【安芸高田市】若者が考えた町の将来
特集の舞台は安芸高田市です。中国山地の山々に囲まれたこの町が直面するのは、人口減少と高齢化です。そんな町に全国各地から大学生らが集まり、その行く末を話し合いました。
8月下旬、交通機関を乗り継いで、安芸高田市を訪れた若者たち。
■記者質問
Qきょうどこから来たんですか?
■学生
「福岡です。石丸市長のツイッター(X)をフォローしていて、ちょっと興味があって」
全国各地からやってきた大学生ら11人。市役所で待ち構えていたのは。
■石丸伸二市長
「みなさん、こんにちは。安芸高田市長の石丸伸二です」
訪問の目的は、安芸高田市の実際を体験するインターンシップへの参加。過疎の町を存続させるための方法を考えます。
■石丸伸二市長
「もう20年後には、財政破綻していても全くおかしくないレベルです」
人口の変化を予測しました。2020年からの20年間で、2割にあたる5500人が減少。これに伴い、国が支給する地方交付税が23億円減る見通しです。
初日、石丸市長が説明したのは、政策の立案などに欠かせない議論に向き合う自らの姿勢です。
■石丸伸二市長
「僕の中で議論というのは、言葉で言うと生産的であり、建設的なものです。誰かと戦う話ではなくて、誰かと協力するための手段なんですよね。なので、僕がよくやり合ってはいるんですけども、その先に何か得たいものがあるんですよ」
そして翌日、安芸高田市の実際を知るために、市内を回り始めました。訪れたのは、市役所から車で30分ほどの山あいの一角。出迎えた花村友紀さんは、3年半ほど前に広島市から家族と共に移住してきました。
■花村友紀さん
「すごい一目ぼれしてしまって、 それでずっとここで、地域おこし(協力隊)の時もここで活動していました」
■学生
「やっぱこういうところに来たら気分的にリラックスするっていうか」
■花村友紀さん
「そうですね、田舎で子育てがしたいなって 思っていたので、自然の中で走り回って大声出して遊ぶのが一番いいかなと思って。家の中だとあまり騒げないじゃないですか」
■学生
「行政にこういうことやってほしいとか、何か求めるものあったりしますか?」
■花村友紀さん
「もうちょっと道が広かったらいいなと」
今後も欠かせぬ、道路や上下水道などインフラの更新。しかし、年間に40億円余りかかる見通しです。
インターンシップ3日目。この日訪れたのは、1軒の酪農家です。田島あゆみさんがここで酪農を営んで、4年半になります。
■学生
「動物系の畜産っていうんですか、 畜産農家って多いですか」
田島あゆみさん
「多いです、庄原とか三次なんかも多くて、 この辺は、その次くらいじゃないかな」
その一方で、酪農をやめる人もいると言います。理由は、経営の悪化と高齢化です。安芸高田市では、2040年に、生産活動を中心的に支える15歳から64歳までの人口が65歳以上の高齢者を上回る見通しです。
都会からやってきた若者たち。何を感じたのでしょうか。
■学生
「すごく田舎のスローライフがいいと思って、売り出し方、発信の仕方によって、地方創生とか人口減少に対する歯止めになるのではないかとは思いました」
そして迎えた最終日。学生たちは、3つのグループ毎に立案した政策を発表します。
■学生発表
「我々は、持続可能な町づくりに重要なことはなにかと考えた時に、2つあげました」
最初のチームは、「外貨の獲得」と「雇用の維持と創出」に着目。宿泊施設増設によるスポーツ合宿の誘致や、宿泊税の導入などを提案しました。
次のチームは、農業に注目。大学や企業と連携して、就農や農業を副業とすることで定住拡大を目指す仕組みを提案しました。
そして最後のチームは。
■学生発表
「定年後の65歳以上のシニアを含めた高齢者転入増加を狙います」
具体的には、他の自治体と協力して高齢者1000人の転入を促進。目指すは「シニアタウン」です。
■石丸伸二市長
「ひとこと素晴らしい。5泊6日の期間で、このアウトプットを出したというところです。でも我々の方が一日の長があるはずなので、きょう新たに刺激をもらって、 意識をリセットして、安芸高田市を引っ張って盛り上げていきたいなと決意を新たにできました」
11人が、5泊6日で感じたことは。
■学生
「知れば知るほど、頑張れる部分とか魅力とかに気づいた。めっちゃいい場所。好きになりました」
人口減少や高齢化は、全国の自治体が抱える共通の課題。山あいに抱かれた町を、いかにして存続させるのか。安芸高田市は、学生たちの提案を来年度予算の編成に反映させたいとしています。
(2023年10月4日放送)