不足”ですが、先生を目指す学生の本音を探りました。

■教員を目指す大学生
「(時計の)長針と短針を読むことで何時何分が表せるようになります。」

福岡県太宰府市にある筑紫女学園大学では、教員採用試験の2次試験に向け、学生たちが模擬授業の練習をしていました。

参加していた学生は全員、2023年の採用試験を受けています。2次試験の“模擬授業”は約10分間です。ポイントは“声”だといいます。

■准教授
「まずは第一声が大事。声を張っていかないと印象が良くない。」

想定外の質問に、臨機応変な対応ができるかも大事なポイントです。

■教授
「先生、『英語を勉強するのが難しい』ってどういうふうに言えばいいんですか。」

■学生
「Yes.What do you say難しい in English?Yes.difficult.」

学生たちの将来がかかる教員採用試験に今、変化が起きています。福岡県の教員採用試験には2023年から社会人経験者特例制度が導入されました。

社会人として2年以上働いた経験があれば、教員免許を持っていなくても採用試験を受けることができます。合格すると、大学などで2年かけて免許を取得し、その後、学校現場に配置される“後から免許”制度です。

■福岡県教育委員会教職員課・日高 吉三郎課長
「大学の時に教員免許を持っていなくても、 教育に対する思いを持っている方にぜひ、我々の世界に来ていただきたい。社会人の経験を持っている方を 学校現場に入れることが、学校現場の多様性、質の向上にもつながると思います。」

しかし、前向きな話ばかりではありません。免許を持たない社会人に門戸を開いた背景には、長時間労働などが要因とされる“教員のなり手不足”があります。

公立学校の先生には、月額給与の4パーセントを基本給に上乗せする代わりに、時間外手当などは支給しないと法律で定められていて“定額働かせ放題”とも指摘されています。

こうした状況が続く中、福岡県の教員採用試験の倍率は2023年、小学校で1.2倍、中学校で2.3倍と過去最低となっています。

人手不足は深刻で、県内の2割近い学校で計200人以上の先生が足りていないといいます。

■日高課長
「数年前であれば、社会人の教員免許を持っていない方にまで受験機会を設けるという発想はなかったと思うんが、そこまでしなければ数の問題がなかなか解決しない。」

こうした採用をめぐる変化を、先生を目指す学生たちはどう受けとめているのでしょうか。

■筑紫女学園大学・辻井美羽さん(24)
「いろいろな視点から物が見られる、子どもたちのチャンスにもなると思うので、いろいろな形の先生はあった方がいいなと私は思います。」

一方で、複雑な思いを抱く学生もいます。

■筑紫女学園大学・井上葵さん(22)
「あまり肯定的ではないです。4年間使って勉強しているし、実習だったり模擬授業だったり、いろいろな対策をして教員になろうというところで、同じ舞台に社会人経験を積んでいるからという理由で、ここの差はフラットになると思えない。」

教育現場や教師の働き方に詳しい専門家は、環境整備の重要性を指摘します。

■筑紫女学園大学文学部・竹熊真波教授
「免許を持っているけれど、教職についていない人が非常に多い。ちゃんとしたペイとか待遇をきちんとする、環境を整備してあげると、自分がなりたいとか、免許を取りたいという人がもっと増えるかなと思います。小手先だけの、ただ人を埋めるというものでは、最終的な解決にはならないと思います。」

実際、国も教員のなり手不足に危機感を示し、処遇改善に向けた議論を進めています。先生を志す人たちをどう増やしていくのか。子どもたちの未来のために、一刻の猶予もありません。

福岡県では2023年、初めて導入された社会人経験特例制度で、20代から40代の20人が教員採用試験にチャレンジしているということです。

合格した人は、大学などで2年かけて免許を取得し、その後、学校現場に配置されることになっています。