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「大正時代の音がよみがえる」 100年前に小学校にやって来たピアノ 修理を経て復活

2023年11月3日 12:17
「大正時代の音がよみがえる」 100年前に小学校にやって来たピアノ 修理を経て復活

世界三大ピアノのひとつといわれるベヒシュタインピアノ。約100年前、熊本市の小学校にやって来ました。老朽化で使えない状態でしたが、修復を終え、34年ぶりに音色がよみがえりました。

今年、創立150年を迎えた熊本市の碩台小学校。記念式典の中で披露されたのは…ピアノです。約100年にわたり、学校と歴史をともにしてきました。

碩台小にあるのは、世界三大ピアノといわれるベヒシュタイン社製のピアノ。九州の国公立の教育機関では他におかれていない貴重なものです。

大正時代の1925年に碩台小にやってきたベヒシュタインピアノ。70年前の文集でも話題にのぼっていました。

「大正15年、5年生の時でしたろう。学校に出ると全く急な招集があり、全校生徒は講堂に集められました。」
「このピアノはまだ買ってから1週間ばかりしかなりませんのに、もう爪の型をつけて、きず物にした」

老朽化したピアノ 復活に向け修復

1953年の白川大水害で一度壊れてしまったものの、ピアノは復活。

しかし…。

■碩台小学校 杉水修校長
「ここにピアノが置いてあった」

今年3月、碩台小からピアノの姿が消えていました。老朽化が進み、1989年からは演奏できない状態になっていたのです。

卒業生の声などを受け、修復することになり、菊池市の工房で作業が進められていました。お披露目は、学校の創立150周年の式典です。

■碩台小学校 杉水修校長
「元のままの材料が使われているので、大正時代の当時の音がよみがえるんじゃないかな。ととても楽しみにしています」

そして10月。修理を終えたベヒシュタインピアノが学校に帰ってきました。

始まったのは調律。鍵盤に繋がる弦を調整して、正しい音を作り上げていく繊細な作業です。

式典の日にピアノを演奏するには、プロのピアニスト、吉田秀晃さん。碩台小の卒業生です。吉田さんが小学生の時は、このピアノがありました。

■ピアニスト 吉田秀晃さん
「子どもの頃、毎日のように触っていた楽器。鍵盤を触った感覚というのが、子どもの時の感覚が残っていて、触った瞬間に感覚がよみがえった」

音色は、ピアノの位置が少し動くだけで変わってしまいます。調律は3時間以上に及びました。約30年ぶりに復活するピアノの音色。お披露目まで、あと少しです。

復活したピアノ 小学校創立150周年式典で披露


創立150周年の記念式典の日を迎えました。集まったのは、卒業生や学校関係者など約120人が集まる体育館。修理を終えた貴重なベヒシュタインピアノが演奏されるのを待っていました。

式典で披露されたのは、子どもたちによるミュージカル「ベヒシュタイン物語」。
主人公は、擬人化した碩台小のベヒシュタインピアノ。学校にやってきた大正時代から現在まで、旅をしながら歴史を振り返るストーリーです。

そしていよいよ、卒業生のピアニスト、吉田さんによるベヒシュタインピアノの演奏です。

♪ピアノの演奏

■卒業生の女性
「碩台小に昭和31年に入学したのですが、みんながすごく頑張っていて涙が出ました、本当に良かったです」
■卒業生の高校生
「あのピアノは、私たちがいる頃は本当に部屋の隅にあったので、きょう初めて音を聞いた。とても重厚感がある音というか、それに加えてピアニストの方の 技量によって、とてもきれいな音色だったと思います。」

在校生にとっては、初めてきくピアノの音色です。

■小学生
「すごくきれいな音を出すピアノだなと思いました。ピアノをちゃんと受け継いでいって、それをしっかり次の世代の人たちが、またこんな風にミュージカルにしたり、こうやって伝えたりする場面を作ってほしいと思う。」

■ピアニスト 吉田秀晃さん
「ピアノとともに子どもたちが育って、そして巣立っていくことがこれからも続くと思う。それを想像するのがすごく楽しみ。私もそうだったので、同じような体験を今の児童にもしてほしい。」

復活をとげた、碩台小の貴重なベヒシュタインピアノ。この先も小学校の歴史とともに、新たな音色をつむいでいきます。