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【水俣病訴訟】国と熊本県が控訴 熊本訴訟の原告は「長引かせることなく救済に進むべき」

2023年10月10日 18:56
【水俣病訴訟】国と熊本県が控訴 熊本訴訟の原告は「長引かせることなく救済に進むべき」
水俣病特措法の救済対象外とされた人たちが、国や熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた裁判で、原告全員を水俣病と認めた大阪地裁の判決をめぐり国と熊本県が控訴しました。

この裁判は、熊本県や鹿児島県に生まれて大阪などの関西に移り住み、水俣病の最終的な解決をうたった水俣病特別措置法の救済からもれた原告が、国や熊本県、水俣病の原因企業チッソに損害賠償を求めたものです。大阪地裁は9月27日、原告128人全員を水俣病と認め賠償を命じる判決を言い渡しました。

チッソはこの判決を不服として、9月4日付けで大阪高裁に控訴。被告の国と熊本県も、11日の控訴期限を前に、10日控訴しました。

控訴した理由について国は、今回の判決内容が、WHOが公表している神経障害を発症することがないレベルの毛髪水銀値を下回る場合も、水俣病の発症を認めていること、メチル水銀を摂取した後、長い期間を経て発症する「遅発性水俣病」も認めていることなどをあげています。

■伊藤信太郎環境相
「今回の判決は、国際的な科学的知見や最高裁で確定した近時の内容と大きく相違することなどから、上訴審の判断を仰ぐ必要があると判断しました」

一方、熊本県の蒲島知事は、今回の判決は水俣病行政の根幹を揺るがす判断で上級審の判断をあおぐ必要があるとしました。

■熊本県 蒲島郁夫知事
「原告の方が長年にわたって様々な症状に苦しんでいるのを、とても胸の痛む思いであり、早期救済の声があがっているのは承知しています。とても苦渋の決断です。ただ司法の一貫性というのはとても大事だし、行政を預かる者としてはそれがないと水俣病の行政はできないと私は思っています」

被告に対して控訴断念と早期救済に向けた協議を求めてきた原告団。熊本地裁で同様の裁判で争い、来年3月に判決を迎える熊本訴訟の森正直原告団長は「裁判を長引かせることなく救済へ進むべき」とコメントしています。