豪雨被災地の夫婦とネコがつないだ縁 西日本豪雨で解体した住宅跡地に「地域ネコ」のための小屋 広島・呉市
2月22日の「ネコの日」を前に、災害で大きな被害を受けて解体した住宅の跡地に飼い主のいないネコの為の小屋が建ちました。快く敷地を貸した夫婦と、無償でネコの面倒を見る人達の交流の記録です。
■撫でられる猫
「あ~寝そう、目を瞑って気持ちいいん」
気持ちよさそうにくつろぐネコに、エサを頬張るネコ…。
これらは、特定の飼い主がいないため「地域ネコ」と呼ばれます。暮らすのは、呉市天応にある1軒の小屋。1月に完成したばかりです。
■餌やり「おいしい?」
建てたのは、一帯のネコの世話をする今井さんです。敷地は知人の池田さんが所有しています。ネコは2023年11月まで別の場所に棲みついていました。そこで今井さんが、呉市が管理する場所で許可を得て、3年にわたり
世話をしてきました。しかし、道路工事で立ち退くことになり、ここに移ります。
この場所には、池田さんと夫の勝さんが「あの日」まで暮らしていました。
2018年に起きた西日本豪雨。天応地区にも大量の水と土砂が流れ込み、12人がなくなりました。
■池田勝さん
「ちょうどここまでですね、水が入ったのはね」
濁流は池田さんの自宅を呑み込みました。妻の永子さんも、首まで水に浸かりながら生き延びます。
その時、2人に毛布や食事を提供したのが近くに住んでいた今井さんです。
■池田永子さん
「ありがたかったですね。あの時は本当に寒くてびしょ濡れで、朝はあったかいご飯も持ってきてくれて。泣きましたよ」
自宅は、解体を余儀なくされます。その後は空き地になり、今井さんとの交流も途絶えていました。
そして2023年、ネコの新しい住みかを探していた今井さんと偶然に再会します。
■今井さん
「この土地の所有者を調べて行き着いたのが池田さんで、まさかまさかの5年ぶりの再会で。好きに使っていいよと快く無償で貸してくださったので、すごくありがたかったです」
2023年11月、新たな小屋づくりが始まりました。大工だった知り合いの助けを借り、材料集めから建設まで全て自分たちの手で賄いました。作るのは、ネコが雨風をしのげる屋根付きの建物です。
■池田永子さん
「ここの土地がネコちゃんたちのために役に立つとは夢にも思わなかったよ、ね」
そして1月。3か月をかけて完成…。9畳ほどの室内には、キャットウォークなどの遊び場や餌やりのスペースを置きました。専用のトイレも備えつけ、今井さんが毎日掃除して管理。周囲への配慮を欠かしません。
■今井さん
「まさかこんなに立派な建物になるとは思わなくてうれしい。何より猫たちが喜んでくれているのが分かるので」
■池田永子さん
「想像以上のものができたから感激ですよね」
ネコにとっても、人にとっても、幸せな場所にしたい…。だから「ハッピーハウス」と名付けました。
■池田永子さん・勝さん
「ネコ助け人助けじゃないけどね、今井さんがこのようにいいように活用してくれて感謝の気持ちはいっぱいありますよね。これからは時々ふたりで足運ぼうか。嫌な思い出が消えていけばいいですね。ここでね」
自宅を失い、辛い記憶が残る悲しい場所から笑顔が広がる集いの場に…。
地域ネコがつないだ縁で再会した人達が新たに歩む、被災地の今です。
(2024年2月22日放送)