１０００年近く地域に根ざしてきた広島県北広島町の神社で、４年ぶりとなる秋祭りが行われました。過疎と高齢化が進む地域の神社で、祭りの開催に奮闘する若き宮司の姿を追いました。

３００年の歴史を誇る『乙九日祭』

乙九日祭の松明行列の様子

９月２３日、北広島町の亀山八幡神社で開かれた「乙九日祭（おとくんちさい）」。祭りのにぎわいが４年ぶりに帰ってきました。

■訪れた人は…
「初めて来たんですけど、歴史があって見ごたえがありました。」
「行列が山から下りてくるのがすごいきれいだったです」

祭りを取り仕切るのは、神社の宮司を務める中束勇太郎さん３８歳です。中束さんは、２０歳のときに神職の資格を取得。祖父から８年前に宮司を受け継ぎました。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「感動的というか、お祭りが出来て良かったなと思っています。」

北広島町宮地の雄鹿原地区。およそ３５０人が暮らしています。祭りの舞台となる亀山八幡神社は、１０５３年に創建されました。祭りは、新型コロナの影響で３回中止に。準備にも力が入ります。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「一世帯一世帯の協力があって、乙九日の祭りが出来るので、手を取り合ってやっていってます。」

無病息災と五穀豊穣を願う乙九日祭は、３００年を超える歴史があります。室町時代、この地であった支配権をめぐる戦いをもとに、３０年前からは、松明行列など炎の祭典が開かれています。

祭りに向けて、地域のみんなで準備！

子どもたちが『巫女の舞』の稽古に励む

祭りの４日前。地域の子どもが神事で奉納する、「巫女の舞い」と「大和神楽」の練習が行われていました。指導するのは、中束さんです。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「動作を大きく特に向きを変えるときなんか、こうやって大きく。」

長男の湊介くんは小学６年生。中束さんも小学生の時に祖父から教わり、経験した大役を息子が務めます。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「今回舞ったことを、覚えてもらって、大人になった時に、次の世代へバトンを繋げていって、もらえたらと思います。」

３人の子をもつ中束さん。祭りの日は、もうひとつ特別な日でもあります。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「長男が生まれたのが、１２年前の乙九日の日だったんですよ。運命というか、乙九日の日を選んで生まれて来たのかなと。」

祭りで神楽を舞う湊介くん。しっかりと、お父さんの背中を見ていました。

■中束湊介くん
「（お父さんは）この地域の神社の代表なので、すごいと思います。（宮司に）なれないかもしれないけど、そういう近い仕事に就きたいと思います。」

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「父親がこういう仕事をしてるんだなというのを見てくれるので、親として励みになりますし、頑張りたいなと思いますね。」

祭りの前日。朝から地域の人が集まり、のぼりを立てるなど、準備に追われました。

■地域の人は…
「久しぶりで手順忘れてます。どうせやるからには、いい祭りになってほしいですね。」
「若いのに宮司やられて、大事な神社の歴史を守っておられると思います。」

参道沿いには、のぼりが立ち並びました。

伝統の祭りが４年ぶりに開催！

神事用の装束をまとう宮司の中束さん（先頭）

４年ぶりとなる祭りの日。中束さんは、神事に向けて装束に着替えます。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「装束着るというのが、この祭りだけなので。着せてもらえて、引き締めてもらうと同時に、気持ちも引き締まっていく感じがしますよね。」

そして、本殿へ。祭りの始まりです。

祭りの神事。湊介くんによる、大和神楽の舞いです。堂々とした演技を見せました。

その頃、外では多くの見物客が集まっていました。祭りの見せ場の一つ、神輿行列です。神職を始め、獅子や天狗などが長い列を作り、ゆっくりと歩きます。のどかな風景のなか、勇壮な一大絵巻が繰り広げられました。

■地元の人は…
「私らは昔からですからね。懐かしいです。」
■訪れた人は…
「みんなでこうやっていろいろ盛り上げてられるのは、いいことだなと思う。」

日暮れとともに始まるが、「松明行列」です。甲冑姿の武者を先頭に、一般の参加者が、松明を持って神社までの道のりを歩きます。地域の歴史をもとにした力強く、幻想的な光景で、祭りは締めくくられます。

■亀山八幡神社 中束勇太郎宮司
「亀山八幡神社の宮司として、みんなが乙九日のお祭りに帰りたいって思ってもらえるようなお祭りであり続けるような努力を、私もしなければいけない。」

宮司として神社と祭りを守っていく。中束さんは、それが、過疎化が進む地域をつなぐものと信じています。

【テレビ派　２０２３年９月２５日放送】