シリーズ『こどものミライ』 福岡市の保育園に“第3の存在” 「おるたなさん」とは
子育てを取り巻く現状や子どもたちの成長を見つめるシリーズ『こどものミライ』です。福岡市の保育園に「おるたなさん」と呼ばれる人がいます。地域が子育てに積極的に関わる、『街ぐるみの子育て』に注目します。
福岡市中央区の住宅地におととし開園した『ごしょがだに保育園』は、30人ほどの園児が年齢で分けられずにのびのびと過ごす、アットホームな雰囲気が特徴です。園長の酒井咲帆さん(42)に施設を案内してもらうと、聞き慣れない言葉が聞こえてきました。
■園長・酒井咲帆さん
「これが『おるたなさん』の、とよさんが作ったランプです。」
「これも『おるたなさん』のお仕事というか、『おるたなさん』に 大屋さんという人がいらっしゃるんですが、本棚を作っていただいていて。」
実は、酒井さんが園長を務める保育園には、「おるたなさん」と呼ばれる人が10人ほどいます。その正体は、子育て支援員やボランティアとして園の運営に関わる地域の人たちです。
酒井園長によると、「おるたなさん」の語源は英語で、第3者という意味がある『オルタナティブ』です。保育士でも保護者でもない、“第3の存在”として、子どもたちと関わっています。
3年前から「おるたなさん」として活動する藤田豊久さん(44)、通称「とよさん」がその名付け親です。
■おるたなさん・とよさん(藤田豊久さん)
「保育士とはちょっと違ったオルタナティブな要素という意味で、『おるたなさん』と付けたんですよ、自分たちで。」
とよさんは園の近くの工房で、アップサイクルしたガラス製品を製作・販売していますが、3人の子どもを育てた経験を生かしたいと『子育て支援員』の資格を取得しました。
■とよさん
「子どもに向かい合うことでお互いに元気になるようなことを感じてたんで、子育てをしていたときに。自分も楽しめる、向こうも楽しんでくれる、一緒にその場を過ごせることが楽しい。」
■園児
「(Q. とよさんのどこが好き)かお!」
子育て支援員は、主に掃除や洗濯など保育士のサポートをするのが役割ですが、『ごしょがだに保育園』では、それぞれの強みを生かして子どもたちと関わります。
趣味のギター歴30年のとよさんは、子どもを昼寝から起こす時間に、目覚まし代わりの一曲でコミュニケーションを取るのが日課です。
絵を描くことが得意な「おるたなさん」のななえさんは、特技を生かして砂絵遊びを教えていました。
■ななえさん
「もともと小さい子向けに教室をやってたんですけど、そのときからやっている作業をいまここでもやらせてもらっていて、保育士ではないんですけど、『好きなようにやっていいよ』とよく言ってくれるので、思いついたらやりたいときにやる。」
多彩なバックグラウンドを持つ「おるたなさん」を通して、子どもたちには“人との関わり方”を学んでほしいといいます。
■酒井さん
「自分の中にルールを決め過ぎちゃうと、そうじゃない、予想していない人は受け入れられないみたいな、ハードルがたくさんできちゃう気がしていて。どう折り合いを付けていくかということを、小さいときから学んでいくということは、平和な社会をつくっていくことにつながっていると思っている。」
■吉村史織アナウンサー
「子どもたちが感性を磨く場は、園の中だけではありません。近所の公園をボランティアで管理することで、園児の活動の場としています。」
独自の園庭がない保育園では、近くの公園を活用しています。福岡市中央区の古小鳥公園には自然と地域住民が集まり、「おるたなさん」として園児たちを見守ってくれるようになりました。
■園児
「おはようございます。」
■地域住民
「おはようございます。」
この日は、園児と地域の人たち40人ほどが、一緒にラジオ体操を行っていました。
子どもたちと交流する大人が増えたことは、地域の活性化にもつながっているようです。
■地域住民
「(肌が)いい色になったね、夏で。」
「本当だ、いい色になってる。」
■地域住民
「かわいい。」
■酒井さん
「皆さんと一緒にラジオ体操させてもらっていたら、(地域の人が)ラジオ体操の卒業式をしてくれたりとか、街と融合してきたなという感じはあります。(保育園は)子どもを一緒に街と育てていく場所だということを伝えていきたいなと思っています。」
子育てに新しい風を吹きこんでくれる「おるたなさん」など、地域みんなで子どもの成長を見守ることで、保育園を中心とした新しい街の風景がつくり出されています。