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動悸…息切れ…めまい… 誰がなってもおかしくない『パニック障害』 なるべく薬を使わない治療法を紹介

2023年10月21日 7:00
動悸…息切れ…めまい… 誰がなってもおかしくない『パニック障害』 なるべく薬を使わない治療法を紹介

なんの前触れもなく、めまい・動悸・呼吸困難、震えなどに加え、激しい不安に襲われる『パニック発作』。これを繰り返し起こす『パニック障害』は、100人に1人が経験するといわれる病気です。いつ、誰がなってもおかしくないパニック障害を、なるべく薬に頼らず治す方法を探ります。教えて下さるのは、心療内科医の長井敏弘先生です。

パニック症状は、自律神経失調症の症状ともよく似ており、暑かったり、息苦しくなったり、汗もかきます。

■長井敏弘先生
「脳がパニック障害の方はですね、結構発作を起こしやすくなるという事実があるんですよね。パニック発作ですね。動機・呼吸困難・めまい。このめまいは、くるくる回るのではなく、雲の上に乗ったような、フワ~とした感じになるのが特徴的です。」

また、吐き気、手足のしびれ、発汗。こういうものが、突然出てきます。

■長井敏弘先生
「検査をしても異常が見つからないので、余計不安になりますよね。また起こるんじゃないかなと感じることを「予期不安」ていうんですけどね。結局、なかなか外に出るのが億劫になって、社会生活に支障が出てくる。これがパニック障害っていう事なんですよね。続発的にですね、二次的にうつ病を併発することもあります。」

起こりやすい状況とは?

■長井敏弘先生
「人が大勢いるところで起こしやすいことは、理解できると思います。これは、『広場恐怖』という名前が付いています。そして、エレベーターなどの狭い場所、電車、バス、飛行機です。まだ、バスの方がいいと言う方が、結構多いです。「運転手さん停めて下さい!」と言うことができます。でも、電車や飛行機は無理ですよね。さらに運転中に、交通渋滞で動けなくなった、あるいは、突然トンネルに入って真っ暗になると、ドキドキしますよね。」

また、美容院と歯科医院でも、パニック発作を起こしやすいそうです。この2つには、比較的動きにくい、動けない状況になっているという共通点があると言います。

■長井敏弘先生
「美容院は、固定されてますよね。歯医者さんも動けないですよね。だからパニックを起こしやすいってことなんですよね。」

長井先生の患者・金行美咲さんが、ご自身の体験をお話してくれました。

■金行美咲さん
「着ぐるみをかぶって、キャラクターの着ぐるみをかぶる仕事をしていたんですけど、かぶったときに突然、動悸と汗と不安とが襲ってきましたね。」

勤め始めて10年以上、発作はある日突然起きました。それからは、着ぐるみをかぶるたびに、同じ症状を繰り返すようになります。

■金行美咲さん
「その仕事を一生やるつもりだったんですけど、それがきっかけで無理になって、仕事も辞めて、近くの総合病院の精神科に通って、パニック障害と診断されて。人混みが無理になるんですよ。恐いんです。電車とかバスは一切無理。今でも無理です。朝起きてカーテンが開けられないんですよ。明るいのがこわいんです。1週間くらい家を全く一歩も出ないってことは普通にありました。」

パニック障害が起こる原因とは…?

■長井敏弘先生
「パニック障害は、『セロトニン』という脳内ホルモンが減っているんじゃないかということを言われています。もっと詳しく話をしますと、パニック障害の仕組みです。我々の脳の中には『偏桃体』という、レーダーみたいなものがあります。例えば、草原でシマウマが、いつライオンに襲われるかわかりませんよね。しかし、レーダーがあると、ライオンが近づいてきたら逃げろっとします。人間も同じことなんですよね。このレーダーが、危険だから逃げろと反応することによって、ドキドキします。ドキドキしたり、窒息感というのは、車のエンジンをかけるのと一緒で、サーっと走って逃げるということをさせます。これは、人間にとって、生き物にとって必要です。」

■長井敏弘先生
「ところが、ストレスがある時に、こういう不安や緊張を経験すると、『海馬』というところに、不安・緊張が残ります。残って、同じような経験、そんなに危険ではないのに、人がたくさんいるなっていうふうなところでですね、同じように、海馬が記憶で、偏桃体が再起動します。もっとわかりやすく言いますと、例えば、ある交差点でちょっと事故を起こしてしまったとしします。そうすると、その時の記憶が残りますよね。他の交差点は何ともないのに、その交差点に行くと、ドキドキするわけですよね。それは、海馬の記憶が、呼び起こすっていう事なんですよね。」

パニックの原因は2つあると言います。

■長井敏弘先生
「1つは、ストレスがある状態で、不安・緊張を経験する、危険な目に合うと、パニックが起こりやすくなります。もう一つは、小さいころに、家庭環境が結構悪かったりなどは、あるいは学校でいじめを受けた場合、小さいときは、このレーダーの偏桃体がまだ成熟していないんですよ。だから、過敏になってしまうというふうに考えて下さいね。」

長井先生の患者・金行美咲さんに、ご自身の治療法を紹介して頂きました。

■金行美咲さん
「薬と、あと行動療法といって、駅までを・・・駅に行くのも無理なんですよ。玄関を出て2~3歩行く、次の日にはそれより何メートルか進む、徐々に駅に近づいていく、というのをやったんですけど、全然良くならずに、薬が増えていくばっかりでしたね。」

主治医を何度か変えましたが、よくならず、家のある広島に戻り、なるべく薬に頼らないようにと治療を続けています。

■金行美咲さん
「悪くなったり良くなったりの繰り返しもあるんですけど、やっぱりもう薬もだんだん減っていって、外に今日でもこうして出られるようにもなりましたし、朝日を浴びて、あと、今は運動ですよね。体を動かすのをすごい勧められて、なかなかできたり、できなかったりの繰り返しなんですけど。先生とか薬は、病気を治す手助けをしてくれる存在だと思うんですよ。最終的に先生が言うことを、自分が動くというのは自分自身なので、最終的には自分かなって思っています。」

セロトニンを加える薬物療法

パニック障害と思われる症状を治療する場合、まず医者に行って、パニック障害という診断を受ける必要があります。それから治療が始まります。

■長井敏弘先生
「最初は薬物療法ですけども、これは『SSRI』と言いまして、『S』はセロトニンの『S』なんですよね。セロトニンが減っているんで、セロトニンを加えようという治療をします。さらに抗不安薬と言いまして、不安を抑える薬、これで症状を楽にしてあげようと。これが第一段階ですね。」

ただ、多くの患者は第一段階の、薬物療法で止まっています。長井先生は、本当の治療はこれからと、語気を強めました。

■長井敏弘先生
「第二段階は認知行動療法。例えば、ある方が電車に全然乗れなかったので、比較的にお客さんが少ない時を狙って、最初は、お子さんと一緒に電車に乗って、1駅だけ行ってみる。次は、お子さんに、次の停留所で待ってもらい、一人で頑張るから、そこまで行くというように、段階的に認知させる療法を、認知行動療法と言います。要するに、脳が誤作動しており、危険ではないのに、危険と言っているので、そうじゃないよっていう事をしなくてはいけない。実際に、診察室では、アメリカでよく使われているんですが、自分で過呼吸をする・頭を振る・息を止める・ぐるぐる回る・ストロー呼吸を、ある程度薬で症状が良くなった段階で、やっていきます。症状が比較的軽い方は、薬なしで、ここから始めてもいいですが、自分で判断するのではなく、ドクターの指示を仰いでください。」

■長井敏弘先生
「過呼吸をするなど、いろんなことをすることによって、不快さとか、不安・恐怖が出てきます。さらに、自分が経験したパニック障害に似ている箇所に、数字を付けます。これを何回かやっていくうちに、だんだん数字が減ってきます。ところが、よく考えてみると、過呼吸して、パニックっぽくなってきたというのは、逃げろと脳が言っています。自分でこういう症状を出しているのに、誰から逃げるんでしょうか。脳が誤作動しているので、自分自身に「大したことないよ、危険じゃないよ」と、言い聞かせます。そういう訓練を何度も付け加えることで、だんだん良くなりますけれども、やはり、薬を並行する方も結構多いですよね。薬はあくまで、プラスアルファだという事です。」

どんな病気にも大事な運動が、パニック障害にもかなり効くそうです。

■長井敏弘先生
「最後に、運動療法です。パニックの場合、運動はかなり効きます。これは、だいぶ良くなった上での運動療法ですが、2つあります。1つは、『セロトニン』が出てくるので、結構楽になります。もう一つは、運動すると、動悸、息苦しさが出ます。これは病気でも、症状でもなく、運動しているからこうなっているんだと、自分に言い聞かせます。そうすると、パニック症状を改善する訓練になるんですよね。」

ドクターに一度相談してからの話ということになりますが、薬にだけでなく、自分なりの治療を考えてみてもいいかもしれませんね。

【テレビ派 2023年9月20日放送】