1000年以上守られた場所を…きっかけは1頭の「あか牛」 高校生が阿蘇の草原守る活動
1頭の「あか牛」をきっかけに阿蘇の草原を守る活動を始めた高校生がいます。熊本の"宝"を未来へつなぐプロジェクトに密着しました。
あか牛と優しく触れ合うのは熊本農業高校畜産科の生徒たち。
■生徒
「ベロベロしてくるので、そこもかわいいところではありますね」
出会いは去年8月でした。
■熊本農業学校・上田龍征さん(3年)
Q(牛は)何キロくらいある?
「330キロないくらいです」
高校で生まれた1頭のあか牛。世話をするのは課外時間に集まった生徒たちです。
肉の生産を目的に子牛を育てる「肥育」に初めて挑戦することに。
しかもエサは阿蘇から取り寄せた草原の草。その名も『草原プロジェクト』です。
■佐藤涼真さん(3年)
「あか牛を使って肥育をすれば草原にも目を向けてもらえるし、あか牛にも目を向けてもらえるので、草原を守るっていうのと、あか牛の肉に価値を付けるっていうのが目的で今回の肥育を始めています」
こう話す佐藤さんの実家は南小国町の畜産農家。祖父の代からあか牛を育てています。
■佐藤涼真さん(3年)
「この子は、人懐っこいです。よってくるんですよ」
小さいときからあか牛が身近な存在だった佐藤さん。自然に阿蘇の草原にも関心を持つようになりました。
平安時代から牛や馬が放牧されていた阿蘇の草原。人が野焼きをしてあか牛が草を食べて地面を踏み固めることで1000年以上阿蘇の美しい草原は守られてきました。
しかし畜産農家はこの40年あまりで10分の1以下に…。野焼きの担い手も減少しています。
将来家業を継ぐ佐藤さんは、今回のプロジェクトが多くの人に草原やあか牛の現状を知ってもらうきっかけになると考えています。
■父・佐藤勝明さん
「牛をやる(育てる)という環境、牛を増やして頑張りたいというところでは、逆に地域としても助かる部分は出てくるんじゃないかなとは思ってます」
阿蘇から遠く離れた熊本市であか牛を育て始めて3か月。思いもよらない事態が…。
■吉本暉世直さん(3年)
「最近(体重の)伸びが悪く1週間ほど前に測った体重より、きょう測った体重がまた減っていたので、少し今までやっていた野草に少し問題があったのかなということは感じます」
子牛を約14か月かけて700キロにする計画ですが、このまま食欲が落ちると目標に到達するのは厳しくなります。
そこで先生のアドバイスもあり飼料を混ぜたエサを与えてみると…
■山下優蘭さん(3年)
「よかった。食べてくれている」
試行錯誤を繰り返しながらあか牛とともに生徒も成長していきます。
ことし2月、3年生に嬉しい出来事が。2年生の2人が活動を引継ぎたいと名乗りを上げてくれたのです。
■犬飼一騎さん(2年)
「自分も阿蘇出身で少しでも自分の地元の関わりに貢献できて、あとは牛の肥育について学びたいと思ってこの課題研究を選びました」
■髙林誠士郎さん(2年)
「先輩たちの今までの努力を無駄にしないように。今まで通り地域の方々と連携を取りつつ頑張っていきたい」
■佐藤涼真さん(3年)
「1年通してみて、やっぱり肥育っていうのが初めてだったので、難しいっていうことが分かりました。またそれと同時に阿蘇の草原についても勉強することができて、どうすれば守っていけるのかなっていうのを考えるいい機会になったのかなって思います」
熊本の宝、阿蘇の草原を守るために…。1頭のあか牛が教えてくれたことは後輩たちへ引き継がれます。