ビジネスホテル稼働率が東京に次ぎ全国2位 ターゲット客層は?変化する熊本のホテル業界
取材した記者が一つのテーマを深掘りする「記者のコトバ」。今回のテーマは「熊本のホテル業界」です。アフターコロナでインバウンド需要を取り込もうと加熱する熊本のホテル業界。あの手この手でビジネスチャンスを見出そうと変化する現場に迫ります。
熊本県内に宿泊した外国人の延べ人数は、コロナ禍で一時は約3万8000人にまで落ち込みましたが、2022年9万9000人近くまで回復。去年は約96万2000人で、コロナ禍前の約92万人を上回りました。
熊本のホテル業界の変化のウラには、全国共通の背景に加えて、熊本ならではの事情がありました。
4月、熊本市中央区にオープンしたグリッズプレミアムホテル熊本。大阪、北海道に続いて、国内3か所目として選んだのが熊本でした。背景にあったのはTSMCの進出に伴う熊本の経済発展への期待。さらに…。
■グリッズプレミアムホテル熊本 東野仁太フロントオフィスマネージャー
「観光の拠点としても大変需要が多く、インバウンドのお客様も大変多くいらっしゃっていますので、ビジネスのマーケットとして当ホテルがしっかりと売り上げを見込めるものと思います」
観光庁の調査によりますと、熊本県内の宿泊施設の稼働率は全国平均を上回る59.6%。前の年に比べて11ポイント増加しています(宿泊旅行統計調査 2023年間値)。稼働率を引き上げる主な要因となったのがビジネスホテルです。熊本の稼働率は77.1%で、東京に次いで全国2位でした。
ホテルがターゲットにするのは観光客とビジネス客です。ロビーには熊本の名所がちりばめられています。小国町の鍋ヶ滝をイメージした照明に熊本城の石垣を思わせる壁、阿蘇五岳のアートなどが出迎えます。
約200室のうち、半数以上が1人から2人で利用できるシンプルな部屋。ビジネス客を取り込むための工夫が凝らされています。
■平井友莉キャスター
「コンパクトな部屋でも広々と使ってもらう工夫がベッドの下にあります。スーツケースを収納できるように足の高いものが採用されているんです」
客室を広げるため、浴槽は設けずシャワーのみの設計です。朝食は、熊本産の野菜やラーメン、馬肉カレーなど60種類以上。その7割に県産食材が使われています。
その朝食会場は、午後になると宿泊者が利用できるラウンジに。ビジネス客向けに、席にはコンセントが設けられています。
オープン1か月で宿泊客は7500人ほどに上る見込みで、3割が外国からの利用です。ホテルでは、1年で約7万8000人の宿泊客を見込んでいます。
■グリッズプレミアムホテル熊本 東野仁太フロントオフィスマネージャー
「台湾からの団体のお客様も大変多くご予約を頂戴しております。最低でも、半数ほどは海外のお客様を取り込めればと考えております」
一方、こちらは、熊本城のお膝元にある熊本ホテルキャッスル。昭和35年にオープンした歴史あるホテルです。
■担当者
「デラックスキングダブルという部屋です」
■平井キャスター
「広々として気持ちが良いですね」
■担当者
「もともとコンパクトなシングルルームが並んでいましたが、その3部屋を一つの広いダブルルームにリニューアルしました」
去年4月末にリニューアルしたハイクラスの客室の広さは約40平方メートル。ゆとりのあるリビングスペースに、世界三大ベッドメーカーの寝具や高級感のある備品などを取り揃え、「居心地の良さ」を追求しました。
客室を179室から150室に減らし、サービスの底上げを図っています。歴史あるホテルが時代のニーズに合わせた挑戦です。
■熊本ホテルキャッスル客室予約課 河原一仁さん
「インバウンド富裕層や企業の上層部のビジネス利用、来賓の招待などワンランク上を求めるお客様をターゲットに想定しています。グレードの高い客室で単価を向上させたい。ビジネスホテルと同じことをして同じものを販売しても、フルサービスのホテルとして生き残っていけないので、付加価値の高いお部屋を提供していくよう心がけています」
ターゲットを見定め、趣向を凝らした客室で顧客獲得を狙うホテル業界。熊本の変化に合わせ、いかに需要に応えるかがカギになりそうです。
【スタジオ】
(平井友莉キャスター)
他にも特徴的なホテルがあります。「ホテルサンルート」は去年7月にリニューアルし、客室にはプライベートサウナに熊本産の畳を使用しています。さらに部屋はミニキッチン付き、 長期での利用や離乳食を作りたい家族連れに人気だそうです。そのほか、現在改装中や新たに開業を予定しているホテルもあります。
こうした中、熊本市内では簡易宿泊所が増えています。ゲストハウスやユースホステル、古民家を改築して一棟貸しするような場所です。5年前に比べて倍近くに増えています(201919年64→202323年111軒)。家族連れで宿泊する外国人などに人気ということです。インバウンドの需要が高まる中、どのように差別化を図るかが問われています。