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シリーズ『こどものミライ』 男性の育児休暇取得率アップへ 企業に求められることは

2023年8月31日 17:50
シリーズ『こどものミライ』 男性の育児休暇取得率アップへ 企業に求められることは

子育てを取り巻く環境や子どもたちの成長を見つめるシリーズ『こどものミライ』です。政府が再来年までに取得率50%を目指す男性の育児休暇ですが、昨年度の取得率は17%でした。この数字に表れているのは、育休の“取りにくさ”です。それを解消するため企業に求められることとは何か、取材しました。

■FBS社員・松藤康司さん(42)
「ただいまー!」

松藤康司さん(42)は、FBSの社員で早朝番組を担当しています。

そのため、平日はほとんど子どもと向き合えませんでしたが、3人目の誕生に合わせて2週間の育児休暇を初めて取得しました。

■長男・創太くん(5)
「(Q. 妹ができてどうですか?)たのしい!」
「いないいないばぁ~。」

妻の枝里子さんが赤ちゃんの世話に専念できるよう、休暇中の松藤さんは5歳の長男と1歳8か月の二男の面倒を見ます。

■妻・枝里子さん
「手洗った?」
■松藤さん
「あ、そうだ!かいちゃん手洗ってない!」

■松藤さん
「あたたた。もう、そんな遊ばないでよ。」

■松藤さん
「まずは、“奥さん大変だな”って。なんとなく分かってたつもりだったけど、 24時間子どもと向き合うって、本当に大変だなって身にしみて感じています。」

FBSでは、去年10月にパパ育休制度を開始して以降、6人の男性社員が育児休暇を取得しました。

■松藤さん
「社内の雰囲気が変わった。あと上司からも積極的に『(育休を)取れよ』と言ってくれたのも大きかったです。自分が取ることで、もっと下の若い社員も取りやすく、自分も取ろうと思いやすくなるかな。」

■妻・枝里子さん
「本当に自ら考えて動くようになった。私に何も聞かなくても、全部把握している感じになっていた。どこに何があるとか、何時に何をするとか。」

この日は、育休最終日です。

■松藤さん
「正直言うと、仕事のほうが楽だったんじゃないかと。楽しかったです。やってよかった。」

厚生労働省によりますと、昨年度の男性の育休取得率は17.13%と過去最高を更新したものの、政府が掲げた目標の『50%』からは依然として大きな開きがあります。

男性が育休を取らない理由の調査結果では「収入を減らしたくないから」が約40%と最も高く、次いで「取得しづらい雰囲気や職場の理解のなさ」が22.5%となっています。

そんな状況の中、4年前から男性の育休取得率が50%以上で、昨年度は100%となったのが、福岡市のWEBコンサルティング会社『ペンシル』です。

いったい何が違うのでしょうか。

4年前、1か月間の育休を管理職として初めて取得した尼﨑祐輔さん(32)に話を聞きました。スタッフ全員の業務内容や進捗状況などを“見える化”し、共有するシステムがあったことで、休暇取得をためらわずに済んだといいます。

■尼﨑祐輔さん(32)
「私が休んでいる間にどんなことが起きそうとか、誰にどんなふうにやってほしいってことを一つずつまとめて、部署のチャットの中でメンバーに共有してお願いした。普段からやっていたので、少しその期間が長くなったイメージ。」

育休中の給付金など、生活不安を解消するための情報は、会社独自でハンドブックにまとめ、育休取得を後押ししています。

また、子連れ出勤を認めているほか、社員の子どもに職場体験をさせるなど、子育てに寛容な会社の雰囲気づくりも取得率アップにつながっているといいます。

ことし10月から育休を取る予定の佐藤さんにも話を聞きました。

■佐藤優樹さん(32)
「子どもが生まれたタイミングで『おめでとう』ってなって。『行っておいで』じゃないですが、みんな歓迎して、そういった雰囲気で取らせていただく感じ。」

『ペンシル』の倉橋社長は、「育休取得の促進は会社の利益につながっている」と話します。

■ペンシル・倉橋美佳 社長
「男性が(育休から)戻ってきた時に、みんな仕事に対するモチベーションがすごく上がって戻ってくるんですよね。我々がサービスを提供する時に、そういった(育休の)経験は十分に生かせるものだと思っていますので、一緒に育児をする経験はすごく重要だなと思っています。」

“かけがえのない子どもとの時間は、会社にも社会にも還元される”と実感している企業のあり方は、男性の育休取得率を上げるための一つのヒントとなりそうです。


育休中は原則的に給与が支払われませんが、会社を通すなどして申請すれば、国から『給付金』が支払われます。現行は、賃金の67%の額が支給されることになっています。給付金は、非課税かつ 条件を満たせば社会保険料も免除されるので、そうなると実質は手取りの8割に相当します。

岸田首相はことし3月、この給付金の額を月給の67%から80%に引き上げる考えを示しました。そうなると、実質は手取りの額とほぼ同じになり、育休取得へのハードルがさらに低くなりますよね。ただ、引き上げの時期などは現段階で明らかになっていません。