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「知らない世代に伝えていく」両親と訪れた大洋デパートで火災 父を亡くした女性の思い

2023年11月29日 18:48
「知らない世代に伝えていく」両親と訪れた大洋デパートで火災 父を亡くした女性の思い
104人が犠牲となった熊本市の大洋デパートの火災から29日で50年を迎えました。当時を知る人が少なくなる中で、教訓をどう伝えていくか。火災で父親を亡くした女性が思いを語りました。

29日朝、消防訓練が行われていたのは、熊本市中央区の商業施設「サクラマチクマモト」です。大洋デパート火災から50年を迎えた節目の日。訓練前には大西市長も参列し、犠牲者に黙祷が捧げられました。

1973年11月29日。消防に火災発生の通報が入ったのは、午後1時23分頃でした。営業中で賑わうデパート。火は約8時間にわたり燃え続け、104人が犠牲に。国内のデパート火災史上最悪の惨事と呼ばれています。

消防訓練を見つめていた1人の女性。当時、現場で火災に巻き込まれた原田真羊さん(52)です。

■原田真羊さん
「私はあの火災の記憶が、当時2歳半なので全くないです」

両親と買い物に来ていた原田さん。9階建てのデパートの2階と3階を結ぶ避難階段の踊り場付近から出た火は、たちまち各階に燃え広がりました。原田さんは助け出されましたが、逃げ遅れた父の美芳さんが亡くなりました。

■原田真羊さん
「私も記憶がないし、遺族と名乗れるのだろうかと思う時期もあった。これから先、火災を知らない世代に教訓として伝えていくのが、私の父とか亡くなった方の供養の一つになる」

被害が広がった原因とされているのが、増築工事中で避難経路がふさがれ、階段にも商品が積み上げられていたこと。この火災をきっかけに消防法が改正され、スプリンクラーの設置基準が強化されたほか、熊本市消防局は大型店を対象とした特別検査を始めました。

原田さんが向かったのは、白川の近くにある犠牲者の慰霊碑です。

■原田真羊さん
「火災があったことを記憶してほしいんじゃなくて、あれをきっかけにいろんなことが変わって、50年経ってハード面は色々変わって、建物を運営管理する会社もいろいろ考えてくれているが、結局誘導したり逃げやりするのは人なので、そういう一人一人に頭のどこかで教訓になるお話が出来たらと思います」

火災の記憶がなくても教訓を伝えていく。遺族としての原田さんの決意です。