灰付けワカメ作り 不漁で初めて中止 朝日町宮崎地区
朝日町の宮崎海岸で毎年この時期に行われている灰付けワカメの天日干し。今年は、ワカメが不漁のため中止となっていて、漁業者は、かつてない事態に不安を募らせています。
山と海に挟まれた朝日町の宮崎地区。かつては農業と漁業で栄えた地域で旧北陸道沿いに家が連なっています。
この宮崎地区の5月の風物詩といえば、灰付けワカメの天日干し。とれたての天然のワカメに稲ワラを焼いた灰をまぶして天日で干すことで、保存がきくようになります。また、水で戻したときに風味がよく色も鮮やかになるのが特徴で、贈答品として人気です。作業が行われるのは大型連休明けから2週間ほどの間。晴天で風が無く、波が穏やか。海水が透明といった条件が必要で毎年2,3回しか行われません。しかし、この灰付けワカメづくりが今年初めて中止となりました。
朝日町漁業協同組合 水島洋組合長
「4月下旬に試しどりに行ったんですよ、漁師にお願いして。そしたらいつもあるところに、全然ワカメが生えとらんと、要所要所調べていただいたんですけど、やはりないと。心待ちにしていた方もおられると思うんですよね。それが消費者のところへ届けられないということは、ちょっと心痛みます」
朝日町漁協の水島洋組合長は、以前は、宮崎海岸の岩礁や波消しブロックなど、いたるところにワカメが生息していたといいますが、近年は徐々にその数が減っていたと話します。
水島洋組合長
「以前からもだんだん(減って)おかしいな、おかしいな、と思っていたんですけど。不安ですね」
なぜワカメがとれなくなっているのか。
県水産研究所は、海水温の上昇や、それによって魚などが活発化し、ワカメを食べてしまっている可能性が考えられるものの、はっきりとした原因は分からないとしています。また、灰付けワカメは担い手不足が深刻で、今、存続が危ぶまれています。
灰付けワカメは宮崎地区で、江戸時代末期には生産されていたとみられています。1960年頃が全盛期と言われていて、当時は200隻もの舟が沖へ出ていました。漁のある日は、小学校が午前中は休みとなり子どもたちも手伝いに行くほどでした。
水島洋組合長
「とにかくすごかったですよ。もう場所取りで、浜一面、それこそ灰付けワカメ天日干ししてありました。言ってみれば、猫の手も借りたいほどの忙しさだったんだろうなと」
現在は、漁業者の高齢化や漁業離れで後継者がいないのが現状です。地域の食文化を絶やしたくないと数年前からは漁協の組合員で協力して作業していますが、船は2、3隻だけとなっています。
水島洋組合長
「いやー、昔からみたら本当にさみしい限りです。だんだんと漁師もおらんがなっていくし。不安でたまりません」
ワカメのとり手の減少に加え、不漁による天日干しの中止。宮崎地区の伝統の食文化が今危機的な状況となっています。
水島洋組合長
「(灰付けワカメの)文化の伝承は、絶やしたくないという思いは、常にあります。だけど自然界相手やから、こればかりはどうしようもないと」